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私達が畜産動物の生前の姿を目にする機会はほとんどありません。また、普段肉類を口にする時、その動物がどのような環境の下にいたのかと、思いをはせる人は少ないでしょう。
2003年11月、テレビのニュースで、日本における畜産業界の現状の一部が放映されました。画面には、密飼いと呼ばれる、今日の養豚、養鶏のすさまじい映像が映し出されていました。
密飼いとは、経済効率を高めるために、超過密の状態で畜産動物を飼育する、というもので、鶏なら畳一枚分のスペースに50羽が押し込まれて育てられます。彼らは羽を広げることも出来ない状態で、極度の運動不足とストレスにさらされたまま、生後40日程で食肉として出荷されます。
密飼いされた鶏の健康状態は悪く、外部からわずかな病原菌が入っただけでも病気にかかり、あっという間に全体に広がってしまうため、ウィンドレス鶏舎と呼ばれる、窓のない電気の明かりだけの鶏舎で飼育されます。病気に対する抵抗力を少しでも高めるために、密飼いされた動物の餌には、大量の抗生物質が混ぜられています。その結果、抗生物質を大量に体内に取り入れることによってできる、抗生物質耐性菌が畜産動物の体内に発生し、肉食をする人間の体内にも耐性菌ができてしまい、いざという時に抗生物質が効かなくなる危険性があると言われています。
密飼いは我々人間の健康をも脅かす可能性があるのです。
密飼いの背景には、大量の肉類を消費する、現代人の食生活があります。穀類や野菜を多く摂る食事をしていた日本人は、「食生活の向上」のために、欧米のように動物性たん白質を多く摂る必要がある、という肉食信仰によって、肉類の消費をどんどん増やしてゆきました。
安価な肉を大量に生産するために、畜産の形態は大きく変わってゆき、畜産動物は今、多大な苦痛を強いられています。
一般的に、肥りやすく、扱いやすくする目的で、雄牛や雄豚は、費用を節約するために麻酔なしで、幼いうちに去勢されます。また、通常、密飼いからくる噛み合いで傷つかないよう、豚は歯と尻尾を切断され、鶏は口ばしの先を切られるようです。
草食動物である牛に、肉骨粉など動物性の餌を与えたことから起こったとされるBSE(狂牛病)は今もなお、深刻な問題になっています。
肉食は環境問題や飢餓の問題にも深く関わっています。また、皮肉なことに、食生活を向上させるはずであった肉食中心の食事によって、たくさんの人が現代病で苦しんでいます。
人間は生き物であり、生き物は命を食べなければ生きてゆけません。それは自然の摂理です。ただ人間は他の生き物とは違って、目の前にある何を食べるか、という意志決定ができる立場にあります。肉食をしない、というライフスタイルは、欧米では珍しくない生き方になっています。
生きることと、味覚に通じる食の習慣を変えるのは、容易なことではないかもしれません。日本では欧米ほどベジタリアニズムが受け入れられていないことも事実です。
けれども、私達が畜産動物の悲惨な現状を知り、肉食の持つ意味について考えてみるのは、とても大切なことであるように思われます。
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