昔から知ってる。 光一は愛がなくてもセックスができることなんて。 だから確信が持てない。 愛されてるのかどうかを… 「愛されとるってどうやって分かるんやろな?」 夜釣りに出かけた剛が釣竿の先を見ながら呟く。 ケンシロウならわかるのにな、とため息をついた剛に彼女は苦笑する。 「そんなの2人にしか分からないでしょ」 何?また不安になってんの?と剛は笑われる。 「相手は、俺が愛してることわかっとるみたいやねん」 「だろうね」 剛の言葉に被さるように言われ、剛は思わず彼女を仰ぎ見た。 「…何びっくりしてんの?」 「いや、だって」 「剛くんは分かり易いんだよね。僕はこんなにも君のことが好きだよって出てそう」 くすくす笑った彼女はリールを少し巻く。 「…そうかもしれん」 はぁ、とため息をつく剛に彼女はそっと囁いた。 「心配しすぎなんじゃない?どう見ても彼は剛くんのこと大好きみたいだけどなぁ」 「へっ!?」 「相手って光一くんでしょ?」 バレバレと彼女は笑う。 思わず剛は竿を落としそうになり慌ててリールを巻いた。 「ちゃうねん!ちゃうねんっ!なんでここで光一が出てくんの?おかしいっ」 顔を真っ赤にして言う剛に彼女は笑い続ける。 「だって見てたらわかったんだもん」 確かに、何年も前から一緒に仕事をしているスタッフだから、と剛は苦笑した。 「…ぶっちゃけ、相手は光一なんやけど!」 「はいはい。で?」 「昨日言われたんや。俺はおまえに愛されてるからって」 「笑顔で?」 うん、と頷いた剛はまたため息をつく。 「でも俺は言えんかった。光一に愛されてるって」 確信持てへんもん、あいつ誰とでも寝るから、と剛が竿をあげた。 「…エサだけ取られたー」 エサをつけながら剛が続ける。 「前は凄い酷かってん。女の香水の匂いプンプンさせて仕事来よるしキスマークつけてくるし」 「今は?」 「わからん。前みたいに毎日会うわけやないし。俺も釣りとかで昨日会ったのも久しぶりやったわ」 「光一くんってさ、そんなに器用じゃないと思うけど?」 誰がどう見ても剛くん一筋でしょ、と彼女はリールを巻いた。 「やった!」 見事、魚を釣り上げた彼女は笑って剛に言った。 「剛くんが信じてあげないとあの子泣くよ?」 「光一が〜?」 ふふっと笑った剛に彼女が続ける。 「うん。きっと剛くんが思ってる以上に剛くんのこと愛してるから、彼は」 意味深に微笑まれた剛はそれ以上何も言えなかった。 その日の夜。 少ししか釣れなかった魚を持って家に帰った剛は部屋の明かりがついてることに気づく。 「おかん?姉ちゃん?ただいまー…」 あ。 ソファに横たわっている光一発見。 車なかったで? 今日仕事ちゃうかったん? 光一の寝顔を見てるとほっとして笑ってしまう。 剛はペタンと床に座り込んで眠っている光一に問い掛けた。 「なぁ、俺って、愛されてる…?」 寝ている時にしか聞けない。 こんな怖い質問、意識のない時にしかできない。 「俺とおって、幸せになれるんかな?幸せにしてあげられるんかな…」 ため息をついた剛は洗面所へ行こうと立ちあがった。 「つよし」 へ? 「あ、起こしたな。ごめん」 さっきの独り言聞こえてへんよな? 光一不機嫌そうだし…まだ寝起きな筈や。 欠伸をしながら起き上がった光一が剛に抱き付く。 「なんやねんー?俺今クサイで?」 「クサない」 「だって釣り行ってき…」 「愛されとるよ。剛は」 「え」 「また不安になったん?やっぱりあほつよ〜」 「…うっさいボケ」 「おまえが俺を幸せにしてくれるんでしょ?」 「…うん」 「じゃあ約束破んな」 「うん。こういちぃ…」 「泣くな。ブサイク」 「…うっさい。ハゲ」 見上げる光一に剛は引っ張られてしゃがみこむ。 「こぉいち…」 「なんや?」 「こぉちゃん」 「…つよっさんさ、泣くか笑うかどっちかにしなさい」 「じゃあ笑う」 にへ、と笑った剛の頬を光一が抓る。 「おまえは俺が幸せにする義務があんねん。わかったか?」 「なんやねん、義務って」 「うっさい」 何照れてんの? くすくす笑う剛に光一がむっとして唇を押し付けてきた。 それが濃厚なキスに変わるのも自然の流れで。 「ちょぅ、待って」 俺風呂入る、と剛が止めるのも無視して光一は服を脱がせにかかる。 「ホンマ、待って…」 「あかんもん。待てへんもん」 「そないかわいいこと言われても…」 「言っとくけどな!俺はおまえとしかヤッてへんからなッ!!」 「え」 さっきまで一緒に釣りをしていた彼女の顔が頭に浮かぶ。 「信用しろ!あほッ」 「…泣く?」 「誰が泣くか」 プイとソッポを向いた光一に剛が笑う。 「どこまで聞いたんか知らんけど、俺が思ってるより愛されてんのか?」 「知るか、くそ」 悪態をつきまくる光一に剛は笑いが止まらない。 「おまえむかつく」 「じゃあ愛してるって言ってみろや。言えへんやろ〜?」 あははと笑う剛に光一は舌打ちをして真面目な顔で剛に向き直る。 「愛し…」 「やっぱいい!あかん!」 「なんやねん?」 「…かっこええんじゃ、ぼけ」 ボソリと聞こえないように呟いたつもりの剛だったが目の前にいる光一の表情に後悔する。 「やっぱり俺って愛されとる〜」 うひゃひゃと笑う光一が幸せそうで剛も笑う。 「そりゃあ、愛してますよ?当たり前やん」 「当たり前なんや」 そうやーという剛を光一が抱き締める。 「うん。魚クサイ」 「せやからー釣り行ったってさー」 「けど愛しとる」 「え…」 「愛しとるから愛されてんやで?」 わかる?と光一が頭突きをしてきた。 「痛いっちゅうねん…」 わけのわからないことを光一に言われたが、剛はなんとなく嬉しくて。 久しぶりの愛の言葉も、愛されてる自分も嬉しい。 恋愛相談もたまにはするもんやな。 ◇ ◇ ◇ ヒロミさんからのコメント 本当は「光一といつ離れてもいいように釣りに溺れるつよ」な感じだったのに。 恋愛相談も相手は男の子だったのに。 光一って悟られなかったのに… というわけでオチないです(汗)