畏    怖


厭な思い出を抱えたひとりの人間がいます。
からっぽの心の中に何倍にも膨らんだ
憎悪と人間不信と嫉妬の陰影を
密かに隠し持った
ひとりの人間がいます。
犯された視野の中を平凡に生きるために
誰かの期待を裏切ることを
極度に恐れた人間です。

目的も原因さえない感情に支配されて
崩れ落ちた一瞬があったとしても
私は預言者の首を欲しがったりはしないし
太陽のせいで人を殺したりもしない。
けれど
切り抜かれた悪戯を懐かしむ
狂った意識の頂点に
取り戻せない何かが
ある一定の速度を持って流れ出す。

厭な想い出を抱えた人間がいます。
自分という枠からはみ出ることを
極度に恐れる人間です。
遅過ぎた救いの向う側で
適当な無関心さを掲げて
たいくつな誓いを繰り返すのは
あなた
            1979.2 sami 18歳