あの約束から2ヶ月、それは10月のある日のことだった 朝、いつものように目を覚ますと、隣に体温を感じる 昨夜光一の部屋に泊まった剛は、暖かいその腕に包まれながら朝を迎えた 絡まる腕をようやく外すと、ベッドの上に座り、光一の顔を覗きこんだ 綺麗な顔・・・それはときには冷たい目をすることもあるけれど、 剛の前で、いつも光一は優しい目をしていた 光一の頬を撫でていると、剛は妙な胸騒ぎを感じた 「このシアワセは・・・いつまで続くんやろ・・・?」 そんなことをふいに呟いた自分に驚き、コーヒーでも入れようと、そのベットルームを出た コーヒーを入れているうちに、段々とさっきの嫌な気分が落ち着いてきた なんだったのだろうと考えるが、あまり深く考えるのはよそうと思う そう思ったとき、背中に抱きついてくる気配がした 「おはよ」 剛がそう声を掛けると、光一は「おはよ」と返し、オハヨウのキスをせがんできた 笑いながら「今日だけやぞ」と言ってキスをしてやった なんでか分からんけど、僕も今すぐに光一とキスをしたくて、 いつもだったらしないはずなのに、朝から僕等は沢山のキスをした 仕事に出る時間が来て、玄関で靴を履く僕に、先に履き終えた光一が聞いてくる 「今日何時に終わんの?」 「えっと、今日は特番の収録があるから・・・ちょっと遅くなるかも・・・・ あ!そういえば長ちゃんも一緒やったわ」 「そっか、俺もあんま早くは終われないと思うけど・・・じゃあ家で待ってる」 「うん」 別々の仕事場に向かう為、剛が迎えに来たマネージャーの車に乗り込む 「気をつけてな」 「おぉ」 そう言って笑う剛の笑顔が、いつも通りのはずなのに、光一の心にはなぜか妙に残った・・・ 午後10時半頃、光一は、レギュラー番組の収録だったのだが、今は休憩中だった 「明日はオフやし、剛連れてどっか行くかな・・・」 タバコを吹かしながら、珍しくそんなことを考えていた光一の元へ、青い顔をしたマネージャーが入ってきた 「どしたん?何かあったんか?」 「いや・・・あの・・」 「なんや、はよ言うてや」 中々言おうとしないマネージャーに焦れて、光一が急かす 「光一、落ち着いて聞いてくれ・・・・・剛が、事故にあったらしい」 はっ?事故?剛がか?ケガは軽いのか、重いのか・・・聞きたいのに声がうまく出てこない 「・・・かなり・・重症らしい・・・」 それを聞いた光一は、すぐに病院に行くんだと言い出し、皆に止められた 「なんでやねん!剛が大変なことんなってんやぞ!こんなとこにいられるか!」 「光一!お前もプロだろ?!気持ちもわかるけど、しっかりしろよ!!」 なにがプロやねん・・・大事な人間ほっぽって仕事してるんがプロなんか?! パニック状態の光一の心に、ふと、剛との約束がよぎった・・・ 『ちゃんと仕事を終えてから来て・・・・間に合わなくてもいいから・・・kinkikids残して・・・』 そうや・・・剛との約束・・・絶対に守ると言った約束 これが今なんか?守らなあかんのか? 『絶対約束やで』 そう言った剛の声が聞こえたような気がした 分かった、守るわ・・・やから待っててな!絶対待っててな!! 急に落ち着きを取り戻した光一に、回りのスタッフは驚いた 「・・・ちゃんと、仕事してから行きます」 その言葉通り、光一はその日の仕事を続けた 剛のことなど、顔には微塵も出さずに・・・ それから3時間、光一は、病院にいた たった今着いた光一は、剛がいるはずのICUへと向かった ICUの入り口のソファーで、長瀬を見つけた うなだれる長瀬に声を掛ける 「長瀬・・・」 光一に気付き、顔を上げた長瀬、その顔は涙で濡れていた 「光一・・・」 「長瀬・・・剛は・・・?」 「・・・・・・たった今・・・・」 それだけで何が起きたのかが理解出来る言葉・・・ 光一も、そのひと言で、剛がどうなったのかを悟った 人間て・・・悲し過ぎると涙も出えへんもんなんやな・・・・ いや、理解できないだけなのかもしれない、心が受け入れるのを拒否するんだ 呆然と立ち尽くす光一は、長瀬の言葉で心を取り戻した 「光一・・・なんでこんな遅いんだよ・・・・連絡はもっと早く行ったはずだろ? ・・・仕事してたなんて言わないよな?つよっちゃんより仕事の方が大事だったなんて言わないよな?!」 長瀬の声が段々と大きさを増し、その瞳からは涙が溢れる 長瀬はソファーに腰掛けると、言葉を続けた 「つよっちゃんさぁ、救急車ん中で光一、光一ってさぁ、お前の名前呼ぶんだよ・・・ 苦しくなってもさ、ずっと呼んでんだよ・・・親友が側で苦しんでるのに・・・俺なんもしてやれなくて・・・ 側にいてほしいのは俺じゃないのにさぁ・・・なのに・・・なんでお前はこないんだよぉ・・・」 嗚咽を零しながら、話続ける長瀬に、光一は言った 「・・・・あいつと・・・約束したんや・・・」 「・・・約束・・・?」 「剛は、今どこにおんの?側に行ってやりたい」 光一の瞳を見た長瀬は、剛のいる、霊安室の場所を教えた それが、剛にとっても1番嬉しい事だろうから・・・ 霊安室に来た光一は、剛の顔にかぶせられた布を取ってやった すると、剛の顔は事故にあったというのに傷もなく、とても綺麗で、まるで眠っているようだった その剛の横に立つ光一は、剛の向かって言った 「約束・・・守ったで・・・」 「間に合わなかったけど・・・あやまらんからな・・・・・kinkikids絶対に続けてくから・・・」 そう言って、剛の頬に触った でも、もうその身体には温もりは無くて、冷たさだけが感じられた その時、光一の頬に、一筋の涙が伝った 「・・・・つよし・・・」 溢れ出した涙は、止まる事を知らなかった 「・・・なぁ、起きてや・・・冗談やって・・・・笑ってっ・・・・・・お願いやからさぁ・・・・・俺に笑顔見せてぇや・・・」 剛の手を握る・・・ 両手で包み込み、擦って自分の体温を伝える そうしていれば、体温が戻ってくるような気がして・・・ 光一は、剛の手を握り続けていた・・・・・ トップアイドルの若すぎる死は、世間を騒がせた ファン達は悲しみに打ち震え、追悼の番組などが次々と放送されていった それから3年の月日が流れ、彼の事もみんなの記憶の中から段々と薄れていった頃・・・・・ 光一は、相変わらずこの仕事を続けていた 剛の願い通り、kinkikidsとして・・・・・ 「くぅ〜ん、くぅ〜ん」 耳元でケンシロウの声がする なんや・・・もう朝か?あぁ、餌やらなな・・・ 光一の耳元から体の方に移動してきたケンシロウを抱き上げて 餌をやるためにリビングに行く 剛が亡くなってから、光一はケンシロウを引き取らせてもらうことにした 元々光一にはなついていたケンシロウだったが、 この3年間でご主人だと認識してきたようだった ケンシロウに餌をやりながら出かける用意をする 10月20日、今日は3回目の剛の命日だった いつもはギュウギュウに詰まっているスケジュールも、この日だけは毎年明けてあった 剛の墓参りに行く為に 「くぅ〜ん、くぅ〜ん」 足元にケンシロウがじゃれつく 「なんや?お前も行くか?」 抱き上げて、愛車の助手席に乗せてやろうと、駐車場に向かう 彼が乗っていた愛車の助手席は、今はケンシロウのものとなっている ちょこんと座るその姿に、微笑みが漏れる 車で1時間程の緩い丘の上に剛の墓のある墓地はあった 白いバラの花束を持つ光一、毎年供える花はこれに決めていた 真っ白な、剛のような花・・・ 純真なようで、刺もあるけれど、それもまた愛しい 少しは1人に慣れたけど、キスの温もりが消えない きみと幾重も重ねた時間が薄らいでしまうのなら 記憶の中に残る苦しみも きっと いつかは癒えるだろう・・・ もう届かない・・・・何も出来ないきみのために・・・・ 愛した日々は永遠だから  許されるならもう一度逢いたい・・・・・ 愛してるから、シアワセをそっと祈るよ END ************************************************ はい、どうでしょうか 感想くだされば幸いです。 最後はねぇ、Love U4 Good の詞を引用させていただいたんですが、 これね、この歌詞使って小説書きたいなぁ〜って思ってたんだよ でも、それだと悲しい話になっちゃうしなぁ〜と思って躊躇してたんだけど、 今回、ぴったしなお話だったので、使っちゃいました。 それではまた、小説を書いた時には、読んでやってください。 佐倉ゆきこ