【愛の雫】 大好きな女性がいた。 この人の為なら全てをなげうってもいいと思ってた。 でも幸せな時は長くは続かない。 「他に好きな人、いるよね?自分でも気づいてないみたいだけど」 突然言われた彼女の言葉に声が出なかった。 「ごめんね。幸せにしてあげられなかった」 無理に笑おうとする彼女の目から涙が零れる。 「早く、自分の気持ちに気づいてあげてね」 玄関のドアが音を立てて閉まる。 追いかけることも、弁解することもできずに頬を伝う涙を手の甲で拭った。 自分の気持ち… 彼女のことを愛しているはずなのに。 今会いたいのは誰だろう? この孤独を埋めてくれるのは誰だろう? 独りで真っ暗なところに帰りたくなくて、電気をつけたままの部屋にいつも誰かと帰っていた。 自分の性格からして、振られたからと女性に慰めてもらうという感覚はなく、いつも 親友、男友達、マネージャーと帰る。 でも、今日に限って誰とも連絡が取れず、マネージャーも打合せの為に早々に帰ってしまった。 残されたのはただ俺独り。 車の中で携帯のメモリを見るが、最小限の気遣いで済むような友達がなかなか見つからない。 『堂本光一』 気は、つかわんくてええけど。 仕事も別だったし、1週間以上顔を合わせてない気がする。 そんな相方がいきなり家来ぃへん?って言うのもおかしくないか? いや、でも、俺にはまだ孤独な夜は耐えられない。 イチかバチかだ。 メモリを呼び出して通話ボタンを押す。 「10回で出んかったら切ろう」 誰に言うわけでもなく呟くと、耳元で聞こえる呼出音に緊張してきた。 「はいー」 「あ!俺。あの」 「剛か?もう仕事終わったんか?」 「うん。光一は?」 「終わって家おるけど、何?もしかして遊びの誘い〜?」 うひゃひゃと笑う光一に図星を指された俺は開き直ったように答える。 「そうや。うち、来ぃへん?」 「へっ?」 …なんでそこで沈黙やねん。 「や、用事あるんならええけど」 「行く!おまえんちわかるし」 「あ、うん。ほな後で」 携帯を直した俺は、エンジンをかけると家路を急いだ。 駐車場に1台のスポーツカー。 その前にジャージを着た堂本光一が銜え煙草で眩しそうに俺を見ている。 俺だと気づいた光一が、煙を吐き出すと途端に表情が崩れて笑顔になった。 「うわっ」 不意打ちの笑顔に思わず声が出てしまい、慌てて目をそらす。 ヤバイヤバイヤバイ… 気づいてしまった。 自分の気持ち、彼女が言っていた、俺の好きな人。 それからというもの、車庫入れはガタガタ、鍵を開ける手も震え、部屋に招き入れたのは いいが会話も疎か、終いには光一が赤く火照っている俺の顔を触る始末… 「触んな、ボケ!」 「な、なんやねんっ!熱出てへんか気になっただけやん!」 「うっさいっ」 「呼び出したくせになんか怒ってるしさー…もう帰るぞ」 ボソッと呟いた光一はぱっと顔を上げた俺を見て続ける。 「おまえ振られたから寂しいんやろ〜?ええんか?そんな口聞いて」 なんでこいつはデリカシーがないんや? 普通振られた人の前でフラレタって言うか!? 振られたのも誰のせいや思うてんねんッ! 「…誰のせいで振られたかわかってんのか?」 ボソリと呟いた剛に言葉に反応した光一が怪訝な顔で剛を見る。 「は?」 「おまえのせいじゃ!おまえのッ」 「はぁ?なんで俺やねん?関係あらへんがな」 ため息をついてコーラを飲み干そうとした光一に言ってやる。 「好きな人がおるって言われたんや」 「ふーん。あ、彼女の好きな人が俺ってこと?」 あー…ごめんな、としんみりとうな垂れた光一に剛はちゃうねん、と続けた。 「俺に、おるんやて」 「へー。って、え?あれ?嘘ッ!」 目の前の光一が唸ったり考え込んだり閃いたりしてる様子を眺めていると急に笑い出した。 「何?剛俺んこと好きなの?マジで?」 うっひゃっひゃっひゃ、と知らない内に抱き締められている。 「ちょっ、なんでこんな時だけ反応早いねんっ」 「ホンマに?ドッキリちゃうの?」 「…なんでプライベートでドッキリせなあかんの」 「嬉しーーー」 「へ…」 「ホンットに?剛俺んこと好きなん?」 「……」 何も言わない俺を不安そうな顔で見つめてくる。 その顔を見ると、光一が俺に対して思っている気持ちもわかってしまい、思わず笑う。 「こんな、早よ伝える気ぃなかってんよ」 「早よない。遅いわ」 ぎゅっと、背中に回された手に力が篭る。 「…彼女がな」 「ん」 「早く自分の気持ちに気づいてあげてねって言うてたん」 「で、つよっさんはいつ気づいたん?」 「さっき。下で光一見て気づいた」 「遅ッ」 「愛してたんよ。ずっと。彼女の為ならなんだってする位、愛してたん」 「……フツウさ、俺に言う?」 「光一やから言う。こんなん誰にも言えへん。俺が愛してるの知ってたのに 他に好きな人いるでしょって言える彼女って凄くない?」 「まぁなー」 「だからな、えとな、愛されてた彼女が言う俺の好きな人っていうのは、潜在的に俺が 愛してる人で、俺が気付かないくらい愛してる人で…ムズカシイな」 「ええよ、もう」 孤独を埋めてくれる光一の暖かさに俺は泣きそうになる。 彼女はいつから気づいていたのだろう? 光一に触れて気づいた自分の気持ちの大きさに、先に気づいた彼女はどれほどの 痛みがあっただろう? ”幸せにしてあげられなかった” 今度は俺が、誰かを幸せにしてあげる番。 「光一」 「ん?」 顔をあげると目の前には幸せそうな優しい笑顔の光一がいた。 それだけで、救われた気がした。 ◇◇◇ +ヒロミさんからのコメント+ 締め切りを延ばして貰ったものの、結局ギリギリになって 仕上がってしまいました。(ゆきちゃんごめんね 汗) 『solitude』のサビ部分のキミをここでは彼女と光一さんにわけて みました。 半ば強引な展開で申し訳ないです(泣) +佐倉のコメント+ 締め切りなんて、書きあがったときが締め切りだよ!(最近の口癖) 同じテーマでも、こんなにも違うお話が出来るとは・・・。 おもしろいね〜。 また機会があったらやりましょう!