Birdy Diary

「コウノトリの郷」

2003, 3

「コウノトリの郷」

豊岡にあるコウノトリの郷に行ってきました。間近でニホンコウノトリを見られるなんて、感動です。目つきはちょっと悪いけど、 大きな鳥でおっとりしています。ですが、いざとなったら、くちばしの端は非常に鋭く、 魚も簡単に断ち切れてしまうほど。指でも噛まれたら、流血だけでは済みません。 ダイサギが餌のおこぼれに預かろうとして、まるで、ケージに一緒に住んで居るかのようです。 コウノトリの方は、左右の羽の片方を短くなるように切ってあり、オープンケージでも飛んでいかないようになっています。それでも風の強い日は、飛んでいってしまう危険があるそうです。

体重は平均500g位。成鳥が食べるえさの量はドジョウを中心とした魚で、体重の20%くらいだそうです。案内の方が、漬物樽に一杯の中国産のドジョウを(何と9万円位、3日/10羽くらい)見せてくださいました。 主食となる餌は、脂ののっていない小あじを漁師さんに特別にお願いして調達し、冷凍保存しておくのだそうです。

コウノトリの郷公園の資料館に行くと、鳥類の研究者、民間、兵庫県や豊岡市行政も巻き込んでの大きなプロジェクトで、大勢の人が協力してやっとここまで来た、ということがわかります。ボランティアの方がケージの前にいらして色々と説明もしてくださいます。一般公開されていない施設が二箇所あり、山間の人気のない方に数組の番がいてヒナを孵し、現在100羽程度に殖えています。 ケージも満杯に近く、早く野生に返したいところですが、大量をまかなえる餌場が自然の中にはありません。野生のコウノトリも一羽飛来してきましたが、冬の間餌が取れなくて、 公園内のケージで人口飼育された個体の餌をもらっている状態です。休耕中を田んぼの借り上げて餌場を作る努力がされています。

資料館の地図で豊岡を見ると川沿いの谷間に広がる広大な地域だということがわかります。灌漑設備が整う以前は、 毎年、地域全体が洪水にあい、湿地帯または沼地のようになっていました。そのような環境でたくさんの ドジョウや小魚など、コウノトリの餌となる生物が豊富にいたことは想像に難くありません。昭和の初期にまだ洪水が起こっていた頃、豊岡に 住んでいたコウノトリは100羽程度だったそうです。今は洪水どころか、かつて湿地帯があったことさえも全く分からないほどに治水が整備されています。推測ではありますが、 十分な量の餌を確保するのは容易ではなさそうです。

コウノトリが絶滅したのは、農薬などの影響もあると考えられています。コウノトリの郷公園の周りの農家の方も田んぼの手入れの仕方、 作物の作り方などを鳥のためになるように変え、大変気を使っていらっしゃるとのこと。公園付近に住んでいる農家の協力が随分あります。

野生への復帰は莫大な資金が必要です。町おこしに使ったり、観光資源にして資金を調達すると助かるはずです。一方、ヨーロッパのコウノトリと違って、ニホンコウノトリは人が苦手だそうです。野生のコウノトリがいた頃には豊岡の中でも人気がない山合いに住んでいました。繁殖も、ケージの背後に山があり、人どころか他の鳥もいないような静かな場所にいる番しか産卵しないそうです。 このように両立し難い事柄もあり、プロジェクトに関わっている方々の大変さが推測されます。豊岡のプロジェクトは、希少、絶滅種の保存のプロジェクトとしては世界の中でもうまくいっている方なのだそうです。 一度失った自然の代償は本当に大きい。

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