『俺がきみに出来た事』 口うるさい奴・・・。 最初のあいつに対する印象はそれだった。 人に説教ばっかしやがって、頑固オヤジみたいな奴だと思った。 でも、仕事もちゃんとしないでフラフラしてる俺に仕事を探してくれたり、 何かと親身になって面倒みてくれた。 最初はめちゃくちゃウザかった夏生だが、段々とそれがあって当たり前になってきて、それを楽しく感じている自分がいた。 そのうち俺達は、ダチ・・・って言ったら恥ずかしいような気がするけど、 そんな関係になっていた。 夏生に進められて始めたダイビング。 最初は面倒だったのに、1回潜ってしまったら、その美しさに、俺はやみつきになってしまった。 夏生と潜る海は、物凄く綺麗で、俺の汚れた心を洗い流してくれるような気がした。 夏生の撮った海の中の写真たちが、俺の部屋を飾ってく・・・。 あいつと出会って、たった半年くらいだけど、それでも、俺にとってあいつはかけがえのない人間になっていた。 それなのに・・・・それなのにあいつは・・・・・。 小さいガキ助けてバイクに跳ねられて・・・そのまま・・・。 「・・・なにやってんだよ・・・ただのアホじゃねえか・・・お前が死んでどうすんだよ・・・」 俺の頬に、涙が伝っていた。 こんなのガラじゃねえのに・・・。 それでも止まんなくて・・・。 だってさっきまでここにいたじゃねぇか・・・一緒に笑ってただろ? 『明日もくるからな、ちゃんと仕事すんだぞ』って・・・。 お前言ったじゃねえか・・・。 「俺が死んだ方が良かった・・・・」 その言葉を口にした瞬間、前に聞いた夏生の言葉を思い出した。 『死ぬなんて言葉そんなに簡単に口に出すな、生きていたくても生きられない人達だっているんだ・・・人間の中に、いらない奴なんていないんだよ。 ・・・だから、死んでもいいなんて言うな・・・なっ?』 でも、今は本当にそう思うんだ。 夏生の変わりに俺が死ねばって・・・・そんなこと言ったら、またお前怒るか? 「・・・怒れよ・・・・前みたいに、そんなこと簡単に言うなって・・・怒れよ・・・」 大切な何かをなくした俺の心は、まるで穴が開いてしまったように、しばらくの間は、痛みそうだった。 それから2年が経った。 俺の部屋に残る、夏生が撮った海の写真と、ふざけてあいつが置いていった自分の写真。 それを一度見上げてから、俺は海に向かった。 夏生に教えてもらったダイビング。 あいつが教えてくれたのは、ダイビングの楽しさだけじゃなくて、 海が、俺の心を浄化してくれることもだった。 海に潜ると、いろんなことがちっぽけに思えて、どうでもよくなってくる。 何よりも、ここに来れば、夏生に会えるような気がして・・・。 夏生と一緒に泳いでいる気がした。 海の中でだけ、あいつは生きてる気がした。 あいつは俺に色々なことを教えてくれたけど、 俺はお前に、一体何が出来たんだろう? 今となっては分からないけど、それでも、お互いに、そばにいるだけでよかったような気がした。 ***End***