幻想妖魔旅館


綾編

  

開会が終わると綾は天子の試合を見に行った。綾の試合は二試合目、試合にはまだ時間がある。
姉として第一試合にある弟の試合には興味が有った。と言うかこの大舞台である。天が上がらない訳がない
案の定、試合場で天はガチガチに固まっていた。
綾は腕組みをしてその様子を静かに窺った。天使も会場に綾が観戦しているのに気付き
刀を構えたのを見た時、綾は静かに微笑み、自分の試合場へと戻った。
「さてと・・あたしの試合は・・と、何だ、まだ一試合目なんだ・・・と・・あれ?」
女の部、第一試合目は二口女vs妖怪万年竹。苦戦を強いられているのは・・なんと二口女の方である。
その苦戦を強いられている様子にたまらず綾は声をかけた。
「ちょっと美羅、何やってんの!あんたらしくないわよ!」
美羅と言うのはこの二口女の名前である、年の頃は19歳、綾と同じく小料理屋『神月』で働く、綾とは良き友人である
美人は美人なのだが、負けん気が強く、大食いなのである。しかし、いつも後ろの口で、飯を釜3杯程度平らげるにしては
スレンダーな身体をしている、是には綾も不思議と思っているくらいだ。
又、綾には及ばないものの、二本の蛇髪と長剣を駆使しての戦い方は評判なのだ。
そして数少ない綾の第二の人格を知っているものでもある。
「うっさいわね、綾!あたしだってこんな奴に・・苦戦を強いられるなんて・・」
美羅の対戦相手は、まだ年の頃は6,7歳の着物を着た少女だった
その少女はいきなり空中から竹を数本出現させると、美羅に向かって打ち出した。
「!?」
美羅は高速で飛んでくる竹を弾く事で精一杯だった。
「ウフフ・・まだまだ・・」
少女はそう言うと今度は片腕を上げた。
「く・・何が・・何が起こるの?・・はっ!」
急に美羅の足元から幾本もの竹が地面を破り突き出てきた!美羅は是を後方に飛び退いて避けた。
「こ、こいつ・・強いわ・・・でも!!」
一瞬の隙を付いて美羅は反撃に出た、竹の間を縫い速攻で相手に詰め寄り、木刀を振り下ろす!
「はあああっ!」
・・・・がその渾身の一撃は少女に当たる事はなかった。少女の前には並んだ竹が少女を守るように生えている。
美羅の木刀は竹の硬さに阻まれ、弾き返された。
「くっ・・・」
「それで終わり?・・・じゃあ今度こっちが行くね!」
少女は両腕を頭の上で交差させ、そのまま振り下ろした。美羅は弾き返されたダメージが残って動けない!
突如、美羅の頭上から竹製の檻が振ってきた、美羅は檻の中に閉じ込められた!
「何これ?、く・・こんな檻・・・!!」
渾身の力で脱出を試みるが、檻は弾力が有り、弾き返されるだけである。
「あはははっ、無駄無駄!・・・じゃあそろそろ終わりにしましょ!」
そう言うと少女は片腕を上げ、勢いよく振り下ろした!
その瞬間、美羅の閉じ込められている檻の外側に何百本もの竹が姿を現し
檻の隙間からマシンガンの如く、美羅に降り注ぐ!
「きゃあああーっ!」
何百本もの竹を身体中に受け、美羅は叫び声を上げ、その場に倒れた・・
美羅が倒れると、竹の檻はすぐに消えうせた。状況を確認しに女天狗が飛び寄り
そして高々と少女の片手を上げた。
「勝者!万年竹!」
観客からは歓声とどよめきの声が混じっている。子供ながらにあの戦いぶり、相当の兵だろう
試合が終わり、結界が一時解かれた時、試合場に居た少女は綾を見付けるとにっこりと微笑んだ。
「・・・?」
何事かと綾も思っていた瞬間、その少女は突如、空中に竹を出現させ、綾に投げつけた!
綾は自分の喉元近くで竹を受け止めて、少女の方を睨んだ、一歩間違えれば観客にも当たっていたかもしれない。
少女は綾を見てにやりと笑うとその場からふっと消えた・・・
「面白いじゃない・・・あたしへの挑戦状ってわけね・・お尻引っ叩く位じゃ済ませないから・・」
一方美羅の方は竹を全身に受け、担架で運ばれていた。そこへ綾が駆けつけてきた。
「へへっ負けちゃった・・無様だよね・・こんな格好・・」
「いいから寝てて、まだ動ける状態じゃないんだから、安心して、美羅の仇はきっとあたしが取ってあげるから、安心して成仏して・・」
「ちょーっと待て!あたしはまだ死んでなーい! 綾、見てなさいよ、傷が治ったら貴方もきっと倒して・・・」
「あーっもう!五月蝿い!」
怪我している割には元気な様子なので綾は、担架で運ばれている最中の美羅の鳩尾に拳を一撃!!
「!!!・・・・」
美羅は綾の一撃にて気絶したまま運ばれていった
「やれやれ、やっと五月蝿いのがいなくなったか。さてと・・次はあたしの試合だっけ・・」
あやは試合場へゆっくりと上がっていった、すでに試合場には一人の女性が・・そしてその女性は薄笑いでこういった
「あら、ようやくいらしたの? 貴方の弟さん「天子」って言いましたっけ、先程の試合見てましたわ・・・
 あの程度の戦い方では、貴方の実力もたかが知れてますわね・・・あら、怒りました? これは失礼・・」
綾は弟の事を馬鹿にされて怒り、針女子の胸座に掴み掛った
しかし、さすが針女子、掴み掛られてもしっかりと綾の喉元に鈎針を構えていた(幻想妖魔旅館美術室『綾 VS 針女子』参照)
「あんた、天の事を馬鹿にしたわね・・容赦しないから、覚悟してなさい」
「ふ・・面白いじゃない・・・あなたもせいぜい覚悟しとく事ね・・」
試合前というのにすでにヒートアップ状態
女天狗が二人をを引き離し、ようやく試合開始の合図となる・・
「構えて」
一瞬の静寂が辺りを包む・・・・
「始め!」
先手に出たのは針女子のほうだった
流れる様な薙刀のコンビネーション、普通の妖怪ならまず避けられないであろう
攻撃をを紙一重で綾は避けていた。
「ほらほら、そんなに振り回しても当てられなければ意味が無いわよ!」
「ぬうぅ・・・ちょこまかと・・これならっ!」
綾は余裕の表情で避けていた・・・が薙刀の一撃が綾の腹部に当たった!
「決まった!」
綾はそのまま前方に倒れこむ・・・が、不意に煙の様になり消えうせた・・
「け・・煙?確かに当ったと思ったのに・・・はっ!綾は?」
「此処よ、此処」
不意に後ろから声がした、いつの間にか背後を取られている
「!!何時の間に・・・」
「貴方が私の幻影と遊んでいたときかしら・・『妖闘流闘技 煙羅煙羅』・・所詮貴方はその程度なのよ・・」
「く・・・なめるなぁー!」
針女子は振り向きざまに薙刀での一撃を見舞おうとするが、意図も容易く綾に受け止められた。
「貴方・・さっき天を馬鹿にしたわね・・本気で行くから覚悟なさい!」
針女子は薙刀を振りほどくと間をおいて構えた
「う・・うるさいわぁーっ!『針覇流闘技 乱針殺』!いっけぇーっ!」
針女子の髪が四方八方、行く筋もの鈎針が一斉に綾に向かって襲ってきた!
「遅い!」
綾は鈎針を避け、針女子の懐に入り込んだ!
「!!!」
「もらった!脛擦りっ!」
「網切!」
「首齧り!」
「さがり!」
「のび上がり!」
右足下段蹴りから、後ろ左踵中段回し蹴り、右上段回し蹴り
そのまま右足での踵落しからの顎への右蹴り上げ!コンビネーションの蹴り技!
「グッ・・・アッ・・・!!!」
意識薄れた針女子は上空高く蹴り上げられ、落ちてくる!
「決まりっ!『妖闘流闘技 夜行蹴葬』!」
落ちてくる針女子に合わせ、中空で横腹に蹴りを入れ吹っ飛ばした!
激しい音と共に針女子は結界に叩き付けられ堀へと落ちた・・・
「天を馬鹿にして・・・この程度で済んだことをありがたく思うのね・・」
その様子を見た女天狗は綾の腕を高々と上げた
「勝者 山姫!」
その声が響いたとき、観客から大歓声が上がった!
その歓声に押されるように試合場を降りた・・・その瞬間、町の人気者である『彩』の姿に変わった
「えーーーっ!!」
観客達から驚きの声が上がった、覇気の為顔つきがりりしくなっていた『綾』から
のほほんとした顔つきの『彩』に変わったのだ・・
「姉さーん」
彩の元に天子が走ってきた
「あら、天子のほうも終わったの、どうだった?」
天子は彩に向かってDサインを示した
「て、天ちゃん・・その人、彩さんだよな・・」
試合を見ていた一人が天子に聞いてきた。
「うん、姉さんだよ小料理屋『神月』で働いてる・・ね、姉さん!」
「ええ・・今試合をしていたのは私ですわ、皆さんにはあまり、変わった姿をお見せしたくはなかったのですが・・」
彩のファン達には衝撃が走っただろう、まさかあの『彩』が試合場で人格が変わり
兵と呼ばれている『針女子』を目の前で倒してしまっただから・・
「(うーん、これで姉さんのファンも減るかな・・)」
そう思った天子だが・・・意外な反応が起こった!
「おおーっ!変わった彩さんもかっこいいー!」
「惚れ直したー!」
「よーし、これから彩さんのファンになるぞーっ!」
以外や以外、逆にファンの方を増やしてしまった!
「まあ、みなさん・・・」
彩の方はなんとなく嬉しそうだ。
「災い転じて福と成す・・か、まあ姉さんがいいならいいんじゃないかな?」
「うーん・・」
彩は嬉しさの反面、『これからどうなるのかな?』と言う気持ちで一杯だったそうだ。
それではここで他の試合結果を見てみよう

第三試合
×石妖vs天狐○
岩をも砕く必殺の一撃を持つ石妖だったが、天狐の妖術で
近付く事も間々ならず、会えなく燃やされ一本負け
決め技 火炎妖術『天火連焼』

第四試合
×口裂け女vs氷柱女○
スピードで勝負する口裂け女だったが開始早々
足元を氷で固められ動きを封じられた
そして氷柱による連撃コンビネーションで口裂け女を打ち負かした
決め技 『氷葬牙撃』

第五試合
○力持ち幽霊vs女郎蜘蛛×
鋼鉄の糸を使い動きを封じしとめようとする女郎蜘蛛だったが
頑丈な糸を怪力でぶち切り、女郎蜘蛛に詰め寄り
破壊力抜群の鉄拳の一撃を見舞い撃破する
決め技 『神覇鉄拳』

第六試合
○清姫vs濡れ女×
ちょっと気味の悪いぬるぬる勝負になったが(両者蛇体)
清姫の火炎攻撃にて濡れ女の身体の水分を蒸発させて
濡れ女はあえなく負け認め(ギブアップ)を宣言した
決め技 『口からの火炎放射』

第七試合
○雪女vs橋姫×
嫉妬の妖かしも氷結の化身にはかなわず
幾つもの武器を巧みに操る橋姫だったが
雪女はこれを冷静に捌き、一瞬の隙を付いて
橋姫を氷塊に変え勝負を決した
決め技 『氷結風葬』

第八試合
×猫又vs般若○
幻術を操り敵をしとめる猫又が優勢かと思われたが
なぜか動きが鈍い、何かに脅えている様だった
そこに般若の猛攻撃を食らい、あえなく一本負けとなった・・
決め技 『鬼牙剣撃』

第九試合
○栞vs肉吸い×
触れれば確実に肉吸いの勝ちだったが
さすがヤタ烏三姉妹智担当
炎の結界で動けなくした所に雷の連撃
巧みな術と戦略で一歩も動かず完全勝利を収めた
決め技 『火炎妖術 焔結界』『雷妖術 雷神崩羅』

第十試合
○棗vs山女×
力技で棍棒を振り回す山女だったが
棗のスピードについて来れず、へたばった所を
後ろからの一撃にて気絶させられ敗退する
ヤタ烏三姉妹 武担当の棗だが
まだまだ本気は見せていない様子だった
決め技 『背後からの一撃』

とまあ、こんな感じでそれぞれの第一試合はこんな感じで過ぎていった
さて第二回戦、彩は第一試合目ということで試合場に向かった。
「あら?天子は・・」
試合場に上りながら辺りを見渡した・・試合場の真横の席にいるはずだが・・
しかし、第一試合を見てか試合場の所々に『綾命』・『綾親衛隊』なる者が現れている。
「綾さーん」
「がんばれー!」
「あ・や・さーん!」
何時の間にできたのか、ファンと言うのは恐ろしい・・
「・・・・・・・・」
彩はさすがに困惑の表情を隠せず、ファンに向かってお辞儀をするしかなかった・・・
「えっと・・」
試合場のほうを振り向くと般若の面・・いや般若その者が小刀風の木刀を持って立っていた。
「よしっ!」
彩は気合一声、覇気と共に雰囲気を綾に変えた!
そして試合場中央へ近付こうとした時だった、不意に般若がこう言い出した
「まちな・・あんたの弟、天子と言ったっけ・・あんたの弟は預かってる・・」
不意の言動に相手が何を言ってるのか、綾はわからなかった。
「え、天子が?・・何を証拠に・・」
「之を見てもかい?」
般若は綾の足元に何かばら撒いた
綾の足元に金色の髪の毛が散らばる・・綾は拾って確かめてみた。
「この髪の毛は・・・・天子!」
金色の髪の毛をしている者は、この国には天子以外にはいないはず・・・
綾は怒りの表情で般若を睨み付けた!
「おお・・怖い怖い・・この試合、私に手を出したりしたら、弟の命は無いと思いな・・」
「く・・・この外道が!あんたは絶対許さない!」
「ヒッ、ヒッ、ヒッ・・いくらでもほざくんだね!弟が死んでも良いなら攻撃しな?出来るならねぇ・・」
般若は不敵な笑いで答えた。
「(天子・・・)」
その時、上空から女天狗が舞い降りた
「これより、第二回戦、第一試合、山姫 対 般若の試合を始める、両者構えて!」
「始め!」
試合が始まった瞬間、般若は猛然と攻撃に出た!
一方、綾は攻撃することが出来ず、避けるか捌くかだけだったが・・
「ほらほらどうした! 一回戦での勢いはどこへいったんだい?」
激しさを増す般若の猛攻、少しだけだが綾にも当たり始めた。
「く・・・」
片膝を付く綾・・それを見下ろす般若、観客からもどよめきの声が聞こえる。
「ヒッヒッヒ・・・どうだい・・手も足も出せず負けていく気分は」
「あんた・・天子が戻ったら絶対許さないから・・」
「負け犬がいくら吠えても無駄だよ! ・・じゃ、そろそろ終わりにしようかね・・」
般若は構えた小刀に妖気を集中させだした・・
「これで終わりだっ! 鬼神流剣技 一閃技 『牙閃荒神』」
正に技が発動する瞬間だった!
「姉さーん!!」
遠くで聞き覚えのある声が聞こえた、綾が振り返ってみると・・・
天子が手を振っている、どうやら無事だったようだ。
「僕は大丈夫だから、負けずに頑張ってー!」
綾はその様子を見てフフッと笑うと、鋭い眼光を般若に向けた!
綾は身を翻すと、迫り来る般若の一閃を紙一重でかわし、般若の後頭部に肘撃ちを一撃!
般若は肘撃ちを食らい試合場に叩きつけられた!
「く゜・・・貴様! 弟がどうなっても・・」
その言葉を聴いた綾は自分の後方を指差した・・
「天子がどうしたって・・・?」
綾の後ろでは天子がにっこり笑っていた。
「ま・・・まさか・・・」
「さてと・・・ここからどうしようかねぇ・・・」
「ま・・・まて・・・分った・・・私の負け・・負けって事で・・」
自分の立場が変わると手の平を返した様に弱い立場に転じた般若だが・・・
「天子を人質に取り、なおかつそれを利用し、卑劣な手をしてきた貴様は・・・」
「ぬぅぅ・・・」
「問・答・無用!!」
「くそぉ・・・あの馬鹿者どもめ、失敗しおったな・・まあよい・・貴様には此処で死んでもらう!」
「たいした自信じゃない、いらっしゃい あんたには地獄を見せてあげる!」
試合場はさらにヒートアップする、観客達も固唾を呑んで観戦していた。
「むぅぅー・・死ねぇー!!」
猪突猛進、小刀を振りかざした般若は一気に綾に詰め寄った
一方綾の方は片腕を前に突き出し構えている。
「もらった!きぇぇぇぇっー!!」
綾に向かって打ち下ろした木刀だが、綾はこれを捌き、音もなく般若の横を通りすぎただけだった。
「おや?どうした、攻撃しなよ!それとも怖気ずいたかい?」
やたら勝気な般若たが・・・
「愚かなのは貴方の方よ・・見えたかしら?『戦刃の風』が・・・」
「なに?」
驚きの表情の般若の身体に突如幾筋もの切傷が発生し、血が噴出した!
「ぐあぁぁぁー!!」
身体中の切り傷から血が噴出し、般若は片膝をついた。
「な・・・なに・・・が・・・」
「妖闘流体術『やろか水』と『鎌鼬』・・目に見えぬ風が貴方の身体を切り刻んだ・・さ、立ちなさい」
綾は般若の胸倉を掴み、無理やり引き起こした。
そしておもむろに放り投げると鳩尾に一撃、肘撃ちを入れ、前のめりになった所に顎に裏拳を入れ吹き飛ばした!
「がっ・・・」
吹き飛ばされて結界に叩きつけられた所に綾が追い付き、般若の頭を持って試合場へ叩き付けた・・
これには観客達も唖然とする一方、本気の綾が此処まで怖いとは誰も思っていなかった・・・
綾はさらに倒れている般若の首に飛び肘撃ちをしようとした時だった・・・
「姉さんやめて!」
この天子の一言に綾はハッとなり身を翻した。
そこには体中から血を流し倒れている般若の姿がある
どうやら死んではないが、かなりの重傷を負っている。さすが妖怪と言ったところか・・・
女天狗も般若の容態を確認した後、直ぐに担架で運ばせ、試合場で立っていた綾の手を挙げた
「勝者、山姫!」
一時期呆然としていた観客も、この声に歓声を上げた
しかし、一番唖然としていたのは綾である。
自分自身があそこまで残酷になると言う恐怖と、その姿を天子が知ってしまったと言うことに・・・
「わ・・私は一体・・・」
呆然となっていた綾に、天子が駆け寄る
「仕方ないよ、姉さん・・僕も般若に人質に取られてたんだもの、僕が姉さんなら同じ気持ちだったな・・
 姉さん・・・ナイスファイト!」
「天子・・・」
その言葉に綾は安心したようだ。
「そうね・・此処で負けるわけには行かないもの・・さ、次は天の試合でしょ、頑張って!」
「うん!」
そう言って天子と綾は男の部の会場へ向かった。
綾は試合場の観客席より天子の試合を見る・・・とその前に対戦相手が気になり
少しその場を離れた・・そして見たものは・・・
そして綾は自分の場所に戻ると、大きなため息をついた
その時、第一試合で敗北を喫した美羅が綾の元に駆けつけた。
「どしたの綾?大きなため息をついて・・」
「ん?ああ・・美羅・・怪我はもう良いの?」
「怪我?貴方に最後に放たれた一撃に比べればあの程度の傷・・
 それより次、天ちゃんの試合でしょ?何を心配して・・・」
「美羅・・天子の次の相手知ってる?」
「えっと・・確か大蝦蟇だったわよね・・そっか相手は飛蛙流槍技の達人だもの・・天ちゃんでも・・」
綾は再びため息を付いた。
「違うわよ・・私が心配しているのは大蝦蟇のほう!天子は実は大きな蛙は大の苦手なのよ・・」
「え・・と言う事は・・」
「ま・・試合を見て見ましょ・・おそらくは勝負は一瞬・・・」
綾と美羅は天子の試合を観戦した
天子はその場から固まって動けない上に混乱している
「ねえ・・天ちゃん動きがおかしくない?」
「だからさっきも言ったでしょ、天子は大の蛙嫌いって・・動けないのも当たり前よ・・」
そのとき上空から烏天狗が降りてきた。
「それでは、これより天子対大蝦蟇の試合を始める!両者構えて!」
大蝦蟇は槍を下方に向けて構えるが、天子は恐怖のあまり構えることが出来ない
「始め!」
試合の開始が響いた時だった、大蝦蟇は小さくジャンプして天子に襲い掛かった・・・
しかし、そのとき天子の恐怖はピークに達し、何かが切れた・・
天子は一瞬で大蝦蟇の横を通り抜けた・・
その次の瞬間、試合場に倒れているのは大蝦蟇の方だった。
あまりの一瞬の出来事に、観客も何が起きたか分らなかった・・
「綾・・今いったい天ちゃん何したの?早すぎて分らなかったけど・・」
「でしょうね・・あれは妖闘流剣術奥義『五法星瞬殺斬』
 早い話が、目に見えぬ速さで、一筆書きの星状に切り込んだの、真剣なら五体バラバラね・・」
天子はまだ混乱は続いている、烏天狗が大蝦蟇の状況確認すると・・泡を吹き失神していた。
担架にて大蝦蟇を運ばせると天子の片手を上げた
「勝者、天子!!」
勝ちを見た綾は試合場を後にし、天子の元に向かった
天子は試合場を降りた後でも冷や汗が出ていた・・
「天、どうだった・・」
「姉さん、見てたでしょ相手・・な・・な・・なんて言うか・・あわわ・・」
天子の動揺は隠せない
「ま、結果的には勝ったんだから良しとしましょ!」
「うーん・・・」
天子は納得いかない様子だが・・
では此処で第二試合の結果を見てみよう。

第二試合
×氷柱女 vs 棗○
氷柱女のコンビネーションも棗には通じず
逆に炎を纏った武器にて攻撃され
元の姿(氷柱)に戻されてしまった・・
決め技『炎連葬羽』

第三試合
×天狐 vs 栞○
両者とも術式タイプ
激しい術合戦が行われたが、格が違う
相手の防御結界を打ち破る上級術にて
天狐をノックアウトする
決め技『氷狼召喚』

第四試合
×雪女vs 妖怪万年竹○
氷の女豹の凍てつく冷気もまったく利いた様子がない
逆に足元や中空からの竹槍連射にて
身体を削られ、身動きが取れなくされ
雪女は負け認めを宣言する
決め技『落鎖竹殺』

第五試合
×清姫 vs 力持ち幽霊○
此処まで勝ちあがった清姫だったが・・
接近戦に持ち込まれては部が悪かった・・
炎を吐くまもなく拳檄にて撃ちのめされ
清姫をノックアウトする
決め技『天牙鋼拳』

ここでなんと、敗れたものでの敗者復活戦があるようだ
次に上がれるのは2名!それもバトルロワイヤル方式で行われるようだ・・
試合に参加を表明したのは・・・
二口女、山女、雪女、清姫、肉吸い、石妖、天狐、橋姫、口裂け女、女郎蜘蛛の10名
バトルロワイヤルとなると・・大乱闘檄になりそうである。
綾も美羅の応援として駆けつけていた。
「美羅ーっ!今度は頑張りなさいよーっ!」
「当然よっ!此処で勝ち上がってあんたと決着付けるんだから!」
美羅は意気揚々と木刀を手に取り試合場へ上がっていった
そこに天子も綾の元に駆けつけた
「姉さん、試合は?」
「ん?今からよ・・さーて・・この試合面白くなりそうよ・・・」
試合場には互いが互いをにらみ合う形で開始を待ち構えていた。
そこに、女天狗が試合場中央へ舞い降りて試合開始の合図となる
「それでは、これより敗者復活戦を執り行う、全員構えて!」
10名其々は妖気を放ちながら構えた・・・
「始め!」
その合図と共に女天狗は上空へ舞い上がった(危ないので)
そして最初に攻撃を放ったのは山女だった
「グ・・ガアアァ!キョウザンリュウトウギ『チテンリュウダン』!!」
棍棒で力強く試合場を叩くと、砕けて舞い上がった破片を今度は水平に打ち出した!
その攻撃に皆ジャンプして避けるが、ただ一人清姫だけはその攻撃をまともに受けた
「貴様ー!」
その攻撃に激怒した清姫は、山女に接近してその長い胴体で締め上げた
「グ・・・グア・・・」
「カカカ・・・苦しいかい?ならばそのまま焼け死にな!!」
締め上げられ苦しそうな山女に止めを刺そうと清姫は大きく口を開けた・・・・が
その時である、急に山女と清姫はミイラの様になり、その場に崩れ落ちた
「ば・・馬鹿な・・一体誰が・・」
萎れていく身体を感じながらも見た姿はなんと肉吸いだった!!
二人が争っていた瞬間、接近し身体に触れたのである・・
「馬鹿な人たち・・私の接近に気が付かないなんて・・」         清姫・山女脱落 残り8名
一方、上空からは天狐の妖術により、皆悪戦苦闘していた
「ホホホ・・どうした愚民ども、手も脚も出ぬか?」
上空で高笑う天狐、このままでは全員やられかねない。
その時、美羅が、試合場の爆煙の中から飛び出してきた。
「美羅!」
「美羅さん!」
観客席の天子と綾はそろって声を上げた
しかし、上空にいる天狐には少し届かない
「愚かな・・・堕ちよ!」
美羅に向かって術符を構える天狐・・・しかし
「甘いわね!でもっ・・これならどう?」
「な・・何?」
その時、美羅の二本の蛇髪が伸び、天狐の脚に食いつき試合場に叩き降ろした
途轍もない強い力で地面に叩きつけられた天狐
そこへ上空から下りてきた美羅の木刀の一撃が天狐の腹部に突き下ろされた!!
「ガ・・・・」
その一撃にて天狐は気絶しノックアウトされた                  天狐脱落  残り7名
そのとき美羅の背後から棒での一撃が襲ってきた、美羅はそれを振り向きざまにかわすと
構えをとった、相手は橋姫・・多彩な武器術を得意とする厄介な相手である
「ち・・また厄介な相手が・・・」
橋姫は棒を構えると、一気に間合いを詰めた、横一線の払い攻撃
美羅はそれをジャンプでかわした・・が突如棒は三つに折れ、三節坤の形になる
すかさず上空への追撃が行われる、美羅は木刀で受けるのが精一杯だ
そして美羅は着地すると試合場で睨み合う形となった
「ククク・・・やるじゃない・・・」
「さすが『武装の佐織』と言われるだけあるわね・・」
橋姫の佐織・・・多彩な武器術と、やたら嫉妬深いことから『武装の佐織』と町民からの噂の人
美人なのは美人なのだが、過去に嫉妬に狂いを徹底的に武器で相手を打ちのめしたとも言われている
「さーて・・美羅・・貴方には悪いけどこの試合、勝たせていただくわ!」
「それはこっちの台詞!!」
橋姫は懐から串を取り出し、美羅に投げつけた
「串?どっからこんな物を・・」
美羅は飛んでくる串を木刀で弾き落とした・・・突如佐織は急接近し、三節坤を横一線に振った!
「ちいっ!」
美羅はジャンプでかわした・・が・・その後ろで石妖と戦っていた口裂け女が美羅に目標を変え襲ってきた
「うそっ?口裂け女まで?」
しかし・・・口裂け女は佐織の振った三節坤に気付かず、物の見事腹部にヒット!
哀れ口裂け女は結界に叩きつけられ堀へと落ちた・・・・              口裂け女脱落   残り6名
清姫と山女を倒した肉吸いは次に石妖に狙いを定め一気に距離を詰める!!
「もらった・・・また一人!!」
一気に詰め寄り石妖に触れた肉吸い・・・だが!!
「ば・・・馬鹿な・・・」
触れても何も起こらない石妖を見て唖然とする肉吸い・・・その途端、石妖はニヤリと笑う
「甘いわね・・私の身体の殆どは石の成分・・取れる肉何てありゃしないのよっ!!」
石の手甲と化した利き手で肉吸いの腹部を殴る!!
「グ・・・・」
その一撃は試合場に罅割れを起こすほどの手撃を持つ石妖
腹部にまともに食らった肉吸いはその場に膝から崩れ落ちた・・   肉吸い脱落     残り5名
一方女郎蜘蛛の詩穂(しほ)は雪女の冷美(れいみ)を糸で捕らえていた・・・
「ホホホホホッ!! いくら貴方でもこの糸に捕まればもはや逃げることも不可能! 大人しく蜘蛛の毒にやられなさい!!」
冷美を縛っている糸を伝って、蜘蛛が這う・・・一方縛られている冷美は冷静である
「・・・貴方は・・・私を倒せない・・・」
「何を寝言を!?この鋼鉄の糸を貴方に外せるとでも??」
突然の言動に惑う詩穂の足元が急に凍りつく・・・
「ぐ・・・これは・・」
足元だけではない・・糸を伝って這っていた蜘蛛も、鋼鉄の糸も白く凍りついていく!!
「ば・・馬鹿な!?こんな事・・・ありえない!!」
すでに肩付近まで凍りつく詩穂、冷美は糸の束縛を砕くと、凍りつく詩穂を見つめる・・・
「貴方の熱き心も何もかも、私の霧氷は全てを凍らす・・・・氷の棺で・・・眠りなさい・・」
詩穂は全身氷で包まれ、氷の彫刻の様に固まった・・戦闘続行不能である・・ 女郎蜘蛛脱落   残り4名
次に冷美は美羅に狙いをつけ、ゆっくりと近づき、冷気を吹き付ける
佐織との戦闘中、突然の冷気に飛びのく両者、そこへ佐織を狙い石妖が狙いをつける
石妖対橋姫、二口女対雪女・・・再び2対2の戦いとなる敗者復活戦・・・勝ち残れるのは2名のみ、いよいよ大詰めである
石妖の攻撃に防戦一方の佐織・・・
「く・・・この・・・」
武器にて攻撃を防ぐも、次第に木製の武器に皹が入りだす・・・
「どうした、どうしたこの程度か?」
防戦一方では負けてしまうと見た沙織は皹の入った武器を見る・・・
「武器・・・石・・そうかっ!!」
突如、攻撃へと反転した佐織は石妖に果敢に攻撃を仕掛ける・・・が・・
全ての攻撃が石の身体の石妖に弾かれる
「なんだい・・この攻撃は?なめるんじゃないよ!!」
佐織の攻撃に業を煮やした石妖は、沙織の武器を掴むと石の鉄拳にて殴り飛ばした!!
「痛っ・・・」
殴られた瞬間、佐織は受身を取り、堀落ちだけは免れたが、ダメージが多い・・そして佐織にゆっくり近づく石妖
「そろそろ終わりにしようかしら・・・」
佐織を狙い次々と鉄拳を振るい続ける・・・
攻撃を転がり避けながら尚も佐織は攻撃を続けた
「ちっ・・・ちょこまかと・・・ならばこれで!!」
振り上げた拳を高々と上げた石妖・・が・・その時・・突如石妖の右手に皹が入り砕け落ちる
「な・・・なに?」
沙織はゆっくりと立ち上がると石妖を睨みつける・・・
「ふっ・・気付いていなかった様ね・・私の攻撃が一点を狙っていた事を・・」
右手を押さえ蹲る石妖・・・
「く・・・くうぅぅ・・・まだ・・・まだだっ!!」
残った左手を振りかざし襲い掛かろうとする石妖、しかし・・
「ぐあぁぁぁーーっ!!」
立ちあがった瞬間、石妖の身体全体に皹が入りだす・・
その様子を見て佐織は愛用の三節坤を構える・・・
「・・・終わりね・・・砕けろ!!」
身体に皹が入り苦しむ石妖・・・そこに三節坤の強烈な一突きが入る!!
そして、崩れ落ちる身体の石妖・・・
「馬鹿な・・・この私が・・・負けるなんて・・・」
そして佐織は振り向き、武器を構えながらこう答える・・
「いい勝負だったわ、貴方とはもう一度、どこかで戦いたいわね・・・」
「ふっ・・・望む所だわ・・・」
崩れながら答える石妖、死してはいないが戦闘続行不能である  石妖脱落 残り3名
その時、美羅は冷美の攻撃にて苦戦を強いられていた・・・・
足元が徐々に凍りつく、そしてそれを利用しての冷美の攻撃・・・
「くっ・・・足元が滑って・・上手く動けない・・」
滑る様に接近してくる冷美、その手には氷の薄刃の剣が握られている。
「どうした・・ここで終わりか・・・?」
動けない美羅の頬を薄手の刃が掠める・・・美羅の頬は血で染まっていく・・・
「動きにくいなら・・・一気に詰めるまで!!」
美羅はその場より飛び、冷美に向かい一気に間合いを詰める!!
その様子を見、冷見は余裕の表情で片手を美羅に向ける
「死・・・ね・・!!」
美羅に向けた手の指が氷柱となって伸び、美羅の肩等に刺さる
美羅はその場に崩れ落ち、冷美を睨む・・・
「この技は・・・氷柱女の・・・」
「妹の技を・・・私が使えないとでも・・」
不敵な笑いを浮かべる冷美・・・その時、背後から冷美めがけ三節坤が突かれる!!
冷美は横に滑りかわすと、佐織を睨む・・
「まだ・・まだよ・・私はまだ負けていない・・」
「くたばり・・・ぞこないが・・・」
石妖に与えられた一撃が響いているのか佐織はフラフラしている・・冷美は美羅を睨むと
「いいだろう・・勝ちはお前に譲ってやる・・」
そう言うと冷美は橋姫の前に立ちふさがる・・
「来い・・」
冷美は佐織を挑発する
「このぉぉーっ!!」
佐織は果敢に冷美に突っ込む。
「無駄よ・・」
突っ込んでくる佐織を薄笑いすると中空に氷球を幾つも発生させる・・・
「堕ちなさい・・」
佐織に向かってマシンガンの様に硬い氷球が放たれる!!
「きゃあああっっー!!」
行く数もの氷球が佐織に当たる!! そして佐織は後ろに跳ね飛ばされ、立ち上がることは無かった・・  橋姫脱落 残り2名
「それまでっ!!」
会場に女天狗の声が響く、トーナメントに残ったのは・・二口女の美羅と雪女の冷美である
美羅は突然の声に唖然とする・・
「まさか・・・勝ったの?」
試合終了の声と共に天子と綾が試合場に駆け上がる
「やったじゃない、美羅」
「おめでとうございます!!」
正気に返った美羅は強気に出た・・
「と・・当然よあれしきの相手で私に勝てると思って? とりあえずこれで貴方との決着が付けれますわ!!」
「ふふ・・籤で当たればね・・」
そう言うと天子と綾は試合場を降りた。
そして試合は一時中断昼食の時間となった
各々の持って来たお弁当を開放された中庭で食べている
桜舞散る中庭の広場は人がいっぱいだった
もちろん、彩と天子も中庭にいた・・・
「さ、天、私たちもお昼にしましょうか」
「うん」
広場の一角にてお昼を取る天子と彩
「この日の為に、姉さん腕によりをかけてお弁当を作ったわ、さ、食べて!」
豪華重箱三段のお弁当が其処にはあった
「すごーい、これ姉さん一人で?」
「んっ?そうよ、さ、遠慮せずに食べて食べて?」
さすが小料理屋で働いているだけあって料理の腕は一流である
「はい、天子・・あーん・・」
料理をつまんで天子に差し出す彩
「(うーん・・・なんだか恥ずかしいな・・)」
そう思いながらも口をあける天子・・・その時、天子の背後に強烈な視線が感じられ振り向いた
其処には幾人の男性が同じ様に口をあけている・・さながら燕の雛のように・・旗から見ると異様な光景である
「え、えーと・・」
そう思いながら天子は差し出されたお弁当を食べる・・視線がすごく気になるお昼時が過ぎていく・・
さて・・・時間が過ぎ、第三回戦が行われようとしていた、綾の試合は二試合目、天子の試合は一試合目である


幻想妖魔旅館