【一話〜先生は好きですか?〜】 俺の名前は桜木仙太郎。 大阪から来た、小学校の先生や。 まぁ、5年生を受け持つっちゅうことで、いろいろ大変やねんけども、 一番の悩み事は、他にあった。 「桜木せんせ〜」 ・・・・・来た!!セクハラ野郎!! 今は放課後、生徒は皆帰りだしている。 セクハラ野郎・・・モトイ、こいつの名前は堂本光一、保健の先生・・・。 男のくせに、人のケツ触ってくんねん!! 今日も保健室に連れ込まれてしまった・・・。 「いやぁ、今日も桜木先生は可愛いなぁ〜♪」 「あんなぁ、男に可愛いとはなんや!気持ち悪いねん!!」 「しゃあないやん!可愛いもんは可愛いねんから!」 そうやねん・・・こいつも関西やねん・・・。 せやから俺も気ぃ許してたんやけど、こいつは、どうやら男も好きになるらしい・・。 バイ・セクシャルって奴か?・・・知らんがな!! どうやら、俺はすっかり気に入られてしまったらしい・・・。 きっと明日も・・・セクハラされるんやろうな・・・いややぁ〜(涙) 【二話〜保健室にて・・・〜】 ここは、富士見小学校の保健室。 そこに、2人の先生が話しをしていた。 「桜木先生、きみはね、ちょっとデリカシーが足りないんとちゃうかな?」 「はい」 「女心が分かってないね・・・・・このくらいの年頃の子っちゅうのは繊細なんやから・・・」 「はい」 「ま、男心も結構繊細やけどな・・・」 「・・・はっ?」 5年3組担任の桜木仙太郎は、今まで女の子に対する注意をされていた保健の先生の、堂本光一を見た。 「俺も悩んでたときとかあったなぁ・・・仙太郎もあったやろ?」 「まぁ・・・」 「いつやったかなぁ・・・6年生くらいんときかな、初恋っちゅうのをしてやな、 いっこ年下の子でな、剛っていったかなぁ・・・可愛くてさぁ・・・」 「・・・初恋が男やったんか?」 「おう、そんときは悩んだでぇ・・・なんで男が好きなんやろって」 「お前でも一応悩んだんや?」 「そりゃなぁ、まだ小学生やったし、まさか自分がバイだとは思わへんやろ?」 「ホモだと思って悩んだんや?」 「そうそう、でも、中学入ってから好きになった子は女の子やったから、なんや、俺って普通なんやって(笑) でも、高校入ってから付き合った子奴は男やったし・・・なんかな、そのころから開き直ったっちゅうか・・・。 しゃあないやん?そう思うことに決めたんや」 「ふうん・・・って、なんで俺がお前の恋愛遍歴を聞かなあかんねん!!アホらし」 「何々?仙太郎くんは焼いてんの?」 「なっ・・・焼いてへんわ!ボケ!はげ!」 「ハゲてへんちゅうに・・・」 「っつうかケツ触んな!!油断してたらホンマに・・・」 「ええやん、へるもんとちゃうし」 「・・・・・・・」 なんか最近なれてきた・・・。 この、バイで変態なセクハラ教師にケツを触られることも・・・。 一緒にいることも・・・・・。 アカンねんけどなぁ・・・・・。 【三話〜元気じゃない先生もいる?】 俺、桜木仙太郎は今、同僚の保健医で、バイで変態で俺のことを気に入っている、 堂本光一の家の前におる。 「つうか、なんでこんなデカイとこ住んでんねん・・・」 保健医は給料ちゃうんか?俺らよりもらってんかな? それぐらい、あいつの住むマンションは、1人で住むには、デカ過ぎた。 なぜここに俺がいるのかというと・・・。 今日、あいつは風邪を引いて学校を休んでいた。 せやからまぁ・・・お見舞いっちゅうか・・・なんちゅうか・・・。 「別に・・・心配とかとちゃうねんけど・・・」 って、誰に言っとんねん俺・・・。 まぁ、こんなとこでうだうだしててもしゃあないので、インターホンを押す。 すると、少し経ってから、光一の声がした。 「・・・はい」 「あ、俺っ・・・仙太郎!」 「・・・・・・・・へっ?」 「やから、桜木仙太郎です!」 「え?!だって・・・せんたっ?!・・・え?!」 「ええから早く開けぇや!」 驚いている光一に、俺は逆切れした。 そしてすぐにドアが開く。 パジャマに上着を羽織っただけの光一は、どうやら本当に風邪を引いてたらしい。 そんな光一に、俺は言った。 「お前、何か食ったんか?」 「いや、なんも作る気起きんくて」 やっぱりな・・・。 そんなこったろうと思ったわ。 「お前は寝てろ、今おかゆでも作ったるから」 「え?!おかゆ?!マジで?!」 「はいはい、マジ、マジ・・・出来たら起こしてやるから、早よ寝ろ!」 俺がそう言うと、光一はおとなしく寝室へと向かった。 キッチンを借りた俺は、買ってきた材料を取り出しておかゆを作り始めたのだった・・・。 仙太郎は、おかゆを作るとトレーに乗せて、光一の所へと持っていった。 「ほら、卵も入ってるから、これ食べれば元気になんで!」 「ありがと」 鍋に入っているおかゆを器に入れてやると、光一に渡した。 しかし、光一は、器を受け取ろうとしない。 「なんやねん、ほら、食えや」 「・・・・・・・・」 じーっと仙太郎の方を見ている光一。 嫌な予感がした。 「・・・・・食べさせて」 「・・・・・はっ?」 「せやから食べさせてえや」 「ふざけんな!何、甘えとんねん!!自分で食え!」 「ええや〜ん、熱出て苦しいねん、食べさせて〜」 「・・・・・・・・・・・・」 仕方なく蓮華に乗せたおかゆを「ふぅ〜、ふぅ〜」する仙太郎。 その姿が、これまたかわいかった。 おかゆを光一の口元に持っていくと、 「ほら、あーん」 思いがけず「あーん」などと言ってくれた仙太郎に、お願いしようと思っていた光一の方が拍子抜けした。 慌てて口を開ける。 「・・・あ、うまい」 「せやろぉ?当たり前やがな、俺が作ったんやからな」 「うん・・・・もうちょっとちょうだい」 「おう・・・ほら・・・」 しばらく、おかゆを食べていた光一だったが、 そのあと薬を飲み、ベッドに横になった。 「桃も買ってきてあるから、あとで食えや」 「ほんま?俺、桃好きやねん」 にっこりと笑う光一を、仙太郎は、ちょっと可愛いと思った。 さっきの分の洗い物を済ませると、仙太郎は、光一に言った。 「じゃあ、俺帰るから、ゆっくり寝てしっかり直せや」 そう言って帰ろうとした仙太郎の手を、光一がベッドの上から掴み、そのままぎゅっと握った。 「っな、なんやねん!早よ離せや!」 「・・・・・ありがとうな」 「えっ?」 いつものように、セクハラ(抱きつき等)をされるとてっきり思った仙太郎は、驚いて光一を見た。 「おかゆ、うまかった・・・・・・嬉しかったし・・・来てくれて」 「別にっ・・・深い意味はないねんからな!」 「いや、そういうことちゃうくてさ、なんて言うか・・・風邪とか引いてるときって心細かったりするやん? せやから、仙太郎が来てくれて嬉しかってん」 「・・・・そうか?」 今日の光一は、やけに素直だった。 「・・・・あんな、俺、お前のこと本気で好きやから」 「・・・・・」 いつもの、そういうことを言うときとは違い、真剣な眼差しで仙太郎を見つめる光一。 そんなん反則やんか・・・・・。 「いつもはふざけてるけどさ、ほんまに好きやねん。 ・・・・せやから、俺のこと嫌いなら嫌いってはっきり言うてな、 そうでないと・・・期待してまうからさ・・・頼むわ」 そう言って笑う光一の顔は、少し寂しそうだった。 「俺は・・・お前の事嫌いちゃう・・・」 「え?」 「けっ、けど・・・・まだ分からんねん・・・自分の気持ちが・・・・。 せやから、もうちょっと待ってくれへんかな?」 「それって・・・期待しても・・・ええんかな?」 「・・・・・・分からへん・・言うてるやん・・・」 仙太郎の顔が紅くなる 「分かった、もうちょっと待つわ ・・・・・・なぁ、しばらく・・・寝るまででええから、手ぇ握っててくれへんかな?」 「ええよ」 2人の間の、何かが変り始めていた。 それが何なのかは、まだはっきりとは分からないけど・・・・・。 【4話〜焼もちやきな恋人〜】 学校が終わり、俺は恋人の家にいた。 その恋人とは、 俺の勤めている学校の保健医で、バイなセクハラ野郎(俺に対してだけのようだが)だった、堂本光一。 なぜ『セクハラ野郎』が過去形かというと、 まぁ・・・恋人の間でケツ触られたからって、セクハラ、セクハラ言うんもなんかなぁ・・・?(口癖みたいになってるけど) 最初は俺も嫌やったんに、いつのまにかあいつのセクハラに慣れてきている自分がいて、 あいつへの自分の気持ちに気付いたのは、ついこないだ。 光一が風邪を引いて学校を休んだときに、俺がお見舞いに行ったときのことがキッカケだった。 熱のせいか、その時のあいつはやけに素直で、そんで、 俺もまぁ、自分に素直になってみたっちゅうか・・・まぁ、そんときから 俺達は、微妙な感じで付き合ってる。 そんで、今日は光一ん家で鍋や。 段々寒くなってきたし、やっぱこれからの時期は、鍋に限るなぁ〜! 豚しゃぶやねんけど、ポン酢で食うとまたうまいねんなぁ・・・。 と、俺が箸を進めていると、光一がこんなことを突然言い出した。 「そういやお前、こないだホストクラブいったらしいな」 「へ?!・・・ちゅうかなんでそんなこと知っとんねん」 「なんでそんなとこ行くんや!俺という恋人が居ながら!!」 どうやら光一は怒っているらしい。 「・・・っそ、そんなん言うたってしゃあないやん!あれは生徒のためやねんもん!!」 「いくら生徒のため言うたかて、そんなとこ行ったらお前が狙われるやろが!」 「狙われるかアホ!!お前じゃあるまいし、ホストクラブに男のこと好きな奴な・・・・ん・・・ヵ・・・・・」 ・・・・おった。 あのデブ男・・・。あいつは男も好きやって言うてたわ・・・。 あれは確かに恐かった。 でも、光一もあいつと一緒やんな? そう考えたら・・・光一で良かった・・・ってちゃうがな!自分!! 固まっている俺を怪訝そうに覗きこむ光一。 「なんや?!やっぱ何かされたんか?!」 まぁ、別に何かされたわけとちゃうし、このことは光一には黙っとこう。 「・・・え?いや、何でもないで。とにかく、俺が好きなんはお前だけや。 せやから安心しい」 自分で言ってて恥ずかしくなってきた俺は、思わず俯いてしまった。 ちらっと光一の顔を窺ってみると、案の定、二ヤけた顔で俺のことを見ていた。 ・・・ちょっと言い過ぎたかな? こいつすぐ調子乗りよるからなぁ〜。 仕方なく黙々と食べつづけていると、こんなコトバが降ってきた。 「今夜は帰さへんぞー・・・なぁんてな、へへへ」 「うっさいボケ!!帰るっちゅうねん!!」 あ!みんな、誤解すんなや!!俺の身体はまだキレイなままやちゅうねん!! いくら好き言うたかて、男相手にそうそう簡単にさせられるかい!! 恋にはステップちゅうもんがあんねや。 ホンマに愛してるんなら我慢してみぃっちゅうねん!! まぁ、もう少し経ったらさしてやってもええかな・・・?みたいには思てるんやけどな・・・。 まだ光一には言うてへんけど・・・。 「そや!鍋の最後はうどんにすんで」 「はぁ?!鍋の最後はおじややろ!」 「うどんに決まっとるがな!!」 「おじやや!!」 「うどんや!!」 「絶対おじや!!」 「絶対うどん!!」 いつまで続くのか、この論争は・・・。 ちなみに私はうどん派です(おじやも好きだけど)って聞いてないって!! 【5話〜先生も悩んでる?〜】 こないだの日曜、光一と出かけた。 買い物して、昼飯食って、お茶して・・・。 まぁ、いわゆるデートって奴やな。 デートいうても、端から見れば友達同士の買い物に見えるやろけど、 一応俺達は恋人同士や。 保健の先生の光一・・・セクハラ野郎やったけどな(苦笑) というわけで、とりあえず今はお茶をしてる最中なわけや。 「お前さぁ、めっちゃセンスないなぁ・・・」 「うっさいわ!」 光一がさっき店で買おうとした服は、物凄くセンスの悪いものだったので、 仙太郎がコーディネートしてやったのだ。 「まぁ、ええか・・・あ、すいません、このガトーショコラとコーヒーを」 「じゃあ俺は・・・コーヒーでええわ」 「かしこまりました」 注文を終えてウエートレスが下がると、光一がすかさず言った。 「お前、よう食えるなぁ、あんな甘いもん・・・」 すごい嫌そうな顔だ。 「ええやん、好きなんやから!なんやねん、男が甘いの食ったらあかんて法律でもあるんか?えぇ?!」 「いや、何もそこまで言うてへんけど・・・」 「それやったら黙っとけっちゅうねん」 「まぁええわ・・・そや、今日うち来るか?」 「あ〜、でも明日学校やからなぁ・・・俺の部屋来てもええで」 「っへ?」 驚いて光一が仙太郎の顔を見ると、何にもしないならな!とぼそっと言った。 「おう、なんもせえへん!せやからもいっかい仙太郎の部屋行きたいわぁ〜」 なんだかんだいいつつも幸せそうな2人。 しかし、その1週間後に、仙太郎は見てしまったのだ。 街中で、光一が女の人を車に乗せているところを・・・。 どう見ても親しそうで、仙太郎は、その場に立ち尽くしてしまった。 光一の車にのった女の人は、切れ長の瞳が印象的な美人で、 仙太郎は、どうしていいかわからなかった。 【6話〜先生のはやとちり〜】 光一が女の人を車に乗せているのを見てしまい、 思いっきり悩んでいた俺やったが、 以外にも、その誤解はあっさり解けた。 何でかって? それは、光一本人がその女の人を俺に紹介してきたからやった・・・。 「・・・・・・・はっ?姉ちゃん?!」 「そ、こいつが俺の姉ちゃん」 そう言って、光一は姉の舞を紹介した。 「初めまして、光一の姉の舞です。 仙太郎くんやっけ?仲ようしてな」 「は、はぁ・・・」 自分のはやとちりに、仙太郎は拍子抜けした。 そう言われてみれば、すっきりとした目元がどことなく似ている。 「仙太郎くん可愛いなぁ〜。こんな弟が欲しかってんよ〜あたし。こんなんやなくてね」 ちらっと光一を見て言う。 「うっさいなぁ〜!ちゅうか仙太郎に手ぇ出すなよ!!」 「人聞き悪いなぁ、あたしは智也一筋やっちゅうねん」 「ちゅうかなぁ、有給取っておっちゃんに会いにくんのはええよ、でもな、なんで俺ん家に押しかけてくんねん!迷惑や!!」 どうやら、舞は光一の親友の長瀬と遠距離恋愛中らしい。 仙太郎も長瀬とは何度か会ったことがあり、今ではすっかり仲良しだ。 「そんなんホテル代もったいないやん」 「そういう問題ちゃうやろ?!」 兄弟喧嘩は、どうやらまだ続いているらしい。 「ふ〜ん、お姉さまに向かってそういう口の聞き方するんやぁ〜? そうや仙ちゃん、光一のひみつ聞きたない?」 「光一の、秘密・・・ですか?」 ちょっと聞いてみたいかも・・・。 「そっ、何がええかなぁ〜」 ニヤリと笑うその顔が、光一とそっくりや。 「待てや!一体何話す気やねん?!」 「さぁなぁ・・・いっぱいあるしなぁ〜」 「・・・・・・分かった!もう、全然大歓迎やから!いつでも来てください!」 「そうそう、最初からそう言えばええのに」 そう言って、ふふんと笑った。 光一と一緒でキチクやで、この人・・・。 「じゃ、あたしこれから智也とデートだから、またね、仙ちゃん」 ばいば〜いと言って去っていく舞ちゃん・・・。 ちゅうかさっき舞ちゃんて呼ぶように(半強制的に)言われた。 さすが兄弟やわ・・・。 そんな舞ちゃんの背中を見ながら、光一が呟いた。 「・・・あんのアマ・・・・・」 光一でも舞ちゃんには逆らえないらしい。 恐るべし舞ちゃん・・・。 「それにしても、秘密ってなんやったんやろ?」 「へっ?」 「今度舞ちゃんに聞いてみよっかなぁ〜」 そう言って歩き出す仙太郎を追いかける光一。 「ちょ・・・おーい仙太郎、マジで?」 「さぁなぁ〜」 慌てふためく光一。 こんなん滅多に見れへんし、 いつもの小さな仕返しや。 もっとからこうたろっと・・・・・。 こうして、2人の日常は続く・・・。 【7話〜やめないで先生! ひろしは何でも知っている?〜】 「ガッコの先生になって、ほんま良かったわ」 そう言って泣きながら、 生徒達に囲まれた仙太郎を見て、不覚にも俺はちょっと感動してしまった。 その一方で、泣き顔もかわええなぁ〜なんて思っていたりもしたんやけど・・・。 どうやら仙太郎は、このまま学校を辞めずにすみそうだ。 「ええ生徒もってお前も幸せもんやな」 そう言った俺に、仙太郎は笑顔で頷いた。 「そうやろぉ〜、やっぱうちのクラスの生徒はええ子ばっかやねん」 「うるさいけどな」 「そういうことを言うな!根はええ子ばっかや・・・確かにうるさいのは認めるけども」 「でもまぁ、良かったやん、辞めんですんでさ」 「おう、これからもがんばんでぇ〜〜!!」 「俺とのこともがんばってぇ〜やっ!」 がばっと、ベッドに半分押し倒した。 ここは保健室。 何をしとんねん!って感じや・・・。 「やめえて・・・・ほんまに・・・あぁ!もう!!」 「ええやんかぁ〜ちょっとくらいぃ〜〜〜〜!!!」 そう言って2人が揉み合っているところに、ガラっとドアの開く音がした。 「・・・・・・・ひっ、ひろし!!」 思わず光一も振り向く。 すると、そこには、ひざを擦り剥いたひろしの姿があった。 「あれ?先生?なにやってるの?」 「っへ?!いや・・・あの・・・だから・・・」 「あぁ〜〜〜〜〜〜・・・・・・ボール!そう、ボールがな、飛んできたんや! そんで桜木先生に当たりそうになったから、それをよける為に先生が押したったんよ」 「ふーん」 「そうそう!!そうなんや、ありがとなぁ、堂本先生のお蔭でたすかったわ」 「でも窓開いてないよ?」 「・・・・っへ?!」 静まりかえった保健室の中、固まってしまった仙太郎は、 そのあと中々動く事が出来なかった・・・ 【8話〜意地っ張りな先生〜】 光一とケンカした。 ほんまは臨時教員の期間が終わっても、こっちに残るつもりやった。 光一が、こっちで他の学校の採用試験受ければええやんて、 オレと一緒に暮さへんか?って言うてくれて、 うれしくて、そうするつもりやった。 そやのに、ほんまささいなことでケンカになって、 「大阪帰る」って言うてもうた。 ほんまは、帰りたぁない。 光一と離れるなんていややし、おやっさんや素子、それに3組のみんなとも、 もう会われんようになってまうかもしれへん。 でも、ああ言ってしまった以上、仙太郎は今更何も言えなかった。 何でこんなことになったんやろ・・・。 こんなつもりやなかったのに・・・。 悩んでいた俺は、ひろしのところに、髪を洗ってもらいに行った。 「ねえ先生、大阪に帰っちゃうって本当?」 「え?・・・おぉ」 「どうして急に?前は残るって言ってたじゃない」 「まぁ、色々あってな・・・」 言葉を濁す。 するとひろしが、髪を拭きながら、鏡越しに、オレの瞳を見て言った。 「光一先生とケンカしたんでしょ?」 「へっ?!・・・なんでお前!!」 「それで大阪帰るって言っちゃったんだ?」 「・・・・・」 図星やった。 「ほんとにそれでいいの?先生」 ひろしは、オレの瞳をじっと見て言う。 「素直になってみたら?」 そしたらきっと、大丈夫だよと、ひろしはそう言って笑った。 その言葉が、胸に突き刺さった。 最終話【仰げば尊し】 結局終業式の前日まで光一に何も言い出せへんかった俺やったが、 覚悟を決め、その日の夜に会うことにした。 学校が終わってから光一の部屋まで行ったわけなんやけども、 よくよく考えれば、俺等はまだケンカをしたままだったわけで、 通されたリビングには、思いっきり重〜い空気が流れていた。 しかし、いつまでもこんなことをしていても埒があかない。 そう思った仙太郎は、向い側でタバコを吹かしている光一に、開口一番でこう切り出した。 「こないだはホンマごめん!!あれは俺が言い過ぎた。ホンマごめんなさい!!」 そんな仙太郎のいきなりの行動に、光一は驚いた。 そして、自分の大人げない行動を振り返り、苦笑した。 「いや、俺もなんやムキんなってもうて・・・悪かったな」 お互いに、素直になることというのは、簡単なようで難しい。 またひろしに教えられてもうたな・・・。 仙太郎は、そんな自分に、心の中で小さく笑った。 「ま、仲直りもしたことやし、・・・せや、大阪帰らへんやろ?」 ケンカをして大阪に帰るとつい言ってしまった仙太郎に、光一は当然のようにそう言ったのだが、 仙太郎は、首を横に振った。 「なんでや?もう帰る必要ないやろ?」 「うん、そのことなんやけど・・・俺なりに一生懸命考えたんや。 そんでな、とりあえず1回大阪帰ろうかと思う」 「ちょお待て、なんでやねん?」 思いがけない仙太郎の言葉に、うろたえる光一。 てっきりこっちに残るつもりだとばかり思っていたから・・・。 「あんな、来年の採用試験は、こっちの学校のを受けようと思ってんねん。 せやから、そんときは光一んとこくるから・・・せやから、3ヶ月だけ俺に時間くれへんかな? 自分のこと、もう1回見つめなおしてみたいねん」 「3ヶ月って・・・そんなに長い間会えへんのか?お前はそれで大丈夫やって言うんか?・・・俺は嫌やで」 「3ヶ月なんてすぐやから・・・せやから頼む」 「・・・・・」 腑に落ちないような顔をしていた光一だったが、急にこんなことを聞いてきた。 「お前が帰るのって、冬休み入ってからやんな?」 「?・・・うん」 「そっか、ふ〜ん・・・・分かった、けど、3ヶ月だけやで!それ以上は待たんからな!」 「うん、ありがとう」 光一が自分の気持ちを分かってくれたことが嬉しくて、ついつい仙太郎は見逃してしまっていた。 光一の顔が、にやりとするところを・・・。 終業式当日。 ぎこちないままだった気がした生徒達から、仙太郎は最高のプレゼントを貰った。 「仰げば尊し」を、仙太郎の為に、みんなで歌ってくれたのだ。 そんな子供達の贈り物に、仙太郎は思わず泣いてしまった。 「ありがとうみんな。先生は、5年3組の担任になれて本当によかった。 ほんまに、ありがとう・・・」 忘れへん、みんなのことは絶対に・・・。 そう心に誓った仙太郎だった。 次の日、高速バスの乗り場まで、素子とあっくんが見送りに来てくれた。 光一は、「見送りには行かへんからな!」という宣言通り、ここには来なかった。 「じゃ」 そう言ってバスに乗り込む。 ゆっくりとバスが進みだすなか、俺は自分の席へと行こうとした。 すると、高速に乗る前の歩道橋の上で、生徒のみんなが、手を振っているのが見えた。 「あいつら・・・」 急いでバスの一番後ろまで行く。 みんなの姿が見えなくなるまでそこにいた俺は、自分の席に座り、静かに涙を流した。 「泣くなって」 隣からの声に、驚いて顔を上げると、そこには、なんと光一の姿が・・・・。 「な、なんでっ?!」 「いやぁ、俺も今日から休みやんかぁ、せやから冬休みいっぱいは大阪帰ろかなと思ってね」 「はぁ?・・・・え?・・・あれ?」 「何をぱにくっとんねん(笑)まぁ、里帰りも兼ねてね」 そんなことを言いながら笑う光一と、相変わらずパニくっている仙太郎を乗せたバスは、大阪目指して、高速をどんどん進んでいくのだった・・・・・。 クリスマスも正月も、一緒に過せるしなぁ〜♪ い、いややぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!! そんな2人の心の声が、みなさんには聞こえませんか? ***END***