船窓夜話―第26話―薮医者
2003/ 6/21 17:12
メッセージ: 4610 / 6027

投稿者: メッセージを送信 ilkuji_99

甲板員たちの日課は主に貨物を載せたり降ろす起重機の運転、甲板および外板ペンキおよび掃除、貨物倉掃除および管理である。貨物を降ろした後、ゴミで汚くなった貨物倉を掃除しないと次の貨物を載せるとき困る。甲板長を作業番長にして甲板員全員が貨物倉に降りていって掃除し、ゴミを出した後、水ホースで洗う。少なくとも総トン数1万トン以上の貨物船は貨物倉の深さが70―100メターに至る。階段を降りるとき注意しないと床の上に墜落し死亡か身障者になることもある。

ある晴れた日、波一点ない明鏡之水みたいな南太平洋を航海していたとき、甲板員たちが水ホースで床を洗ってした。その中でも階級の低い4等甲板員がホースの先の鉄ノズルを取っていたのに重くて疲れるので暫くノズルをしばらく行かせた。そうするとノズルは水圧により揺れながらその甲板員の顔面を無慈悲に打ん殴った。

航海当直でブリッジで勤めていた筆者に急な連絡が来て降りてみたら右目の眉毛のあたりを鉄ノズルで強打され血を水道水みたいに流してした。医者のいない商船では簡単な救急処置で使う薬品しかない。船内医薬品担当航海士として筆者ができることは抗生剤軟膏を塗って包帯で巻くだけだった。処置を済ませて残りの当直を終えて部屋に戻って来た。そして書類業務をし夕食後、夜間当直に上がっていた。

しばらく夜の水平線を見つめていたら甲板員一人が再び上がって来てどうしても患者の血が止まらないと報告した。4甲員の部屋にいってみたら他甲板員二人が横になっている彼の顔を交代で血を拭いていたが止まらなくそのまま置いたら血液不足で生命の危険な状態だった。茫々大海で寄港する所もないし・・・

慌てて薬品倉庫に行って全てのクスリを調べたがほとんどスペイン語で書いてあって何が何かが全然分からない。前任航海士がスペイン寄港時に薬品を仕込んだようだった。長い間迷っていたとき、平たい缶を見つけて蓋を開けてみたら薬品の付いているガーゼだった。もしかしてという心でそれを患者の傷につけた。そうしたら嘘のように血が止まった。後で分かったけど、それがパラピンガーゼで止血用で使われるものだった。全く体験で学んだ医薬品知識というべきか。そういえば前任航海士との引続きのとき、スペイン語を勉強しなさいと言われたことが思い出した。スペイン語がわからないと患者が死ぬべきか。

ある日は下級船員同士で酒飲んで遊んでたがつい喧嘩が始まった。ところで喋っている途中で相手の拳で顎を打たれて自分の歯により舌が切断された船員がいた。舌が切られた人は喋られなく出血しながら吼えるから皆怖くて近づけなかった。二日くらいそのまま置いといたら唖子になるはずだった。

筆者は手術用針と糸の代わりに普通の服修繕用の針と糸を持ち、切られた舌の一片と本体を縫合してみようとした。麻酔剤があるわけないので患者は痛くてかんかんになって飛び上がる。そこで数人が手足をしっかり握って動かないようにさせて縫合手術を敢行するほかなかった。数日後、患者の口を開けてみたら幸いに舌は貼ってあった。難術だった。

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