高村薫『黄金を抱いて翔べ』
新潮社(新潮文庫) 1994年1月  ISBN:4-10-134711-5

高村薫氏に挑戦してみた初めての作品です。
いろいろなHPなどに「高村薫さんは面白い/深い」などと書かれているのを見ていたので非常に興味津々で読んだ一冊でした。

これは作品自体の感想とは違うのですが...高村氏は文庫化する時に全稿書き直しをするそうです。「すごい...」としか言い様がないですが(^_^;)

さてさてこの『黄金を抱いて翔べ』ですが著者のデビュー作であると同時に日本推理サスペンス大賞を受賞した作品です。この「日本推理サスペンス大賞」ですがあの宮部みゆき氏の『魔術はささやく』も受賞した賞です。

内容に関しては...
いろいろなところで評判のとおり非常に「深い」です。主題は大阪の銀行の地下に眠る金塊を奪うという金塊強盗ではありますがその背景に複雑な少年時代を過ごした主人公の心理や北朝鮮からも韓国からもそして日本からもおわれる元北朝鮮工作員や人生を棒に振った元神父などたくさんの人が登場して一つの「金塊強盗」というテーマを幾重にも「人」と「始末する」というものが取り囲み非常に濃厚で分厚い作品に仕上がっていると私は感じました。

昔「高村薫さんの作品は深いから買って2回くらい読みます」なんていっている知人がいましたが...その気持ちよく分かります...って感じでした(^_^;)

いやー本当に深いです...最後の半分くらいは読み続けずにはいられない面白さでした。

しかしながらどこか「私たちの世界とは無縁のところ」で物語が進んでいる感じなので(さすがにヤクザや殺し屋とは無縁でいたいですよね...)本当にエンターテイメントとしてのミステリーとして読める作品だと思います。このところ(誰とはいいませんが...)「だれでも犯罪者になる可能性がある」ということをほのめかしつつある社会派のミステリーが流行りましたがこの作品は本当にあまりいい言い方ではありませんが私たちの生活とはかけ離れたところにある犯罪という印象を私は受けました。そのため先ほど書いたような社会派ミステリーのように私たちの心にある種の「問題意識」を私たちあたれるようなミステリーではないのではないか??と私は感じました。

しかしながら...純粋にミステリーとしてはこっちの方が面白いですね(苦笑)改めてそう感じました。ミステリーって私たちの手の届かない所にあるから面白いのかもしれませんね...。

2003年3月8日
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