3月3日

 まったく、信じられないったらありゃしない。卒業生を普通落とすか?一般教養科目だろーがよぅ。成績を代理で取りにもらっていた弟から「落ちてるよ」と電話があったときは、本当に地の底に落ちたような気分だった。ちくしょう。せっかくロスにきたっていうのに最悪な事態になっちゃったじゃん。
 そもそも旅行中に卒業できるか否かが決まり、もし再試験だなんてことになったら旅程をつめて即強制帰国しなきゃいけないっていう綱渡りな旅程を決めたときから「…ま、まさか、ねぇ、アハハ」なんて、うっすらとイヤな予感はしていたけれど、その予感が的中してしまうと、ぐうの音もでない。
 残り6単位。絶対とれていなきゃおかしい(だってちょっと出席したし、レポートは秀逸なものを出したし)理工学部のパンキョー科目でGがつき(再試験すら不可という魔の成績)、保険でとっていたはずの日本文学概論と、日本語学概論を両方落とす始末。日本文学概論に関しては、再試験をしたところで取れる気がしないしさぁ。ロスの神様、誰か助けて…。
 帰らなきゃいけないから、早速チケットの手配とかをしなくちゃならない。でもロスはもう夜。日本に電話して、格安航空券の帰りの日にちを変えてってごねてもとりつくしまもなし。しかたないから明日HISに行くしかないっすね。てかこのままじゃラスベガスにいけないじゃん!ホテルの予約の変更もしなくちゃ。
 まったく、こんなに英語って通じないものなのだろうか。っていうか理解できないものなのだろうか。これでもセンターでは190点とってたのに…TOEIC500点じゃだめっすか。やっぱり。がっくし。でもなんとか予約の変更もできたし、明日は試験とか留年とか、そういうものを忘れて、ラスベガスで遊ぶっきゃない。とにかく俺の旅行ははじまったばかり。なにがなんでも楽しい旅にしてやるんだから。

 くさくさした心にじわじわと染みこんでくるロスの夜はまったりと甘くて、そしてやさしく体を包み込む。ったくなんていいところなんだ!

★3日の行程
 ロス到着@9:10→レンタカーを借りる@11:30(運転こわい)→家に泊めてくれるイケメンな友達ヤスと感動の再会@12:45→パサディナという古き良き町並みでお散歩@17:00→卒業できないことが判明@priceless


4日

 これは、いったい、何?夢ですか?町中がらんちき騒ぎしてる!ドラクエみたいなカジノがワンフロアある!ホテルは豪華そのもの!噴水すごすぎ!ルクソールの内装かわいすぎ!エクスカリバーの外装ゴテゴテしすぎ!っていうかこんなに寒いのにどうしてみんな半袖なのさ!でもその気持ちもよーくわかる!何よりトレジャーアイランド!部屋はジャグジー付きっすか!トイレ2個っすか!シャワー室は別に完備っすか!バスタオル一人3枚っすか!すごい!んもう感動!これ、寝てらんないじゃん!でも寝なきゃもったいないじゃん!きゃー、どうしたらいいんでしょう。ってことでとりあえず遊ぶ。
 もう、完全に脳味噌やられてます。このラスベガスの高騰バブル絶頂な空気に。それでもカジノで派手に遊べるような身分じゃないので、5¢スロットでかわいく遊ぶ。さっき飲んだハラペーニョ入りブラッディーマリーがいい具合にかーっときて、本当にここは夢?お願い、醒めないで。

 ロスに着いてからずーっと体のまわりにまとわりつく、このこっくりと柔らかい暖かい空気はなんだろう。気持ちいいなぁ。心いやされるなぁ。

★4日の行程
 ロスに滞在する日本人な学生達(なぜこんなにいっぱいいるの…?)とモンゴル料理(なぜロスで…?)@12:00→HISでチケットピックアップ(無駄な400$)@14:30→ラスベガスに向けて出発進行&平均時速80マイルの死のドライブ5時間→ホテル・トレジャーアイランド着@21:15→トレジャーアイランドのセクシー海賊ショウやベラッジオの噴水ショウやミラージュの噴火ショウなどを見つつ、ラスベガスの夜の散歩、そして5¢カジノ@ホントにpriceless!


5日

 こんなの、現実にできるんだぁ〜!テレビの中の世界だとおもっとったよ、わしは。入り口でサンタンクリームを購入し、おおきなバスタオルをもらい、プールサイドのベンチに横になり目を閉じると、まるでジリジリという音が聞こえるかのように、日差しが体をちくちくと刺し始める。3月初旬の砂漠の風はすこしひんやりとつめたく、それに比べて日差しは焼けるように熱く、そのコントラストが肌に心地よい。夢と現実を行き来しながら、ぼんやりと水着に汗がにじみ始める頃に、3人は目を合わせ、そろってプールに向かう。そして、きゃっきゃっ言いながら水をかけあったり、ウォータースライダーですべったり、のーんびり平泳ぎしたり。そう、それは白昼夢。イッツリゾート。
 ホテルのプールは俗っぽさがない洗練した感じで、それだけにとってもスノッブな感じで、なんとも心地よい。その中で、ドラマの主人公よろしく明るい日差しを跳ね返すような笑顔で水を掛け合う成金ジャップ。うーん、なんかステキすぎ。普段の自分だったら絶対バカにしてやまないだろう光景だけど、実際にやると楽しい。ありがとう、ラスベガス!

★5日の行程
 昨日は深夜3時に寝たにも関わらず9時起床→お隣のホテル・ミラージュのプールで泳ぐ@10:30→チェックアウト@12:00→ホテル・パリスの名物ビュッフェ(200$)、とてもビュッフェとは思えない本格料理を堪能。でも眠すぎて量を食べられず@13:00→真夏のような日差しのラスベガスをお散歩@15:00→ラスベガスのアウトレットで買い物@18:00→ふらっふらになりながら平均時速85マイルで帰路につく→帰宅23:30(死ぬほどヘトヘト)


6日

 デロリアンの本物だ。すごい!あのデロリアンにさわってる!やったー!俺、一番好きな映画って「BACK TO THE FUTURE」なんです。その「BACK TO THE FUTURE」のタイムマシン、デロリアンがどどーんとおいてあるんだもん。これは感激。すごい。
 それにしても、いったい全体どうしてこんなにびしょびしょになるんだろう。今日、2度目っすよ。パンツまでびっちょり。ウォーターワールドのショウは濡れると評判だけど、これは「濡れる」じゃなくて「濡らす」じゃん!こらっ、水かけるなよ!
 そしてそして、見つけました!Abercrombie&Fitch!アバクロっつったら日本のゲイ達もよく着ているアレだけど、日本じゃショップ無いもんねぇ。とりあえず話題づくりをかねて入ってみる、と、びっくり!水着の生兄貴がマネキン的にたってる。すごい。っていうかアバクロ、服がかわいい上に安い!でも、マネキンに着せてディスプレイするのはいいけれど、後ろをクリップで留めてマッチョ風に見せるのは詐欺だろう!ハルカがぽかーんと口あけて見ちゃってるよ。そだ、再試験で日本に帰らなくちゃいけないってことは「テレビ女ョン」に行けるっつーことだから、アバクロの服かって行こう!わーいホモホモ。
 さっそく買ったアバクロの服を着て、ゲイタウン・ウエストハリウッドへ。どこもかしこもアドボケイツみたいな感じのオープンカフェスタイル。クラブですらそう。なんかみんな楽しそう。っていうかホントに町中がアドボケイツ。ヤスにつれられるままクラブへ。5$って何事?ダンスフロアはスモークたきすぎで何も見えず。でも、外国人かわいい。このままこの町にすんだら、絶対外専になっちゃう!でもそれ以上にヤスの彼氏のたっちゃんがとてもイモイモしくてかわいい。見ているだけで幸せ。そんな自分って端から見たらちょっと不幸せ。

★6日の行程
 ユニバーサルスタジオハリウッドに行く@12:00(アトラクション:スパイダーマンショウ、ジュラシックパーク、バックトゥザフューチャー、バックドラフト、音響のなんか、ターミネーター2、シュレック、ウォーターワールド)→ユニバーサルシティーウォークを散歩@18:00(プリプリソーセージのホットドッグを食べる。最近野菜というものを食べていない。そしてアバクロを発見。驚喜しハルカとともに吸い込まれる)→帰宅@22:00→ウエストハリウッドへ@23:00→帰ろうと思ったらヤスの彼氏たっちゃんの車がもってかれている事件発生、そしてたっちゃんの家〜車の保管場所へ。知らぬまにロデオドライブとかビバリーヒルズとかを通過。走ったという事実だけが残った。そして帰宅@5:00。


7日

 ハルカと二人でディズニーに行くのは2002年のジュライプライドで、ディズニーシーに行ったときぶり。なんかそれを思い出させるような、この、カリフォルニアアドベンチャー!日本でいうディズニーシーにあたる、第2のテーマパークっつうことで、いやはや楽しみですよ。
 俺のブラクラ表情は世界共通語であることが判明。フジヤマ的コンセプトのジェットコースター「カリフォルニア・スクリーミング」で、急降下中に撮られる写真をハルカと示し合わせて白目をむいたブラクラ表情にする。そして見事に大成功。窓口に買いに行く。すると、窓口のおばちゃんはその写真を見て、腹を抱えて、涙を流して、悶絶しながら爆笑している。さすがに、そんなに笑われると、ちょっと複雑…。
 どうしてこうもカリフォルニア人は濡らすのが好きなんだろう。ディズニーだから大したことないだろうと思っていた、グリズリー・リバー・ランでは、いかだの水流下りアトラクションが本格的すぎて、ホントに流されて、びっちょびちょに。でもそれもまた良し。
 やっぱりディズニーって楽しすぎる。いくつになっても楽しすぎる。アラジンのショウの、空飛ぶ絨毯で世界を回るシーンは感涙ものだし、エレクトリカルパレードはあまりにも懐かしすぎて涙がでてくる。ディズニー大好き。夢をありがとう!
 帰宅し、ヤスと3人でコリアタウンに行き、韓国料理を食べる。みんなで食べる最後のお食事。みんな、ごめんね。先に帰ります。別れは惜しいけれども、あまりにもヘトヘトで俺はうとうと。ぼんやり車の窓からみたロスの夜景はとてもきれいで、ぼんやりしているだけに夢のようにも見えて、酔ってもないのにじんわりと体がほぐれて、なにより来てからずっと体をとりまく柔らかい優しい空気がなんだかとっても気持ちがよかった。この瞬間を味わえただけでも、旅行にきてよかったです。

★7日の行程
 5時に寝たというのに、10時には起床。そしてディズニーランドへ@12:00(ひたすら乗りまくる。マリブーマー(フリーフォール)、カリフォルニアスクリーミン(フジヤマ的ジェットコースター)×3、アラジンのショウ(超感動)、激しく量の多いチキンバーガーを食べながらビールで乾杯(ロスで一番おいしいお酒の瞬間)、マルホーランドマッドネス(ちゃちさがあまりにも恐怖なミニジェットコースター)、ゴールデン・ゼファー(ぐるぐる回る飛行機)、グリズリー・リバー・ラン(ズブ濡れになるいかだの水流くだり。一番人気)→帰宅22:00→コリアタウンで韓国料理でお別れ会→帰宅24:00


8日

 ああ、帰りたくない。けど仕方ない。がんばって再試験うけて、そんで卒業しなくちゃ。ロスはきっとまだまだ楽しいところいっぱいあったんだろうなぁ。サンタモニカのビーチで一日まったりしたかったなぁ。ロデオドライブでオシャレな午後とか過ごしたかったなぁ。ゲッティーセンターとかにもいきたかったなぁ。なによりもっとのーんびりしたかったなぁ。
 でも、これでもかってくらい詰め込んだ日程で、これ以上ないってくらいのハイテンションで遊び尽くせて、本当に楽しかった。ヤス、ハルカ、一緒に学生生活最後の旅行ができて、本当に楽しかったよ。ありがとう!それじゃあ、再試験に行って来ます。

★8日の行程
 起床@9:00→荷造りをして空港へ@11:00→飛行機に乗る@13:00→帰国@3/9の18:00→ロスの思いで@ホントにpriceless



エピローグ

11日

 試験問題が配られると、大きく息をためて、そして吐いた。A3サイズの封筒の封をきると、問題が出てくる。よし、勉強した通りの内容。すらすらとすべるようにペンが動く。解答用紙は自動的に文字で埋まっていく。これで、卒業をきめてやるぞ。解答用紙を埋め終わり、ペンを置いてふと、窓の外を眺めると、真っ青な空が広がっていた。日本の季節もロスを追いかけるようにだんだんと暖かくなっている。もうすぐ春だなぁ、そう思いながら雲の一つ一つを眺めていたら、小さな飛行機が後ろに平行な筋をつくりながら、悠々と広い空を切っていた。


13日

 このスロープを、あと何度昇るのだろう。春を運ぶ、この時期特有の強い風に取り巻かれながら、風にとばされた落ち葉を掃いている掃除のおじさんに会釈をする。このスロープを登りきり、広場を抜けて、一番奥の建物の右側が、文学部の事務所である。ヤス、ハルカに「帰るからには絶対卒業するから!」と、約束したんだもん。だからこそ気合いで寝ずに勉強したんだもん。卒業すんだもん。
 「田辺さん、お待たせしました」そういって、成績表を渡された。事務員の手の脇からチラリと見えた「卒業(修了)」の文字。自分の手にとりもう一度その文字を確かめる。まったく、最後の最後にこんなドキドキさせてくれなくていいんだよ全く。心では悪態をつきながら、でも思わず笑みがこぼれてしまう。
 事務所のドアを開けると、ちょうどそのドアをめがけて吹いてきた風に思わずあおられた。風のかたまりが体を通りすぎるかというとき、ロスで感じたあの暖かい柔らかい空気が僕の頬をなでてほほえんだ。

-END-