抱き締める 抱き締める この腕で君を。 抱き締める 抱き締める 強がりな君を・・・。 【月影】 2人での公演の最終日を終え、 言い知れぬ高揚感を残しつつ帰路につく。 2人の時間を作るため、光一の家へと向かう。 行き慣れた場所、通い慣れた空間。 それなのに、何故か急に切なくなって 部屋に入った光一の身体を後ろから抱き締めた。 「・・・何?どしたのよ?」 驚いてそんな風に聞くけど、 「・・・なんもない」 口唇は勝手にそんなことを言う。 でもそれはやっぱり只の強がりに過ぎなくて やっとコンサートが無事終わったばかりというのに、 光一の舞台のことが心配だった。 そんな俺の気持ちを察したように、 光一が腰のあたりに回った俺の手を掴んで握り締める。 「心配?」 「・・・別に」 ほら、また強がり。 「お前は心配なんかしたって無理するんやろから、するだけ無駄やね」 あんま無理すんな もうちょっと甘えて。 そんな自分の気持ちを素直に言えない。 だからちょっと拗ねた口調で、ふざけたみたいに言ってみる。 なんでお前は分かってくれるんだろう・・・? 「大丈夫」 違うって言ってるのに、何度もその言葉を繰り返す。 「大丈夫、大丈夫・・・絶対」 俺が安心するまで。 俺の気持ちが落ち着くまで、「大丈夫」という言葉を繰りかえす。 何度も繰り返す言葉に、何故だか涙が出てきて、 俺はそれ以上何も言えず、 ただ額を光一の背中に押し付けて、 声を殺して泣くことしか出来なかった。 「心配すんなって言っても心配やろうけどさ、俺にはお前がついててくれんだろ?」 「俺にはそれが一番心強いからさ」 自分で言った癖に 自分で言った癖に、照れてるのが背中越しに伝わってきた。 光一がそんなことを言うから、余計涙が止まらなくなった。 「・・・無理だけはすんなよ」 俺の素直な気持ちを伝えるのは、 それだけで十分だった・・・。 心配だなんて言わない。 不安だとも言わない。 闘って来て。 ひとりじゃないから・・・。 だから、もっと・・・もっと抱き締めてて欲しいと願う。 俺も、今よりずっと強く抱き返すから・・・。 ひとりじゃないことだけは、確かなことだから・・・。 ◆ ◆ ◆