「・・・・・せやから、その話はもうええやろ?   今はそう言う事より仕事の方が大事なんだって・・・・・じゃあまた掛けるから」 珍しく掛かってきた家の電話を切り、光一がソファーに沈む。 「お母さん?」 「おう」 最近うっさいねんとグチる光一に、笑いながら剛が言った。 「23にもなるとさ、心配になってくるんちゃう?  早く孫の顔が見たいわ〜って」 「まぁな、最近そればっかやねん・・・」 いいかげんうんざりという顔をする。 「まぁ、仕方ないでしょう。 年頃の息子の周りに恋人の気配すらないんやからね」 そう言って笑う剛の目が、少し寂しそうに見えた。 「俺かて聞かれるもん、剛はいい人見つかったんか〜?って」 「お母さんから?」 「そう、見つかったことは見つかったけどそれ以上どうしようもないからねぇ」 その通りだ。 いくら愛し合っていても、実際これ以上進む事も戻る事も出来ない。 現実が事実を突きつけてくる。 けれど、その現実を受け止める意外に、どうしようもない。 光一には、どう答えていいのか分からなかった。 そして剛にも、それは分からない・・・。 「昔さ、お母さんが言うてたんやけどな、 子供は、お父さんとお母さんが愛し合って生まれるって」 昔聞いた母の言葉が、今になって胸に突き刺さる。 「愛情だけで子供が生まれてくるんやったらええけど、大人になったら現実はそんなに甘くはなかったからねぇ〜」 そこまで言った剛は、「そろそろ風呂でも入ろうかな」と言い、立ち上がった。 リビングのドアに手を掛けた剛を、俺は思わず呼び止めた。 剛の目が、泣いているように見えたから・・・。 「なぁ剛、泣いてもええんやぞ?  我慢しなくても・・・ええんやからな」 それから剛は振り向かなかったけど、その背中が泣いていた。 小さな肩を震わせながら、きみは堪えきれずに泣いた。 今の俺には、何も出来ない。 ただ、一緒にいてやることしか出来ない。 そんな自分が悔しいけど、でも、それだけでも、いいような気がした・・・・。 ***END***