M・シュナウザー『なお』 『なおの多事争論』−M・シュナウザーなりに思うこと−


第3話 −珍味について−

最近は朝夕めっきり寒くなりましたね。
みなさんお風邪など召してらっしゃいませんか?
こんにちは、M・シュナウザーの『なお』です。

唐突ですが、最近ご主人様がちょっと「珍味」系の食べ物に凝っているみたいです。
珍味と言ってもそこら辺の虫を捕まえて食べるとかそういった類のものではなく、海産物系とか山の幸系とかのいわゆる一般的な食べ物です。

きっかけはとあるデパートの産地名物コーナーというイベントを見にいったことのようですけど、ことあるごとに小銭を握りしめては 「うにのなんちゃら」とか「しいたけのうんちゃら漬け」とか買ってきてたりします。

それはまあ食べ物ですからご主人様が欲するのであれば特に何も言うことはないんですけど、ただひとつ言いたいのは出来れば僕等犬でも食べられる 物だとちょっと嬉しかったりするかな、なんちゃって……みたいな感じです。

んで、最近ご主人様が口癖のように言ってるの言葉が
「うにの塩漬けが食べたいの」
です。

僕等にはよく分かりませんが、よくスーパーとかでも売ってある「うにのアルコール漬け」と「うにの塩漬け」とはまた違ったものがあるようで、
「アルコール漬けはいけねえよ。なんてったって、うにの繊細な風味を殺しちまうからなあ」
などとどこかの人気漫画の主人公の知り合いの辰さんが言ってるようなことを、九州人のくせに無理のある江戸っ子風につぶやいてたりします。

そこでご主人は立ち上がりました。すわっ!!(え?表現が遅い?)

暇だけはある身分を生かしては、もとい仕事で出かけた地域を回っては、その都度地元のスーパー等に出向き、細い目を鬼のようにギラつかせて お目当てのものを探し始めたのです。

そして探し始めること約1月と11日(やく?)

「こ、こここ、これだぁっ!!」

とお店の人が今にもカウンター下の非常ベルを押さんとするばかりの勢いで(心の中でね)叫び、それをあるったけ手に取ると会計レジに向かったのです。

「これだけ下さい!え?あ、そんなにするんですか。んじゃ、ちょっと減らしてこれだけで……。えぇっ、それでもまだそんなに?んじゃあ1個で」

とほとんどの商品を他の客に愛想を振り撒きながらまるで店員のように元の場所に戻しながら、なんとかかんとかそのものを手に入れたのでした。

仕事で行ったにも関わらず、んなこたあ忘れてほくほくと直帰してしまったご主人様。

この日のために取っておいた、こめどころ○○のアンケートに答えて手に入れた「厳選・最高級こしひかりっ!!」を丹念に洗い始めます。
「まずは30分ほど寝かして、ふんふん、んで炊き上がったらさらに15分ほど蒸らして、ふんふん。んで底からかき混ぜるように、ふんふん、だぁーっめんどくせーっ」
などと言いながら一応アンケートでもらった(しつこい)お米のパッケージに書かれた”美味しいご飯の炊き方”に則って準備をしているようです。

そして待つこと約1時間。

幸せな家族がその元に集まりそうな炊きたてのご飯の白い湯気が上がり、その芳しい香りに何とか15分間絶えたその後。

「おおぅ。米粒が立ってる」

と多分分かってないけど一応言ってみた風にどんぶり茶碗に炊きたてのご飯をよそいます。

蓋を開ける手ももどかしそうにガサガサと買ってきた「念願のうにの塩漬け」のパッケージを開け、 それを一塊、ご飯の上に落とし。

「ほふぅぅ……」

輝くばかりに光きらめくご飯粒の上に、これまた輝くばかりに光きらめくうに色のうに。

「うふふ」

とても30過ぎた一人暮らしの独身男とは思えないラブリーな声を発して、最初の一口をほおばったご主人様。
「ふぅむぅぅぅ。さすがに塩漬けは一味違うなあ。ふぅむぅ」
などとのたまいながら、「少しはお茶でも飲んで喉を潤しながらじゃないと喉につまるんじゃ」「うげうげ、ごほごほっ」「………」
みたいな光景を繰り広げつつ一食あっという間に食べ終わったご主人様。

「さあて、食べ終わったらすぐにお茶碗洗わないと。だってご飯粒がこびりついちゃうもーん」

「きしょっ!!」とは口には出さないが、鼻歌歌いながら洗い物をしているご主人様が食べ終わった後のテーブルを覗いてみると、

「○○名産。うにの塩漬け。原料:塩うに、(ここからなぜ小さい字で)エチルアルコール、アミノ酸、着色料、塩うに含有率75%」

えっと、これって、あのお。

「………」

いつの日かご主人様がこの事実に気づいて、また一人で怒りまくり僕等のご飯の量に影響するまでに、何とか食いだめしておかないと。

我がご主人様ながら、やれやれ。



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