「ただいま・・・っと」 夜の公演を終え、家に帰る。 疲れた身体を引きずって帰って来ても、 待っていてくれる人がいるだけで気分が浮上する。 自分でも単純だと思うが、仕方のないことだ。 玄関を開けたときに、部屋に明かりがついてるのが嬉しい。 好きな人が、そこで待っていてくれるのが嬉しい。 だたそれだけが、非日常的な生活をしている俺達には、 多分余計にとても大切に思えるのだろう。 「飯は?」 冷蔵庫から飲み物のペットボトルを出そうと 扉に頭を突っ込んでいた俺に、リビングでテレビを見ながら剛が聞いて来た。 「・・・あぁ〜・・・思い出したら腹へってきたかも・・・」 「おいおい、しっかりしてくださいよ、座長」 そう言って笑いながら、軽い食事の準備をしてくれるのがありがたい。 「冷凍もんでもいい?ピラフならあるけど」 「おぉ〜、なんでもいいわ。お願いします」 夕飯の用意を頼むことにして、俺は風呂に入ることにした。 ◆◆◆ 一日の疲れを洗い流すように身体を洗い、 ゆっくりと風呂に浸かる。 「あぁ〜・・・やっぱいいね、風呂は・・・」 風呂に入ると、ひとりごとが増える。 光一は、バスタブに身を沈めながらも、段々と自分の顔がニヤけてくるのが分かった。 「ご無沙汰やからね、張り切っちゃうぞ〜っと」 結婚3年目の旦那のようなことを口走りながらも、 うきうきとしている。 なんといっても、剛が久しぶりに泊まりに来てくれたのだ。 愛し合いたい!これは恋人として当たり前の欲求と言えるだろう。 「冬コン終わって1回ヤッて・・・それから〜・・・ヤッてねえな〜」 「今日が〜1月の29日で、最後にヤッたのが2日だか3日だったから〜・・・」 いち、にい、さん・・・・・と、指を折って数えてみた。 「・・・にじゅうなな・・・・・はぁ?!27?嘘っ!そんなにヤッてへんの?俺ら・・・」 その事実に気がついた光一は、こんなことはしてられねぇとばかりに、 とっとと風呂から出ることにした。 一応バスローブを纏い、頭をタオルでゴシゴシと拭来ながらリビングに入ると、 光一の気配を感じたらしい剛が、ゲームをし続けながら言った。 「用意しといたから適当にたべや〜」 「おう」 言葉はこっちに向かって言っているものの、 気持ちも身体の向きもゲームの方に行ったままだ。 とりあえず飯は食っとこうと、チンしたピラフ、略してチンピラを食べることにした。 光一がご飯を食べ終えるころには、ゲームに飽きたらしい剛が床に座り、 タバコを吹かしながら何かの雑誌を読んでいた。 どうやら今日は釣り雑誌ではないらしい。 ソファーの上でゴロゴロしつつも食欲の満たされた光一は、次の欲求へと気持ちが向い始めていた。 そっと床に座る剛に近づくと、急に肩や腕のあたりを触り始めた。 「なんやねんな、この手は」 「いやいや、仲良くしようよ〜」 「どこのおっさんやねん、それ」 ええや〜んとひたすら粘るつもりの光一に、 「明日も王子職があるんですから、早くお休みになられた方がよいのではないですか?」 などと、剛がふざけた調子で言った。 「えぇ〜〜」 「可愛くしてもダメ」 「だってもう1ヶ月もヤッてないやんかぁ〜」 「・・・そんなヤッてないっけ?」 「そうや〜、ちゃんと俺数えたもん」 「・・・もんって・・・ていうか数えんなや」 「いいじゃん、愛し合おうよ」 「なんで標準語なってんねん」 「剛とSEXしたいの」 「直接的な言い方止めてください」 「まだ粘るか、この野郎」 「それはこっちの台詞です」 「食欲満たされたところに愛する人がいたら性欲も発動するっしょ」 「食欲満たしたら、その次は睡眠欲に行けっちゅうの。 性欲は後でも死なないでしょうが」 「お前が泊まってくのに何にもさせてもらえないなんて、俺は欲求不満で悶え死ぬね」 「言い切るなよ」 「いや、言い切ってみせる」 「でも、明日もあるやろ」 「大丈夫だぁ〜って!」 「そんなにSEXしたいんですか?」 「はい、愛し合いたいです!」 「そりゃ、俺かてそうでもないって訳でもないけどさぁ〜・・・」 「栄養=愛だね」 「・・・なんやねん、それ」 「いや、剛抱いた次の日は幸せにもなるし安心するし、色んな意味での栄養やな〜と・・・」 「・・・クッさ」 そんなことを言いながらも、剛の耳は赤くなっていた。 「じゃあ〜・・・分かったから早よ来い」 そう言って、寝室に行こうとする剛に、「今日は乗り気だね〜」などという言葉を ついつい掛けてしまって、ジロリと睨まれたが、 そのまま彼は寝室に消えていった。 その後を追いかけて自分も向かう。 食欲も、性欲も、そして睡眠欲さえも満たしてくれる・・・。 光一からすれば、剛が三大欲と言えるような気がする。 ◆ ◆ ◆