「うるさいな、ほっとけや」 本当は気にかけてくれているのが伝わってくる軽口にも そんな風に言い返してしまう。 最近やけにイライラしているのが自分でも分かる。 分かってる、光一に八つ当たりしてるだけだっていうことも。 最悪やん、俺。 勝手に体調壊して、そんな自分に勝手にイライラして。 折角光一の家に来てもこんな風で・・・。 何がしたいんやろか、俺は・・・。 何年かに一回はあるとはいえ、そろそろ光一も呆れているだろう。 もう誰とも口を利きたくない。 口を開けば、相手を嫌な気持ちにさせるような言葉しか出てこないだろう。 なんでやねん、最悪やん・・・と、また自分に苛立って。 そんな悪循環の繰り返し。 ベッドの上で膝を抱えて不貞腐れていたら、 不意に背中に体温を感じた。 ぎゅうっと、親鳥が雛を暖めるような抱擁。 「なにすんねん、離せや」 こんな俺ほっといてくれ。 「お前の怒るとこ見てたくないねん」 優しい声。 分かってる、お前の優しい気持ち。 それなのにまた八つ当たり。 「俺が怒るとめんどいとか思てるんやろ?どうせ」 光一はそんなこと思ってないだろうに、俺の被害妄想入った言葉。 それでも怒らず、ゆっくり諭すように語りかけてくれる。 「ちゃうよ、お前の怒ってる顔見たくない」 「俺の勝手やろ、ほっとけや」 「・・・やって、そうやってお前が怒るのって」 泣きたいからやろ? 自分の体が言う事聞かなくて悔しくて、 本当は泣きたいんやろ? そんな自分に苛立って人に八つ当たりしてる自分に 泣くのを誤魔化すために怒ってるんやろ? だから泣きたい自分を隠してる。 でも泣いてもどうにもならないって分かってるから、 泣いても自分が惨めになるだけだって分かってるから。 だから怒るんやろ? 怒ることで泣きたい気持ち誤魔化してる。 お前の怒った顔見てると、心が泣いてるのが見えるから。 だから見てたくない。 お前の心が泣いてるの、見てたくないから・・・。 「せやからお前の怒る顔、これ以上見てたくない」 俺はお前のこと救ってやれんか・・・? そういって、抱き締める腕を更に強くする。 ・・・そうなのかな・・・ 泣く代わりに怒ってるのかな・・・? そんな自分にも気付かずに、いつの間にか心が泣いてたんかな? 泣いたら今まで蓋してた気持ちが一気に溢れ出てしまうことを知っていて、 だから苛立って、怒ることで誤魔化してた。 ・・・そっか・・・。 結局こうして分からせてくれるのはいつも光一で。 ちゃんと俺の気持ちを楽にしてくれて・・・。 さっきまであれだけイラついてた気持ちが、 今度は涙に代わって零れ落ちてる。 「ほんまに泣いても大丈夫?」 もう完全に涙声のくせに、それでも光一に確認して。 「明日オフやろ?泣け、泣け。存分に泣いたらええがな」 そんな風に言ってくれる言葉にまた安心して。 気付いたら胸の前にまわされた光一の腕に縋りつくようにして嗚咽を洩らしていた。 「俺なっ・・・恐かった・・・ほんまはめっちゃ恐かったっ・・・自分の体やのに、全然言う事聞かへんでっ・・・」 「そっか、そっか、恐かったな〜、けどもう大丈夫やで、光ちゃんここにおるからな」 子どもじゃないねんから・・・と思うけど、 頭を撫でてくれる手のひらの温かさが、とても愛しくて・・・ 嬉しくて、暖かくて・・・。 涙腺がぶっ壊れたみたいにどんどん涙が溢れてくる。 安心する。 いつも俺の心のダムを壊してくれるのはこの人で。 また建設しなおしてくれるのもこの人で。 あぁ、俺は光一がいなかったら壊れるかもしれないな・・・と、 号泣してる所為でからっぽになりかけた頭でそんなことを思った。 「思いっきり泣いたらええよ。涙にはな、ストレスを体の外に出してくれる成分も含まれとんねん」 だから泣いたあとにはすっきりしてストレスも解消できて一石二鳥やな と、こんなときにも役に立つのか立たないのか分からない雑学かい・・・と心の中で突っ込みながらも、 それは彼なりの照れ隠しで、 それが分かるから、だから俺は涙でぐちゃぐちゃの顔で頑張って笑いながら言った。 「それっ・・やったらさ、こんだけないたっ・・・ら、明日には完全にっ・・・立ち直れるっ・・・やんっ・・・なっ・・・?」 「おう、明日にはばっちりやで、光一王子も側にいるんやから余計ですけどね〜」 「っは・・・はは・・・アホっ・・・」 光一に言ったら、「今更何を」と言われそうだけど、 あぁ、この人に出逢えてよかったなーと、 僕は今、心からそう思った。 でも、きっとまたこういう風に彼を困らせてしまうのだろうと思うと、 僕はそんな自分を恨めしく思い、 だけれど僕をこんな風に愛してくれる彼を愛してやまないのだと、 そう思うと、どうしたらいいのか分からなくなってしまって、 ・・・そして僕は途方にくれる。 ◆ ◆ ◆ 佐倉のひとこと ≪この二人は、いい意味で途方にくれてる感じですね。≫