
投稿者: ilkuji_99 総トン数1万トンを超える大型貨物船、M/V
Asia Graceは日本で年次ドック修理および検査を終えてニュージランドへ向かった。今回の航程で山の中の鬱蒼な雨林から生産される抱えを越す原木を日本へ運搬する任務を任せられた。高級家具の材料で使われる原木は大人二人が腕を開いてやっと手を繋げるほど大きな木である。鏡みたいに静かな太平洋。運のいい航海だった。
常に12ノットが精一杯だった船が一時間に15ノットで走った。ドック中、羽の切られたプロペラーを新しいものに交換したためだった。ところで筆者の当直時間には18ノットで走る。不思議だなと思って機関室のコントロールルームに電話をかけたら三等機関士がわざとRPM(分当回転数)を上げたという。パイプも漏れるので治療を受けたくてもっと早くNZに着くためだと平気にいう。陸地で買春したのがネックでパイプから濃が出るのでかなりつらいらしい。そうだとしてもETA(入港予定時刻)よりは早くついても荷役作業に入るまで滞船料がかかるのでいいことではない。いったんスピードをダウンさせ、正常速度を維持した。Mountain
Manganui という入港予定地を目指して二等航海士は海図に航路を描き、巨大で速力のいい船は南太平洋を気勢よく切った。
朝はやく田舎っぽいちいさな港に到着、錨を降ろし、入港手続を待っていた。さて2時間ほど経ったのに又出港のスタンバイベルが鳴る。間違ったポートに入ったとの電文をエイゼントからもらったのだ。NZには処女航海の船長および二等航海士の手落ちにより本来予定地より北の方にあるMangonuiに入ったのだ。地名が似ていたので混同したのだ。Mountain
Manganuiとは正式名称じゃなくTaurangaというポートにある島の名であるが、慣例的にそう呼んでいたのだ。船長は恥ずかしくなり、顔が真っ赤になってその夜、サロン士官たちを呼び、ウィスキーを暴飲した。
船員なら誰でもNZに行きたがる。それは荷役施設が不十分なので人力にもっと依存していてその分、荷役期間がもっと長くかかるし、労働組合により統制される陸上人夫たちは少しでも雨が降ったり強風が吹いても作業を中断し帰ってしまうから船員たちはゆっくり余暇を楽しみながら上陸もできる。もうひとつ良い点は遊び女たちが船に乗船、同居もするとの、当時では破格的な話を聴いたからである。NZは人口3百万ぐらいで人口より羊も数が多く、結婚できない男が羊と獣姦をするとの信じにくい伝説を持ってる国。聴いたとおり接岸したあと、
本船に女たちがさっさと集まり始めた。原住民のマオリ族と白人の混血女がいるかと思ったら金髪の純粋な白人女もいる。みんな家ではやることのない女性だろうか。年齢も20―30代ほど。不幸に彼女らは筆者のような幹部船員は好きじゃないという。なんとなく官僚的な雰囲気がするからかなぁ。
上がって来た女たちは皆ベッドルームの下にある一般船員たちと各自パートナーを決めてから同居をしはじめた。そして船員が外出するときは一緒に出かけて買い物もするしDBバーで踊りながら人生を楽しむ彼女ら。非難する必要はないはずだ。今度は一等航海士が何かをみせてやった。外出してバーで付き合った女性に誘われ、彼女の家で一泊しながら交接を楽しんだことまでは良かったけど、朝、いきなり入って来た若い男が夫だと思って驚いたらしい。けどその男は彼女の息子だったそうだ。お母さんの新たなセックスフレンドに挨拶しに入ったという。でも、どうしても年齢帯も似ているあの息子が気になって朝ご飯も断わって逃げて来たそうだ。夕方にはみんな本船に戻ってきて食堂でディスコパーティで徹夜しながら船員たちは楽しく遊んだ。
2週間の荷役を終えて出港するときは涙の離別の場面もみえる。そして次の船が入ったら又新たなパートナーを作り、楽しく遊ぶ彼女ら。NZのカモメと名づけてみた。
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