第十章





KIKI-HOUSEのシェフは無愛想だと、初めてのお客さまにも
そうでないお客さまにもよく、お小言をチョウダイしております。
まったくもってそのとうりでございます。

ここで少しばかりの弁解をさせて戴きます。
それはこうです。  
一皿一皿が食べていただくお客さまとの剣勝負だと
私は考えているからなんです。
その戦いの場で、お愛想笑いなど浮かべながら料理を
ワタシとしては作れないのです。

そんじゃ弟子を使って、時間的にも精神的にも余裕を持ちながら
料理を作れば良いんじゃないのとも言われたことがありました。
ワタシの料理における美学では、お客さまと一対一の
真剣勝負の場に助っ人など無用な事なのです。

アーチストと呼ばれている職人画家は
果たして一つの作品を仕上げるのに
他の人の手を借りてまで仕上げているのでしょうか。

     

もしワタシが弟子を使い、下ごしらえをまかせて
一皿を完成させたとしたら、それはそのシェフ本人の料理とは
ワタシは認めませんしやろうとも思いません。
何よりも自分自身の達成感がありません。
あくまでもKIKI−HOUSEのの料理はシェフ菊池千秋の
お皿の隅から隅まで 気 を配った一つの作品と捉えて欲しいと思うのです。
 
とある集まりで東京の名店に、およばれしたことがあります。
そこはテレビの料理番組で「鉄人」と呼ばれていた方のお店です。
同じ業界人としてどんなに感動するお料理が出てくるかと
大きな期待をもって行きました。
最初に手渡されたお品書きを見て、ワタシはがっかりしました。
それは、キャビア、フォアグラ、前沢牛、おまけにフカヒレまでの
まことにもって目もくらむような、豪華なハッタリメニューの羅列です。
素人さん筋にはうけるでしょうが、同じ業界人としては納得行きません。

何がいけないんだろうとココでワタシは考えました。
それはプロレス的テレビの料理番組がいけないと独断しました。
そんな一見豪華な名前を並べれなければ、お客様である視聴者が
納得し喜ばないと、その方は料理番組でインプットされちゃたんだろうな。
じゃあ、その料理の鉄人が悪いかといえば、そうでもないような気もします。
あの有名な方の料理だから、何も知らないミーハー的お客様が
この方のお店にそう欲求するのかなとも思いました。
仮にそうだとしたら、そういふうに決め付けちゃった客が悪い。
との結論にワタシの考えがまとまりました。
つまり何が言いたいかというと
「自分で造りたいものを造るワタシは客に媚びない」ってこと。

変わって翌日、渋谷で一番古くからやっている洋食屋さんで食べた
カニクリームコロッケが、やけにワタシの心に響いた事か。
まぁ、そんなハイソな食材にはついていけないワタシの料理ではあります。



ワタシの料理に何料理というカテゴリーはありませんし意識はしておりません。
マアしいて言えば私撰料理(プライベートチョイス)と表現します。
自分が食べたいなーという料理の数々を、自分の中で 変換して
美味しいと言えるものだけをメニューに載せています。
ということで御託三択並べましたが、要は うまい夕飯を食べたい 
という一言に尽きます。

そしてチーズケーキ(ンッ!ムフフ)が大好きなオヤジがとても
フリョウなオヤジ※の為につくる料理というのが
コンセプトといえばコンセプトかな。

 ※なんでも楽しめちゃう、素敵なポケットを沢山持っている人間を
フリョウとワタシは定義します。



こんな所までお付き合い戴き有難うございます。
そのささやかなお礼ということで、ご同伴の方も含めまして
ディナータイムの乾杯のワインをサービス致したいと思います。
ご来店の際には、上のサービス券をプリントのうえ切り取ってお持ちくださいネ。