■■外耳炎■■

犬や猫がバリバリと耳を掻き、頭を左右にふったりしていたら、それは外耳炎かもしれません。中耳〜内耳炎まで波及していると、斜頚がみられたりします。耳の中を観察したとき、茶〜黒の耳垢がたまっていたり、耳の皮膚がすごく腫れていたり、慢性的に掻いてる子は耳の皮膚の表面 が灰色っぽくなって厚くなっているかもしれません。犬と猫では比較的犬のほうが多いと思われます。自宅での耳の手入れを含め、きちんと理解しておいて下さい。

 

■■症状■■

外耳炎という言葉はとてもおおざっぱな病名ですが、ここでは外耳に生じた皮膚炎であると考えて下さい。犬や猫が耳を痒がり、後ろ足でしきりに掻いたり、耳を壁にこすりつけたり、頭を左右にふったりするのが一般 的な症状です。耳の状態は汚く、耳垢がたまっているのがわかります。常に掻いているので耳の皮膚は赤くなり、それが長期間にわたっているものは皮膚が厚くなり、色は黒っぽくなります。

原因は色々ありますが、犬ではマラセチアという酵母あるいは細菌の異常繁殖、アレルギーによる外耳炎がよくみられ、猫で外耳炎がみられるときは、疥癬虫というダニの寄生によるものが多いようです。そのような原因に侵されやすいのは、耳の毛が多かったり耳が垂れている犬種では通 気性が悪いこと、耳道が狭いこと、日本の気候(特に梅雨の時期)に適応していない犬種、耳掃除のしすぎ、腫瘍などが耳道をふさぐなど様々なことが考えられます。「犬種」によっては仕方のないこととも言えるかもしれません。ここでは主にみられる原因について載せました。

マラセチア・ブドウ球菌の異常繁殖
耳や皮膚には正常でも細菌が存在しています。 それがなんらかの原因で異常に増えてしまい悪さをすると、耳の皮膚に炎症をおこし、 皮膚からたくさん分泌物がでてくるようになります。 マラセチアの場合は特有のすっぱい匂いがするので、耳垢検査で菌を検出しなくてもわかってしまいます。
寄生虫
犬猫の耳に寄生するダニは、一般 に疥癬虫と呼ばれるミミヒゼンダニがみられます。 ダニは耳の皮膚の中にもぐったり皮膚を引っ掻いたりするので、 とても痒く強い症状がみられ、病院で耳をのぞいて検査している時に、 後ろ足をパタパタさせて耳を掻こうとするしぐさがみられるくらいです。
アレルギー・アトピー性皮膚炎
犬や猫の場合、食物アレルギーやアトピーの多くは皮膚にみられます。 花粉症もくしゃみや鼻水だけでなく、皮膚病としてあらわれることが多いぐらいで、 難治性(なかなか治らない)であまり季節性が感じられず、常に両耳を痒がっていて、 耳が真っ赤だったり、体の他の所(とくに股、脇、背中など)にも痒いところがみつかるような場合は、 アレルギーが関与していると思われます。最近ではゴールデンレトリバーやシー・ズーなどにアレルギーが多くみられるため、 これらの犬種の外耳炎も多くみられます。
肛門嚢
犬や猫の肛門のわきには腺がありますが、特に犬では腺に分泌物がたまってしまうことが多く、 飼い主さんの中には定期的にしぼったり、またそのために病院に通ってる人がいると思います。耳を痒がっている場合に、 同時にお尻もこすりつけたりすることがあり、 そういう時は肛門嚢を搾ってあげると、耳の調子もよくなったりします。
耳掃除のしすぎ
病院やトリミングの時に犬の耳を掃除してもらった経験がある飼い主さんがいるかと思います。 獣医師や看護士は綿棒を使いますが、自宅での使用は勧められません。 耳の皮膚はとてもデリケートで、もしも飼っているペットの耳がきれいなら、 まったく手入れの必要はありません。むしろ触らないほうがいいくらいです。 耳垢がたまりやすく、定期的に掃除をしたい場合も、 綿棒は使わず洗浄用のローションだけにしてください。 綿棒で皮膚を刺激することにより、皮膚が炎症を起こして飼い主さん自らがペットの外耳炎を引き起こしてしまうことになります。 また、耳の毛は、例えばミニチュア・シュナウザーなど耳の毛の多い犬種でも、 私個人的にはきれいならば抜く必要もないと思います。通気性をよくするために、外耳炎の症状がなくても抜くように指示する先生もいますが、 耳の毛を抜くことでやはりそれが炎症のもとになってしまうこともあるからです。
内分泌疾患
犬が年をとってから急に外耳炎になった場合、 甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が関わっていることがあります。

 

■■検査■■

 

「耳を痒がっている」といって犬や猫をつれていった場合、飼い主さんに一番目立った症状は耳にみられているわけですが、単に耳だけに問題があるとは限りません。というのは、症状が耳にでているだけであって、「素因」というおおもとの原因があるかもしれないからです。例えばアトピー性皮膚炎やアレルギ−皮膚炎は、耳の治療だけしても根本的に治したとは言えませんし、耳をターゲットにしただけでは当然ながら治療効果 も低いと考えられます。そういった意味で、検査は耳垢検査だけにはとどまらず、というより耳垢検査に附随してわいてでてきた可能性を確かめるために、アレルギー検査や免疫機能の検査に発展することもあるかもしれません。また、内分泌疾患でも外耳炎がみられるため、その可能性が疑われた場合はそれに合った検査をすると思われます。簡単な外耳炎の場合は、ほとんどが耳垢検査で(あるいはマラセチアなら匂いだけでも)診断されるかもしれません。また、ミミヒゼンダニは時折糞便虫に卵がみられることがあり、耳には症状のない初期(特に幼犬・幼猫)に、たまたま糞便検査をすることで発見されることがあります。

 

■■治療■■

前述の原因にあげたような、一般 的な原因による外耳炎についての治療を紹介します。複雑な内分泌疾患や免疫機能が関係した外耳炎についてはここではとくに述べません。

マラセチア・ブドウ球菌

まず耳を洗浄用ローションで洗浄します。内耳炎や中耳炎まで症状が進んでいる場合、使えない洗浄剤もあるので必ず病院でみてもらいましょう。中耳炎などがなく外耳炎だけだった場合、耳垢を溶かすタイプのローションを使用し、耳を外からよく揉んで耳垢とローションを十分に混ぜ、最後に頭をふらせて耳垢を外へ飛ばします。病院ではこの後綿棒を使い、外耳道を綺麗にしてから薬剤を入れます。耳の薬は点耳薬あるいは飲み薬で、マラセチアあるいは細菌(主にブドウ球菌)に効果 のある薬を使います。ただし、マラセチア性の外耳炎は治りにくく、完治はほとんどしないといっても過言ではないでしょう。結局のところ、犬が少しでも快適になるように、痒みと上手につきあっていくという形になると思います。梅雨の時期などは特にじめじめして菌が繁殖しやすくなるので、通 気性をよくしてあげて下さい。すでに外耳炎を起こしているわけですから、耳の毛の多い犬種では毛を抜くことも必要だと思います。

寄生虫

点耳薬あるいは飲み薬、注射などを使います。ダニはだいたい3週間の周期で卵〜成虫のサイクルを繰り返します。薬は卵には全く効果 がありません。したがって、まず薬を投与して、その時存在していると仮定した卵がだいたい孵化するぐらいの時期に、再び投薬を行い、それを3〜4週間繰り返してダニを退治します。ダニはマラセチアや細菌と違い、普段正常な動物には絶対にいないものなので、根気よく完全に治してあげましょう。

アレルギー・アトピー

アレルギーやアトピー性皮膚炎の治療は、人間でも有名なぐらい難しく根気のいるものです。猫ではアレルギー検査はできませんが、犬や猫でも食物性アレルギーよりも、圧倒的にハウスダストマイトなどによるアレルギーのほうが多いと言われています。高い検査料を出して、結局わかったのはハウスダストマイトだった、なんてことを考えると検査に踏み切れない飼い主さんも多いと思います。犬であれば本来はきちんと検査をし、原因が食物であれば当然食事療法を始めるべきだと思いますし、ハウスダストマイトであっても諦めずに、こまめに掃除をしたりフローリングの部屋で犬を過ごさせてあげるなど、努力のしようはいくらでもあると思います。ただ、一気に目にみえて効果 が現れるということがないので、根気と理解が必要なのだと思います。他に治療として人でも行われている減感作療法というのがありますが、行っている病院はまだまだ少なく、また時間もかかるようです。アレルギー疾患の詳しいことについてはアレルギー性皮膚炎の項を参照して下さい。

肛門嚢

肛門嚢については、定期的に自宅か病院で搾ってください。大型犬や猫では特に搾らなくても自然に出てしまっている場合が多いようです。肛門嚢については色々な説があるようですが、ウンチが硬いとウンチをするときに一緒に搾られるという説もありますが、必ずしもそうではないようです。大型犬で、ウンチも硬いゴールデンが毎月肛門嚢搾りで通 っているケースもあります。

 

■■まとめ■■

外耳炎はマラセチア性やアレルギ−性のように治りにくいものから、寄生虫性のように頑張れば治るものと様々です。耳の入口にイボができていて、それによって外耳道がふさがれているような場合、外科手術でイボを除去する、なんてこともあるかもしれません。幼少のうちから耳掃除をこまめにしようとか、1週間に1回はクリーナーで洗浄したほうがいいかとかたまに聞かれますが、掃除をすることが本当にいいのかどうか、実際はあまりよくわかりません。前述しましたが、私個人は今現在きれいな耳をしているならば、なるべくいじらないほうがいい、という意見です。