幻想妖魔旅館


天子編

  

天子の試合は一試合と言う事で、試合場に直に向かった。
試合場に上がる前にはそれぞれ得意な武器が選べる。
天子は木刀を持つと試合場に上がった・・・が
天子が試合場に出るや観客は大歓声!男の部第一試合と言うことで
全ての観客の視線が集まっている事だろう。
当然天子はこんな大舞台に立つのは始めてである。
上がったは良いものの膝が震えて、思うように構えられない様子だった。
続いて、対戦相手の『雷獣』が試合場に上がってきた、さすが五獣将の一人。
この歓声を物ともしない様子で、天子をじっと見据えた。
「ほう・・この試合の対戦相手がまさかこんな子供だったとは・・これは手加減が必要かな?」
雷獣は薄笑いを浮かべて、そう言った。
一方天子の方は、試合場の雰囲気にまだ呑まれている様子。
観客の方をキョロキョロと見回していたが、突如一点の方向から、殺気にも似た視線を天子は感じた。
その方向を見ると、綾が腕組みをしてこっちを見ている。
「(そっか、姉さんと約束したっけ・・持てる力を出し切って戦うって・・・よし!)」
その光景を見た時、天子は何かを吹っ切ったように深呼吸をすると、試合場中央へ向かった。
「ふむ、小僧、倒される事が分っていて前に出るか?.今ならまだ引き返せるぞ・・」
「引き返す気なんか有りません!たとえ五獣将の雷獣様だとしても、全力を持って戦いを挑みます!」
「その心意気受け取った!怪我では済まぬ事を身をもって知るがいい!」
そう言うと雷獣は咆哮を上げると体中から雷撃を放った!
そして試合場に中央に審判の鴉天狗が舞い降りた。
「これより、第一試合天子対雷獣の試合を始める!」
その掛け声に会場から大歓声が沸き起こる。
「両者構えて!」
会場全体を暫しの静寂が流れる・・・
「始め!」
「はあああぁぁ!」
「グガァァ!」
そして今、両者が中央にてぶつかり合った!
「ぐぅぅぅっ!」
「グルルルッッ!」
木刀と爪とがぶつかり合って力比べのような状態になった。
「クッ・・」
雷獣は力比べを嫌い、後方に飛びのいた。
「チャンス!」
雷獣が飛び退いたのを見た天子は即座に木刀を構えた。
天子の構えた木刀に風の気が集まる!
「くらえ、妖闘流剣術 風の型 壱式 『鎌鼬』!」
天子の木刀から、物凄いスピードで幾線もの半月状の風の刃が放たれる!
雷獣はこれを寸手でジャンプ・・・いや空に駆け上がったと言うのが正解だろう、そして空中で天子を見据えながら・・
「ほう・・子供ながらに面白い技を使うではないか・・・良かろう、今度は此方から行かせてもらうぞ!」
大咆哮を上げたかと思うと、雷獣の身体は光に包まれ、超スピードで天子に突っ込んできた。
「ぐぅっ!」
一撃、又一撃と上空から降ってくる超速の攻撃はまるで雷鳴の様だった。
天子も超スピードでの攻撃は流石に防ぎきれず、身体に徐々に傷が増えていく・・
「天雷闘技 『雷鳴槍』、くくく・・天子、これで終わりか?情けない・・」
「くっ、まだだ・・まだ終わっちゃいない!」
天子は傷を負いながらも尚も木刀を構える。
「ほう・・まだ立ち上がれるか・・ならばこれでどうだ!!」
雷獣は素早く天子を咥え上げると上空高く駆け上った
「く・・この・・はなせ!」
襟首を咥えられて、天子はじたばたするだけである。
上空に上がった雷獣は不意に天子を中空へ放り投げた
「う・・うわ!」
天子は急に放り投げられ、落下に身を任せるのみである・・・がそれだけではなかった。
急に雷獣は天子の襟首に噛み付き、肩に爪を立て、雷を放ちながら急降下した!
爆音と共に天子は試合会場に叩きつけられた・・
「ウ・・ウウ・・・」
「これで終わったな・・我が闘技『落雷飯綱落し』これを食らって倒れない事は・・」
試合会場を去ろうとした雷獣の足に天子は掴みかかった!
「ま・・・・まだだ・・雷獣様、貴方の弱点、見つけた!」
あれだけの技を食らって尚、自分に歯向かう天子の姿に雷獣の怒りは頂点に達した!
「こ・・・この餓鬼!・・良いだろう、我が最大闘技にて骨も残らず消えるがいい!」
雷獣は上空に駆け上がると口から巨大な雷球を作り出した・・
「天雷奥義『天滅雷神覇』・・・骨も残らず消え去れい!」
その瞬間、天子はにやりと笑って傷だらけの身体を起こした
「この瞬間、待っていた!」
起き上がった天子は自分の頭上で木刀を振り回し始めた
「雷獣様!いくら貴方でも上空での技の最中には動けないはず!決めさせて貰います、『妖闘流剣術 風の型 参式風神』!」
振り回した木刀から天子を中心に竜巻が巻き起こる
雷獣は巻き起こる竜巻に雷球ごと巻き込まれた!風の刃+雷球の雷で雷獣の身体を切り刻む
「グアアアァァァ!!」
雷獣は竜巻によって試合場の結界に叩きつけられ堀に落ちた・・・
その様子を見た審判の鴉天狗が試合場に駆け寄って天子の片手を上げた
「勝者!!天子!」
試合場から大歓声が上がる
「ハァ・・ハァ・・か・・勝った・・・」
天子は膝から崩れ落ちる・・その瞬間、ヤタ鴉三女 栞が抱きかかえた
「し・・栞様、何を?」
「いいから、いいから」
烏天狗の制止を振り切り、栞は天子を抱えて試合場を降り、医療所へと向かった
「し・・・栞様?」
「しっ、天子君静かに・・・少しじっとしてて・・・」
栞は天子を抱えて降りる振りをしながら天子の傷口にそっと手を当てた。
「(大地に息づく精霊よこの者に一時の安らぎと癒しを与えたまへ『霊癒』!!)」
天子の傷が少しずつだが塞がって行く・・
「栞様・・これは・・?」
「まだじっとしてて・・・傷は塞がったけど余り無理をしちゃだめよ、雷獣と戦ってあれだけの傷で済んだのは
 ラッキーだったんだから・・・」
「はい・・・有難うございます、でも僕はまだ試合がありますから・・」
「ふう・・強いわね天子君は・・傷の方もあらかた塞がったみたいね、さ、お姉さんの試合の方を見に行ってきなさい」
「有難うございます・・栞様のほうもがんばって!」
天子は女の部の試合場へと向かっていった。
試合の方はもう終わっていた、天子が見たときには何か驚愕の声が上がっていた
「姉さーん」
天子は彩の元に駆け寄った
「あら、天子のほうも終わったの、どうだった?」
天子は彩に向かってVサインを示した
気づくと『綾』の顔立ちから『彩』に変わっていた・・
「て、天ちゃん・・その人、彩さんだよな・・・」
「(あちゃー・・ついにばれたのかな?)」
「うん、姉さんだよ、小料理屋『新月』で働いてる・・ね、姉さん」
「ええ・・今試合をしていたのは私ですわ、皆さんにはあまり、変わった姿をお見せしたくはなかったのですが・・」
彩のファン達には衝撃が走っただろう、まさかあの『彩』が試合場で人格が変わり
兵と呼ばれている『針女子』を目の前で倒してしまっただから・・
「(うーん、これで姉さんのファンも減るかな・・)」
そう思った天子だが・・・意外な反応が起こった!
「おおーっ!変わった彩さんもかっこいいー!」
「惚れ直したー!」
「よーし、これから彩さんのファンになるぞーっ!」
以外や以外、逆にファンの方を増やしてしまった!
「まあ、みなさん・・・」
彩の方はなんとなく嬉しそうだ。
「災い転じて福と成す・・か、まあ姉さんがいいならいいんじゃないかな?」
「うーん・・」
彩は嬉しさの反面、『これからどうなるのかな?』と言う気持ちで一杯だったそうだ。
それではここで男の部第一試合の結果を見てみよう

第二試合
×与平vs赤頭○
人間でありながらこの試合に望んだ事は
大いに会場が盛り上がらせたが、いかんせん
妖怪との実力がありすぎて
片手一本で堀へと投げ飛ばされた
決め技 『片手投げ』
※尚、与平には拳闘賞として米一表が送られた

第三試合
×狐者異vs塗り壁○
鋭い爪とスピードで攻撃する狐者異だったが
いくら攻撃しても塗り壁の体表面には傷一つ付かない
業を煮やした塗り壁の倒れ込みによって
哀れ狐者異は塗り壁の下敷きとなった・・
決め技 『倒れ込み』

第四試合
×狒狒vs鉄鼠○
自慢の怪力と爪で相手を切り裂く狒狒だったが
鉄鼠の鋼鉄の体毛は切り裂けず
逆に鉄鼠の鋼鉄の爪の連激を食らい
狒狒はその場に崩れ落ちた・・
決め技 『仏翔鎖撃』

第五試合
○水虎vs瀬戸大将×
鋼碗流槍術の使い手瀬戸大将が有利かと思われた試合
しかし、水虎の甲羅までは貫けず
水虎の作り出した水霧により視界を失った瀬戸大将
その隙を付いて背後から爪の一撃にて
瀬戸大将の頭の徳利を割り勝負ありとなる
決め技 『水妖術 風失霧』『爪の一撃』

第六試合
○大蝦蟇vs鬼熊×
その牙、爪の力は頭をも一撃で砕く力がある鬼熊だったが
大蝦蟇の鋭い槍捌きの前に近寄ることが出来ず
全身滅多突きにされ、大蝦蟇の勝利に終わった
決め技 『飛蛙流槍技 覇乱天針』

第七試合
×鵺vs覚り○
雷獣と同じく空中闘技を得意とする鵺だったが
覚りにすべて攻撃を読まれ、一撃も当たらない
逆に鵺が地上に降りた瞬間に鋭い爪にて
身体を切り裂き、試合続行不能にまで追い込んだ
決め技 『滅破瞬葬』

第八試合
×土蜘蛛vs鎌鼬○
鋼鉄の糸と鋭い牙、爪で勝負する土蜘蛛だが
鎌鼬のすばやい動きに翻弄され、捕まえる事が出来ない
一方風の如き動きで土蜘蛛の身体を切り刻み
ついに土蜘蛛が負け認めを宣言した
決め技 『空牙風斬』

第九試合
○大入道vsおとろし×
怪力自慢の大入道、一方空中闘技の得意なおとろし
おとろし優勢かと思われた試合だったが
一瞬の両者の攻撃にて勝負は付いた・・
大入道が勝ったのである・・
身体には刀傷のような後があり
おとろしの身体はなぜか干乾びた様になっていた
しかし、なぜ大入道が・・
決め技 『???』

第十試合
○幻鈴vs牛鬼×
巨大な身体で相手を押しつぶそうとする牛鬼だったが
玄武城副将 幻鈴(蛟)の見せる幻影に惑わされ
すでに勝負はあったようだ。
後は水の鎖に縛られ身動きを取れなくして
負け認めを宣言させ勝負を決した
決め技 『水鎖』『幻惑妖術 夢想楼見』

第十一試合
○水那vs如意自在×
鋭い爪を武器とする器物妖 如意自在
しかし青龍城副将 水那(ヤマタノオロチ)の木刀での
連撃で身体のパーツを砕かれ負け認めを宣言する
決め技 『木刀での連撃』

男の部、それぞれの第一試合はこうして過ぎていった・・
さて・・・第二試合、天子は三試合目と言う事で綾の試合の観戦に行こうとした・・・その時だった!
不意に後ろから何かで殴られ、その場に倒れ、気を失った・・・・
「・・ここは?・・」
目を覚ました天子は辺りを見渡した、どうやら山の廃屋らしい・・鳥の鳴き声と木の腐った匂いがする。
天子が目覚めた時は後ろ手と両足首を結ばれ、身動きが取れない状況だった。
すると木漏れ日の向こうに、同じように縛られ、俯いている猫耳、二股の尻尾の少女がいた・・
「・・君は・・猫又?確か女の部第一試合にいたはずじゃ・・」
猿轡はされていないので何とか喋る事は出来た。
「・・あたしは、花梨(かりん)・・女の部、第一試合で出ていた猫又はお姉ちゃんなの・・」
「でも、何故君も此処に?」
「解らない・・お姉ちゃんの試合を見に行こうとしたら、突然、数人の男に囲まれて此処に・・」
「数人の男?」
すると突然、入り口から数人の男が入ってきた・・
「まずい、目を瞑って!」
天子はとっさに花梨にそう呟き、気絶している振りをして薄目を開けてみた・・
「何だ・・まだ餓鬼供は気絶してんのか・・」
「強く殴りすぎたんじゃねえのか?」
「まあいい、兎に角、之で金はもらえるな・・人を浚って金になるとは、正に『般若』様様だよな!」
天子は思った
「(この声・・どこかで聞いた覚えが・・・)」
薄目で見た時、天子は思い出した。
「(あ、あの時姉さんに絡んできて、ボコボコにされたごろつき達!『序章参照』)」
天子は尚も聞き耳を立て話を聞いた・・
「しかし・・あの姉ちゃんがどこまで出来るかな・・」
「なんせ人質とって勝とうとしてるんだ・・般若様も人が悪いな・・」
「俺なんかあの姉ちゃんに殴られたところがまだ痛むぜ・・」
「しかし、第一試合も同じ様な手口で勝ってんだ、今度も同じさ・・」
天子はちらりと花梨の方を見た・・
「(なるほど・・道理で第一試合で動きが悪かったのは、こういう訳か・・ん?『般若』?
  ・・・まずい、第二試合の一試合目に姉さんと当たる相手だ!)」
その内、ごろつきの一人が天子の元に寄って来た・・
「次の試合・・俺も見たかったぜ、こいつの姉が何も出来ずに負ける様をよ・・」
その言葉を聴いて、天子はごろつきを睨み、叫んだ!
「おまえら・・いい加減にしろよ!」
「あっ、兄貴、こいつ起きてるぜ!」
「ほう・・ちょうどいい、前にこいつの姉にやられた分を、お前で返そうか・・」
「いいねぇ・・こいつは動けないし・・」
ごろつき達は手に木刀などを持ち天子に近付いた・・・
「やられるっ!」
天子はそう思った次の瞬間・・・
「ぐわっ!」
「がはっ!」
ごろつき達の後方で叫び声が上がる・・・その内一人の男がやってきた
「兄貴、大変だ!見張りが皆やられてる・・」
「何?お前ちょっと此処見てろ、俺が行ってくる!」
親分格の男が出口に行き、天子を見張るのは一人。
その時、外で声がした・・
「てめぇ、餓鬼の分際で! ・・・ぐうぅっ!」
声と共に聞こえた倒れる音、そして残るは天子の前の一人だけ・・
不意に天井の一部が破れ、眼帯をした男の子が顔を出した。
「煉!」
煉・・・天子の友人にして最大のライバル・・詳しくは『登場人物紹介』にて・・
「何やってんの天子?そんな所で・・・」
「煉こそどうやって此処に?」
「いや・・お前が縛られて連れてかれてるんで、面白そうだから付いてきた・・」
そう言って煉は天井から飛び降りた
「お前か?兄貴達をやったのは!」
煉が天井から降りた瞬間!残っていた一人が木刀で殴りかかるが
煉は天と話しながら木刀をするりと避け、一撃の下に木刀で切り倒した
「あ、そうだ・・お前の姉さん試合だったろ・・何か苦戦してたみたいだけど・・」
「苦戦?・・・姉さんが?」
「たぶん・・お前を人質に取った事を脅されてるんじゃないか?相手が相手だし・・」
「なら此処から出て姉さんにあわなきゃ・・」
「そうだな・・早く顔を見せてやれ」
「あっと・・そうだ煉! この子も姉さんのとこに連れて行ってあげてくれないか?」
「この子・・猫又?第一試合での・・」
「うん、僕と同じ様に人質に取られてたの・・早く帰してあげなきゃ」
「わかった・・まかせとけ・・」
煉は二人の縛られている縄を切ると、二人と共に試合場へ向かった。
別れ際、煉は天子にこういった・・・
「じゃ・・後で会おうな・・・」
「??」
天子にはその意味が分らなかった・・
そのまま試合場に向かった天子、会場を見ると・・・なんと綾が片膝を付いている
そして会場に響く般若の声
「これで終わりだっ! 鬼神流剣技 一閃技 『牙閃荒神』」
綾のピンチを知った天子は試合場より遠くだが、大声で叫んだ
「姉さーん!!」
その声が聞こえたのか、綾は振り向き、すかさず立ち上がり反撃に出た
天子は試合場近くに駆け寄り、さらに綾に声援を送った
「僕は大丈夫だから、負けずに頑張ってー!」
その声に勇気付けられた綾は覇気に満ちていた・・
ヒートアップする試合場、天子は試合場横で観戦していた
そのとき横のお兄さんが天子に話しかけてきた
「なあ、天ちゃん、綾さん大丈夫かな?」
「大丈夫、姉さんはあれくらいじゃ、負けないよ・・」
その時、綾に向かって一気に詰め寄る般若、一方綾は何か身構えている
「(あれは・・妖闘流体術『やろか水』・・・姉さん何か狙ってる)」
綾に向かって打ち下ろした木刀だが、綾はこれを捌き、音もなく般若の横を通りすぎただけだった。
「よかった・・・綾さん上手く避けたんだ・・」
「(違う・・・僕には見えた・・姉さんが通り過ぎる瞬間、般若の身体を切り刻む幾筋もの風が・・)」
突如、般若の身体に幾筋もの切傷が発生し、血が噴出した!
観客達も突如の事に驚きの声を上げる
「天ちゃん!今のは・・・」
「妖闘流体術『鎌鼬』・・・いけない・・姉さん本気だ・・・」
綾は尚も般若の胸倉を掴み、無理やり立たせようとしていた
そしておもむろに放り投げると鳩尾に一撃、肘撃ちを入れ、前のめりになった所に顎に裏拳を入れ吹き飛ばした!
「がっ・・・」
吹き飛ばされて結界に叩きつけられた所に綾が追い付き、般若の頭を持って試合場へ叩き付けた・・
「(妖闘流体術『朧車』と『つるべ落とし』・・・早く止めないとほんとに相手が死んじゃう)」
綾はさらに倒れている般若の首に飛び肘撃ちをしようとした時だった・・・
「(あれは・・『牛打ち坊』まずい、姉さん怒りで我を忘れている!)」
「姉さんやめて!」
この天子の一言に綾はハッとなり身を翻した。
そこには体中から血を流し倒れている般若の姿がある
どうやら死んではないが、かなりの重傷を負っている。さすが妖怪と言ったところか・・・
女天狗も般若の容態を確認した後、直ぐに担架で運ばせ、試合場で立っていた綾の手を挙げた
「勝者、綾!」
一時期呆然としていた観客も、この声に歓声を上げた
しかし、一番唖然としていたのは綾である。
自分自身があそこまで残酷になると言う恐怖と、その姿を天子が知ってしまったと言うことに・・・
「わ・・私は一体・・・」
呆然となっていた綾に、天子が駆け寄る
「仕方ないよ、姉さん・・僕も般若に人質に取られてたんだもの、僕が姉さんなら同じ気持ちだったな・・
 姉さん・・・ナイスファイト!」
「天子・・・」
その言葉に綾は安心したようだ。
「そうね・・此処で負けるわけには行かないもの・・さ、次は天の試合でしょ、頑張って!」
「うん!」
そう言って天子と綾は男の部の会場へ向かった。
さて第二回戦、第三試合目・・天子は木刀を選び試合場の階段の一歩目を踏み出した
その時・・前方より物凄く嫌な気配、かつてない恐怖が天子を襲った。
試合場に上がると、対戦相手はまだいない・・しかし、言い知れぬ恐怖が天子を襲う
突如、試合場の周りの堀から一筋の水柱が上がり、その者が試合場に下り立った・・
「☆○*?%#¥−!!」
天子の目の前に現れたのは・・・ゲコゲコ鳴いている、2メートルはあろうかと言う槍を持った大きな蝦蟇だった。
「%&=#!*<+−!!」
天子はその場から固まって動けない上に混乱している
そう・・天子は大きな蛙が大嫌いなのだ!
天子の心境では・・ぬめっとした皮膚、何考えているか分らない顔、異様な跳躍力、ぷくーっと膨らむ頬っぺた・・
どれをとっても天子には恐怖の対象になっていた。
そのとき上空から烏天狗が降りてきた。
「それでは、これより天子対大蝦蟇の試合を始める!両者構えて!」
大蝦蟇は槍を下方に向けて構えるが、天子は恐怖のあまり構えることが出来ない
「始め!」
試合の開始が響いた時だった、大蝦蟇は小さくジャンプして天子に襲い掛かった・・・
しかし、そのとき天子の恐怖はピークに達し、何かが切れた・・
天子は一瞬で大蝦蟇の横を通り抜けた・・
その次の瞬間、試合場に倒れているのは大蝦蟇の方だった。
あまりの一瞬の出来事に、観客も何が起きたか分らなかった・・
「早くそいつをどっかにやってー!」
天子はまだ混乱は続いている、烏天狗が大蝦蟇の状況確認すると・・泡を吹き失神していた。
担架にて大蝦蟇を運ばせると天子の片手を上げた
「勝者、天子!!」
天子は素早く礼をすると、早足で試合場を降りた・・・
天子は試合場を降りた後でも冷や汗が出ていた・・
「天、どうだった・・」
「姉さん、見てたでしょ相手・・な・・な・・なんて言うか・・あわわ・・」
天子の動揺は隠せない
「ま、結果的には勝ったんだから良しとしましょ!」
「うーん・・・」
天子は納得いかない様子だが・・
此処で、試合会場上で烏天狗が何か知らせた・・
では此処で第二試合の結果を見てみよう。

第一試合
×塗り壁vs鉄鼠○
硬い身体の塗り壁だったが鼠には勝てず
身体に鉄の歯で穴を開けられボロボロにされ
その場に崩れ落ちた・・
決め技『鉄歯連激』

第二試合
○幻鈴vs赤頭×
赤頭の怪力も当たらなければどうしようもない
幻影で惑わされ、疲れきった所を
術式の一撃を食らい、赤頭は撃沈した
決め技『羅刹風将』

第四試合
○大入道vs鎌鼬×
妖怪界最速を誇る鎌鼬、しかし
大入道の一撃を食らっただけで急激に動きが悪くなった
そこに更に大入道の一撃が入り
外の堀に落とされる・・あの鎌鼬が何故・・
決め技『????』

第五試合
×水虎vs覚り○
水虎の攻撃も覚りに全てを読まれまったく当たらず
逆に隙を付かれ、鋭い爪にて甲羅を割られ
水虎は負け認めを宣言した
決め技『鋼砕爪』

ちなみに水那は出場枠の人数により、そのまま第三試合に上がることになった。
男子の部の次の試合は昼からである・・
天子は男子の部の試合を見届けると、敗者復活戦の行われる女子の試合場へと向かった・・
女子の部の試合では敗者復活戦のバトルロワイヤルが行われていた
天子は綾の横に座ると試合を眺めた
「姉さん・・・美羅さんって勝てるのかな・・」
「ふふっ・・かつては私と同じ位の強さを彼女は持っていたのよ」
「えっ美羅さんが・・・」
「あれは5年前かな・・・私の元に一通の手紙が届いた事から始まったの」
「その手紙って・・」
「そ・・・挑戦状! 私の人気に嫉妬してどうやら挑んできたらしいんだけど・・まさか武器持ちで来るとはね・・・」
「武器持ち!?」
「一般の妖怪かと思っていたんだけど、ところがどうして、彼女は蛇真二天流の使い手だったのよ・・・」
「姉さんだって妖闘流闘術の使い手じゃない・・で、その勝負はどうなったの?」
「ほぼ互角・・といった所かな・・私もその時はまだ修行中だったしね、でも最期の一撃が決まらなければ、私が負けてたかも」
「それから姉さんと美羅さんは仲良くなったの?」
「うん、それから同じ小料理屋で働くようになってね・・・ライバルじゃない・・・親友かな?」
「ふーん・・でも美羅さん一回戦で負けちゃったね・・」
「美羅の事だから練習をサボってたのじゃないのかな・・??」
その時、バトルロワイヤルの戦火の中、天狐に向かって美羅が飛び出した!!
「美羅!」
「美羅さん!」
観客席の天子と綾はそろって声を上げた
しかし、上空にいる天狐には少し届かない
「あれじゃ距離が・・」
「ふっ・・美羅はこの程度の距離は計算ずめよ・・」
その時、美羅の二本の蛇髪が伸び、天狐の脚に食いつき試合場に叩き降ろした
途轍もない強い力で地面に叩きつけられた天狐
そこへ上空から下りてきた美羅の木刀の一撃が天狐の腹部に突き下ろされた!!
「ガ・・・・」
その一撃にて天狐はノックアウトされた 
「やったっ!一人撃破!」
「いや・・・まだ・・天、この試合はバトルロワイヤル・・・自分以外は全て敵よ!!」
そのとき美羅の背後から棒での一撃が襲ってきた、美羅はそれを振り向きざまにかわすと構えをとった。
相手は橋姫・・多彩な武器術を得意図する相手である
「あれは・・・佐織か・・まずいわね・・」
「佐織?」
「ええ・・・多彩な武器術と、やたら嫉妬深いことから『武装の佐織』と町民からの噂の人なのよ・・
過去に嫉妬に狂いを徹底的に武器で相手を打ちのめしたとも言われている程の兵のね・・」
「へえ・・姉さんはその人と戦ったことはあるの?」
「一度だけね・・・多彩な武器術というより暗器(隠し武器)術の使い手といったほうがいいのかな・・・
 その時は、難なく勝ったけど、今回はどうかしら・・かなり前と動きが違うみたいだけど・・」
試合を観戦する二人。一人、また一人と脱落していく壮絶な戦いになっている
残ったのは美羅、冷美、佐織の三人・・
「残り三人か・・此処からだね・・」
「ええ・・でも佐織は石妖の一撃を食らってフラフラのはずよ・・このままいくと・・」
その時、雪女の氷球が橋姫にヒットし、橋姫は倒れた・・
「これで・・・決まった?」
天子と綾が固唾を呑む・・
「それまでっ!!」
会場に女天狗の声が響く、トーナメントに残ったのは・・二口女の美羅と雪女の冷見である
美羅は突然の声に唖然とする・・
「まさか・・・勝ったの?」
試合終了の声と共に天子と綾が試合場に駆け上がる
「やったじゃない、美羅」
「おめでとうございます!!」
正気に返った美羅は強気に出た・・
「と・・当然よあれしきの相手で私に勝てると思って? とりあえずこれで貴方との決着が付けれますわ!!」
「籤で当たればね・・」
そう言うと天子と綾は試合場を降りた。
そして試合は一時中断昼食の時間となった
各々の持って来たお弁当を開放された中庭で食べている
桜舞散る中庭の広場は人がいっぱいだった
もちろん、彩と天子も中庭にいた・・・
「さ、天、私たちもお昼にしましょうか」
「うん」
広場の一角にてお昼を取る天子と彩
「この日の為に、姉さん腕によりをかけてお弁当を作ったわ、さ、食べて!」
豪華重箱三段のお弁当が其処にはあった
「すごーい、これ姉さん一人で?」
「んっ?そうよ、さ、遠慮せずに食べて食べて?」
さすが小料理屋で働いているだけあって料理の腕は一流である
「はい、天子・・あーん・・」
料理をつまんで天子に差し出す彩
「(うーん・・・なんだか恥ずかしいな・・)」
そう思いながらも口をあける天子・・・その時、天子の背後に強烈な視線が感じられ振り向いた
其処には幾人の男性が同じ様に口をあけている・・さながら燕の雛のように・・旗から見ると異様な光景である
「(あれは姉さんの親衛隊を作った人たちだ・・なんだかなぁ・・??)」
そう思いながら天子は差し出されたお弁当を食べる・・視線がすごく気になるお昼時が過ぎていく・・



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