中毒の暴露
ペットの周りには危険な物質や毒のある植物がたくさんあります。
犬や猫は味覚の問題だけではなくとも、人が考えつかないいろいろなものを口に入れてしまう可能性があります。私の記憶を読み起こしてみますと。
チューリップの球根を5〜6ヶ食べて有機リン中毒から腎不全を起こし、3日間血液透析を受けて助かったシュナウザーのリンダちゃん。
ネズミ駆除用の毒団子を食べて、体中から出血を起こしてしまい、延べ10頭の大型犬から3000cc献血をしてもらって助かった60kgのセントバーナードの杏里ちゃん。
自宅が車の修理工場をやっていて、知らない間におそらく足についた油などを舐めて鉛中毒を起こし、解毒薬の点滴で1ヶ月も入院した猫のマリンちゃん。
山に行ってまむしに鼻先を咬まれ、前が見えないほどぱんぱんに顔を腫らしてきたアイヌ犬のゆうぞう君。
飼い主の留守中にチョコレートを盗み食いして、白目をむいて病院にかつぎ込まれたダックスのクリンちゃん。
記憶からまだまだたくさんの動物達の顔が見えてきます。食べられる物もありますが食べられない物でも意志とは関係なく摂取し、命に関わる危険な状態になることもしばしばあるのです。人であれば食中毒や毒キノコ、フグなどがおもな中毒で本人次第でいくらでも気のつけようがありますが、ペットの子達には自分で気をつけるこの感覚が人と異なるのです。ですから飼い主さんがペットに変わって正しい知識を持ち、動物を危険物質から守ってあげる必要が出てくるのです。
ペットに異変があり中毒が疑がわれる場合、重要な情報は1.何を食べたか。2.どのくらいの量食べたか。3.いつ食べたか。これらのことが特に重要です。このことのどれかが分からないと緊急治療を行うにあたり、解毒が間に合わず死亡したり、後遺症を残したりまた、不適切な治療を行ってしまう可能性が出てくるのです。ですから、この3つのことは最低条件と考えなくてはなりません。
次に必要なのは動物の症状です。病院に来院されている場合には、獣医師が判断できますが、電話での問い合わせの場合に、実際その動物の状態を聞くことになります。
1. 呼吸はどうか。2.歯茎の色はどうか。3.眼の瞳孔はどのようになっているか。4.吐いたもののこと。5.痙攣などはあるか。これらのことを冷静に見るのは難しいかもしれませんが、例えば歯茎の色が異常にピンク色だったり、出血跡が見られる場合、また眼の瞳孔が縮瞳(黒目が小さくなる)しているなど、これらの情報は毒物がはっきりしていない場合にとても有力な答えになってくることがあります。
我々の病院で電話応対する場合のマニュアルを簡単にあげておきますので参考にして下さい。
1. 催吐可能な条件
*摂取したのが30分以内の時。60分以上経過していれば無理。
*物質が強酸・強アルカリではないもの(電池など)。
*石油製品は不可(ライターなど)。
*意識がはっきりある。
吐かせると簡単に言ってもお腹を押した位では吐けません。吐かせる注射薬を使ったり、5%位に希釈したオキシドールをのませます。舌の根元の方に食塩を多量になすりつけるという方法もあります。
石油製品をのんだ場合にのみ、牛乳や卵を与えることも可能です。
2. 呼吸不全を起こす毒物
*ストリキニーネ;はげしい強直性痙攣。皮膚の刺激で敏感に痙攣が誘発される。薬局で購入可能。摂取後短時間で症状が発現しほとんどが死亡する。
*有機リン;植物の球根や殺虫剤などに含まれる。口からニンニク臭いにおいがする場合もある。死亡率が高い。
*パラコート;摂取後数日以上経ってから呼吸困難などが現れる。農薬の成分。
回復不能な肺繊維症を引き起こし最終的に死亡する。
3. その他の身近な毒物
*ホウ酸;涎、知覚過敏など。わずか2gで10kgの動物が死亡する。
*メタアルデヒド;運動失調、眼球震盪(目が振り子のように規則的に上下、左右に振れること)を起こす。ナメクジの駆除に使われる。
*ナフタリン;嘔吐、呼吸粗励。禁催吐。防虫剤につかわれる。
*クマリン;鼻腔や排泄口からの出血、ネズミ駆除に使われる。摂取後3から7日後から症状が出る。解毒薬としてVit Kが使われる。
4. 身の回りの有毒植物
*フクジュソウ;心臓麻痺、呼吸困難、死亡することもあり。

(フクジュソウ)
*ホウセンカ;種の部分を摂取すると子宮が収縮を起こす。腹部痛。

(ホウセンカ)
イヌサフラン;目にはいると失明する。呼吸困難が出ると死亡する。

(イヌサフラン)
*ポインセチア;嘔吐、下痢。刺激が強いので催吐させずに牛乳を飲ませる。

(ポインセチア)