花の島〜a day in taketomi--- 2003.10.17~10.19
石垣の離島桟橋は様々な想いに彩られる海の分岐点だ。ターミナルの待ち合いベンチで、これから各離島に向かう人は船の切符を手に握りしめ、緊張と期待に満ちた顔をあげ、海の彼方を見つめている。やがて旅から戻る日には一抹の寂しさと少しの疲れ、充実感を胸に抱え、そっと席を立ち空港へと向かうのだろう。今、私の旅は始まったばかり。海風に吹かれながら船を待ち、女友達Yと缶コーヒーで乾杯する。

出発の案内もなく、適度な人数を乗せ、小型船はリーフの中を穏やかに速度をあげていく。思った以上のスピード感、高速船の名にふさわしい白い波しぶきが小さな虹を作る。点てんと散らばる島々。
15分程で竹富島の桟橋に到着すれば、観光水牛車、貸し自転車の呼びこみが賑やかに手招きをする。そんな中をかき分けかき分け、民宿”のはら荘”のおじいが私たちを見つけてくれた。初めましておじい、お世話になります〜。はい、よく来たねえ、車に乗りなさいね〜。ワゴンのドアを開けてくれる皺の多い優しい手。眩いようなまっ白な珊瑚の道すじには、赤や黄のハイビスカス。集落にはいればジオラマのような赤瓦の家々、どの家にも色鮮やかな花が揺れている。ここは花の島だ。

のはら荘の入り口にもそれは見事なブーゲンビレアの花が咲き乱れていた。くぐるように中に入れば、宿泊客たちが庭先の白いテーブルでゆんたく中、こんにちはと笑顔を交わせば、たぶんこの瞬間から友人だ。清潔な畳の部屋に案内され、荷物を置いたら、水着の上にパレオを巻き、島ぞうりに履き替える。隣の”竹の子”でダシの効いた八重山すばを食べ(特産である甘い香りの島こしょう"ピーヤシ"と相性抜群)、ほっと一息。シュノーケリングを片手に早速泳ぎに出かけることにする。のはらのおじいが"泳ぐならカイジ浜まで送ってあげようね〜"と今度は軽トラックを出してくれる。 荷台の上に飛び乗りゴトゴトと揺られる。10月も半ばだというのに真夏のような純白の入道雲を見上げる。あ〜、気持ちいいね〜!思わず口に出る。水牛車とすれ違う。"私はね、なんでも分かっているのよ"というような穏やかな目。赤瓦の屋根には剽軽な表情のシーサーがそれぞれに鎮座する。結構なスピードで走る軽トラックを「いったいどこにいくのかね〜」と見おろしている。

白く細く熱い砂を踏み、緩やかな坂を下るとラムネ色の海が突然目の前に広がる。アダンの木陰に荷物を置き、八重山の海の感触を確かめるようにそろそろと海にはいる。少し冷たいけど、サラリとした美しい海水。シュノーケリングとフィンをつけて泳ぎだせば、光がキラキラと海中に差し込む。銀色の身体に黒いアクセントをつけた魚がスイと横切る。追い掛けていく。背の立つ浅瀬を選び、Yと子供のようにいつまでも遊ぶ。海岸では野良猫たちが熱い砂を避け、木の影や売店のデッキの下、それぞれの体勢で昼寝をしている(カイジ浜はのら猫天国)。誰が練習しているのか、拙い三線の音が聞こえる。八重山の時計の針はとてもゆっくりだ。

のはら荘のおじいは杖をついている。あまり何回も呼び出しては申し訳ないよね。Yと相談し、帰りはカイジ浜から集落まで少し頑張って歩くことにした。またね!と猫たちに手を振るが、どの猫も片目を開けるだけ。砂利道を歩きだせば、まだまだ日ざしは強く、濡れた水着がどんどん乾いていく。よし、噂のパーラー"たきどぅん"でとびきり美味しいオリオンを飲もうね。
 たきどぅんのおばちゃんはまったく商売っ気がない。ポーポー(オキナワ風クレープ)しか頼んでないのに、冷たいくず餅(サービス)が出てきて、そのうちサーターアンダギー(サービス)が出てきて、ヒラヤーチー食べる?と笑顔で問いかけてくる。ううん、おばちゃん、これ以上食べちゃうと夕飯食べられなくなっちゃう、でも有難うね〜。

気付かぬうちに日が傾いていた。赤瓦の屋根、シーサーも花も長い影を落とし始めた。洗濯をすませ、風呂にはいれば、ごはんよ〜の声に呼ばれる。盛り沢山の夕食。泳いだ後は御飯が美味しいね〜。星が出る頃には庭先のテーブルでしばし宿泊客とゆんたく。ここにはひとり旅の女の子が不思議なくらい大勢集っていてすぐに友人になる。たわいもない話に大笑い。そして、今宵はおじい主催の大宴会。全員の自己紹介に始まり、八重山民謡やわらべ歌、泡盛片手に歌の夜は延々続く。ようやく終宴したの後は午後11時、今度は懐中電灯片手に星を見にいく。季節でもないのに青く光る八重山螢がひとつ、ふたつ。西桟橋の真上にミルクを流したような天の川が横たわる。星がいくつも流れた。

 翌朝、目覚ましのアラームではなく"コケコッコォォォォぅー"という絵にかいたような立派な鶏の鳴き声で目覚める。眠い目を擦りながら薄手の上着を羽織り、散歩にでかける。夜明けは竹富の一番美しい時間帯かもしれない。生まれたばかりの太陽が赤瓦の家々に淡い光を注いでいる。白い珊瑚の道をふむ私の足音。花々の新しいつぼみの上に、木々の緑にキラリと朝露が光る。うす群青の空に細い細い月が出ている。夜を楽しんだ猫たちが柔らかな足取りで帰宅していく。やがて太陽の光が燦々と明るくなり、集落全体が鮮やかな色を取り戻す。穏やかな微笑みのような竹富の一日がまた始まる。
 
 (そんな日々を3泊4日過ごしました)。

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