『未来への扉』 『好き』その言葉を、僕は光一に打ち明けた。 これ以上この気持ちを抱えていることが出来なくて、だから僕は言った。 「俺もお前も男やで?気持ち悪い事言いなや」 そう言って、僕の想いは拒絶された。 『男同士』だから・・・。 そうやって拒絶されることが恐くて今まで言えなかった言葉だった。 でも、普通に考えたら光一の答えは当たり前のことで、 だから僕は言った。これ以上嫌われるのは嫌で 「そうやんな?気持ち悪いよな、ごめん!今の忘れて!」 泣きそうやったけど、それでもなんとか笑顔を作って、そんな言葉を言った。 こうして、僕の初恋は、傷ついただけで終わった。 でも、僕が傷ついたのは光一のせいじゃなくて、自分がおかしいだけやって、 ほんまに分かってるんやけど、心はそんなに簡単には納得してはくれなくて、 部屋に帰った途端に、涙が溢れてきて、なかなか止まってはくれなかった。 それから光一は、僕と少し距離を置くようになったような気がする。 僕は何もなかったような振りを、精一杯して・・・。 だけどこれ以上は嫌われたくなくて、僕もいつのまにか、光一と距離を置くようになった。 想いを伝えれば、今よりはすっきりすると思って伝えた結果・・・。 すっきりするどころか、やっぱりあんなこと言わなければよかったと、 後悔が僕を襲った。 剛に、好きだと言われた。 でもその気持ちを俺は拒絶したんや・・・。 やって、俺達男同士やで?俺は女の子が好きやし、あいつの気持ちに応えられるわけがない。 そう言った俺に、あいつは笑顔でこう言った。 「そうやんな?・・・ごめん、今の忘れて!今まで通りでいてや」 それからのあいつは、本当に普段通りで、あんな告白があったことを忘れさせるくらいだった。 でも、あいつが一瞬だけ見せた、物凄く傷ついた瞳を、俺は忘れることが出来ないでいた。 その瞳が忘れられなくて、俺が傷つけたことが、すごく苦しくて、 俺は剛と距離を置くようになった。 せっかくあいつが戻そうとしてくれていた溝を、俺は余計に深くして、 そのうち剛も俺を避けるようになった。 18歳の夏、デビューも決まり、忙しいとき、 剛が映画の撮影で上海に行く事になった。 俺は、心のどこかで安心している自分に気づいた。 あれからの俺達には、どこか気まずい雰囲気がただよっていて、 少し離れたいと思っていたから・・・。 でも、剛が帰ってきてから、俺は自分の気持ちに気づくことになる。 本当の、自分の気持ちに・・・・・。 上海から帰ると、僕はもうぼろぼろやった。 激しいスケジュールの中、慣れない海外、そして光一とのこと・・・。 食事もろくに喉を通らず、お腹を壊していた。 それでも進んでいく撮影・・・。 日本に帰った時には、心身共にずたずたやった。 そんな剛を目にした時、俺は本当に驚いた。 頬はこけて、身体も痩せ、それでも笑顔を作る剛・・・。 きっとあいつの心を傷つけたのは俺だろう・・・。 あいつはすぐに心が身体にも影響する奴なのに・・・。 その時初めて、抱きしめたいと思った。 守ってやりたいと・・・他の誰でもない、俺が剛を守りたいと思った。 その気持ちを伝えるために、寮の剛の部屋へと向かった。 扉を開けた剛は、一瞬戸惑ったような顔をしたが、すぐに笑顔になり、 俺を迎え入れた。 「どうしたん?お前が部屋くるなんて久々やん、なんかあったんか?」 「・・・・・・」 「何黙ってんの?・・・・なんか悩みでもあるんか?」 そう言って、心配そうに俺の顔を覗き込んでくる剛を、 俺は堪らず抱きしめた。 「っちょ・・・どないしたんや・・急に」 俺のいきなりの行動に、剛はパニクってしまったようだ。 「・・・・好きや」 「っえ?」 「俺は・・・剛が好きや・・・・・」 「だって・・・前に気持ち悪いって言うたやんか・・・」 細い肩が揺れる 「あんときはほんまにごめん・・・・でもな、俺、気づいてもうてん・・・本当の気持ちに・・・・・」 「こう・・・いち?」 「でも、こんなに剛のこと傷つけてもうて・・・許してくれなんて言わへんから、でも、お前のこと、好きでいさせて・・・・?」 自分の今の、本当の気持ちを、精一杯伝えた。 その時、剛の腕が、俺の背中に回った。 「許すも許さへんもないもん・・・・僕はずっと好きやってんから・・・そんなに簡単に忘れられるわけないやんか・・・」 「そばにいてもええんか?」 「そばにいてや・・・・お願いやからずっとそばにおって」 折れてしまいそうに細い剛の身体を、俺はもっと力をこめて抱きしめた。 飛んでいってしまわぬように・・・・・・。 「・・・う・・ち・・・い・・・光一!!」 俺が目を開けると、そこには剛がおった。 「早く起きろや!仕事遅れんで!」 ・・・・夢か・・・・ 「ぁあ・・・・今起きる」 そう言って、剛の腕を引っ張って、自分の方に抱き寄せた。 「ちょ・・なにすんねん!起きるんちゃうんか!」 「まぁええやん・・・・・・今日は夢見た・・・」 「夢?」 「そう、俺達が付き合いだすころの」 「17、8のころ?」 「そうそう、剛がなぁ、ずっとそばにおってなぁ〜って・・・へっへっへ」 「おいオッサン、何二ヤケとんねん・・・気持ち悪い・・・」 「なんやねぇ〜ん、あのころの方が素直やった気がする」 「はいはい、すいませんね、素直じゃなくて」 「でも・・・抱き心地は今の方がええな」 「・・・・・悪かったな」 「悪くないで〜、誉めたってんねん気持ちいいですねぇ〜って」 「うっさい!はよ支度せぇ!」 剛は布団から抜け出すと、さっさとリビングの方に行ってしまった。 「ちょっと怒らしたかな・・?」 こんな他愛のない会話のなかで、俺達はお互いの想いを感じる。 ずっとそばにいて・・・・そう言われてから、まだ4年くらいしか経ってないねんや・・・。 18の時の約束、22の今も守られてる。 隣に剛のいない未来なんて今は、まだ考えられない。 永遠なんて分からないのだから、それでいいと思う。 今、ずっと一緒にいたいと思う、それがずっと続けば、それが永遠になるから・・・。 だからもう少し、この時を一緒に感じてゆこう・・・。 2人一緒に、明日へと・・・・・。 ***End***