■■体を痒がる・皮膚が赤い■■

体を痒がる、皮膚が赤いなどの症状がみられる場合、病院に行く前に飼い主さんが愛犬・愛猫をいつもより少し詳しく観察してくれると助かるときがあります。もちろん体を痒がる病気は、大部分は何かの皮膚病と診断されることが多いのですが、必ずしもそうとは限りません。ここでは観察のポイントなどについて知ってもらおうと思います。

 

■■原因■■

体を痒がったり皮膚が赤くなったりする原因は、大きく「1次性」と「2次性」のふたつにわけられます。1次性というのは「痒くなって当然の病気」であるということで、2次性というのは「本来痒くならない病気なのに、体が弱っていたりして細菌感染などにより痒くなってしまった」というものだと考えて下さい。つまり、2次性の場合は細菌やノミのような寄生虫など、目に見えて痒みを起こしている原因があっても、それだけが原因ではないので細菌や寄生虫を退治するだけでは治らないということになります。
痒がる原因のうち1次性の原因として一般的なものからあげると、寄生虫(ノミ、ダニ、シラミなど)、細菌(ブドウ球菌)感染、酵母(マラセチア)感染、アレルギー・アトピー(食物、ハウスダスト、花粉など)、自分の免疫がおかしくなっていることなどが考えられます。
2次性の原因には、ニキビダニ症や内分泌疾患による皮膚病変に細菌感染が重なったもの、犬種によって(ブルドックやパグ、ペキニーズなど顔にシワの多い犬)は皮膚が擦れやすく、擦れて炎症をおこしたところに細菌感染が重なったもの(間擦疹という)など、いくつか考えられます。ニキビダニなどはそれ単独では痒くないものです。

 

■■ポイント■■

ここでは、病院に行く前に観察してほしいことをいくつかあげていきます。考えられる病気の可能性をもとに、ポイントとなる項目を載せてみました。

時期
いつから痒がるようになったか? 完全に何月何日ということは必要ありませんが、 「だいぶ前」という言い方は、人によりとらえ方が違ってしまうので、 せめて「何年前」、「何ヵ月前」、「何週間前」、「何日前」と、 だいたいの期間を言えるようにして下さい。 また、例えば毛が抜けている場合は先に毛が抜けたのか、 痒がって抜けたのかがわかれば言うことなしです。
室内の環境
室内はどんな状態にあるのか?  他に同居動物はいるか、フローリングであるのかじゅうたんがひいてあるのか、 畳の部屋にいつも犬あるいは猫がいるなど、 できれば犬や猫が一番気に入っている場所もわかればいいと思います。
餌の種類
普段どんな食餌を与えているか?  犬や猫が食べているフードの種類とメーカーをメモして下さい。 それからそのフードはいつから食べているのか、 最近新しいものに変えたなら以前のフードについても名前を教えて下さい。 また、おやつなどをあげている場合も同様です。
ノミの予防について
フロントラインやプログラム、アドバンテージなど、 ノミの予防薬を使用しているか、または最後に使用したのがいつかなども重要な参考事項になります。
散歩または飼育状況
犬ならばどんなところへ散歩に行くか、猫ならば外出するかどうかを教えて下さい。
食器
食餌を与える時の食器の種類についても参考になる時があります。 これは、獣医師に聞かれたら答えられる程度でいいと思います。
季節性
皮膚を痒がる時期に季節性あるいは周期性はあるか?  春になるとひどくなる、季節の変わり目になると痒がるなど、 皮膚の変化に季節性が感じられるときは、必ずそれを報告してください。

 

■■治療■■

治療はそれぞれ考えられる病気(感染も含めて)で違ってきます。皮膚病の治療は獣医師それぞれでかなりやり方が違い、 一概にどれがベストということは言えないと思います。例えば試しにやってみる治療もあり、 確定診断せずに薬を投与して治ればOKとする場合もあります。本来は、 きちんと検査をして診断がついてから治療を開始すべきですが、 飼い主さんにとっては一日も早く痒みをとってあげたいと考える人も少なくなく、 検査も高額であることが多いため、実際の臨床ではこのようなやり方をせざるを得ない場合が多いようです。 したがってここではあえて詳しい治療法は示しません。 獣医師によりだいたいの診断がついたと仮定した上で、 多少の例だけあげておきます。

食餌療法

犬の場合アレルギー性皮膚炎だった場合、 アレルギー検査により食物性アレルギーと診断されることがあります。 食物性アレルギー自体はそれほどポピュラーな病気ではありませんが、 わりと大豆やトウモロコシ、牛肉など、 わりとドッグフードの成分として使用されているものがアレルギーのもと (抗原、アレルゲン)になっている犬が多いようで、 当然食餌の改善をしなくてはなりません。自家製フードでも可能ですが、 食べてくれるなら処方食を与えた方が栄養バランス的にはよいと思われます。

減感作療法

最近人の花粉症が多くなり、新聞などでもよく見かける言葉だと思います。猫ではアレルギー検査が難しくアレルゲンが特定できず、また原因がわかっても食物性やノミが原因であることがおおいため、一般 には行わないのが普通です。犬の場合はアレルギー検査で花粉やハウスダストマイトなどとわかった場合、減感作療法が行われることがあります。ただし、この治療方法は長期間かかることと費用も労力もかかることから、重度で痒み止めなどの内服薬が効きにくい場合に考えるべきだと言われています。また、花粉症など季節性のもののほうが治療結果 がよいようです。

ノミの予防

これはやってない人は今からすぐにでもやるべき治療方法だと思います。 ノミの感染だけでは痒くないこともありますが、アレルギー体質の子の場合は、 ノミの感染により症状がひどくなってしまうこともあるので、常に予防をしておいて下さい。 猫は「どうせ外にでるから」と言って予防を諦めるのではなく、 外でついたノミを家の中で繁殖しないようにすることと、 ノミがついた時点で吸血させないようにすることで、 ノミによる被害を十分防げます。

部屋の掃除

ノミアレルギー性皮膚炎や、ハウスダストマイトや花粉などによるアレルギー性皮膚炎・アトピ−性皮膚炎などの場合、部屋の掃除を徹底的にするだけでも効果 があることがあります。症状が治るというのではなく軽くなると考えて下さい。特にハウスダストマイトが原因であるとわかった場合、多くの人は諦めがちですが、何もしないよりは部屋を掃除したり、じゅうたんをやめてフローリングにしたりするだけでも違ってくるので試してみて下さい。噴霧式の殺虫剤を定期的に散布することもお勧めです。殺虫剤はダニやノミの卵やさなぎには効果 がないので、必ず定期的に行って下さい。

食器の取り替え

口の周りが特に赤くなったり痒くなったり、脱毛しているような場合には、 プラスチック製の食器をステンレスにするなど、食器を試しに変えてみるのもいいかも知れません。

 

■■まとめ■■

犬では特にゴールデンレトリバー、シー・ズー、フレンチブルドック、ミニチュア・ダックスフントなどでよくアレルギ−・アトピー性疾患をみることがあります。アレルギーとアトピーを外見だけで区別 することは難しいし、また専門的にもややこしい分類ですが、どちらにしてもこれらは対策あるいは治療をしなければ治ることのない病気です。一方ノミやダニなどは飼い主さんがある程度予防できるものなので、せめてそれだけでも防いであげて下さい。ダニでは疥癬と呼ばれるヒゼンダニ症がありますが、皮膚の中にもぐって生活しているため1回の皮膚検査では検出できないこともあります。けれどその皮膚症状は実に特徴的で、痒みも非常に強いため、ダニが検出できなくても薬を投与することもあります。また、ニキビダニは人でも普通 に皮膚の毛包というところに住んでいておかしくないダニで、症状がでるのは一般 に幼犬や免疫不全の犬などの場合です。幼犬でニキビダニ症になった場合は、成長するにつれ治ってしまうことが多いようですが、10%ぐらいはどんどんひどくなることもあり、また細菌の2次感染があると痒みがでてきたりもするので、治療してあげたほうがいいと思います。ここでは全ての疾患について説明はしていません。もちろん原因の項目であげたもののうち、詳しく説明したほうがいいものもあるでしょう。けれどここでは病院に行くことを仮定して、その前にしてほしいこと、知っておいてほしいことを少しだけあげるだけにしました。というのも、目でみないと全くわからない病気の代表が皮膚病だからです。口だけでどんな感じと説明されても、こちらの想像も「こんな感じ?」としか言えないので、観察すべきところを観察したら、必ず病院へ行くことをお勧めします。