シーズー物語 たれシーズー


第14話


僕は犬。それもシーズー。

最近ご主人様の機嫌がすこぶる悪いみたいです。
毎晩毎晩深夜というか朝方に帰ってきては僕等にぐちぐちと仕事のことで毒づいてたりします。
でも、ご主人様。それはご主人様にも問題があって、部下と言えども所詮は人間と人間との付き合いなんだから、利便性とか効率性とかだけじゃなくて、 もう少し相手の人間性という部分のプライオリティを上げて考えてみることが大事なのでは、などとはシーズーなので言いませんが、何だか特に最近ひどいみたいです。

昨晩でも僕の奥方に向かって
「ど、どけえっ、こ、この薄汚れたメス犬めっ」
とか怒鳴ってましたが、確かにご主人様がここ1ヶ月ほどお風呂に入れてませんし、それに確かに女の子ですから、その表現は当たってると言えば当たってるわけです。
まあ、僕の奥方もまだ生後5ヶ月ほどですから、ご主人様の言葉の詳細は分からなくても大体自分に文句を言われてるということくらいは把握できたようです。
その証拠にご主人様がいない時にこっそりベッドの下に粗相をしてましたし。

まあ、そんなこんなでご主人様がずっとこんな調子だと僕等もたまったものではありません。
何とかしなければ。
そう考えた僕等は3匹寄り添って文殊の知恵を出し合いました。
まずはご主人様を喜ばせなければいけない。
そのためにはどうすれば。
ご主人様が一番好きなのはなんだろう?
女の子?お酒?それともお金?
こう書いちゃうとご主人様が最低の人間に聞こえてしまうが、決してそんなことはむにゃむにゃむにゃ。

考えた挙句、お酒とお金は僕等にはどうすることも出来ないので、1番目の女の子の線で行くことにしました。
女の子と言えば、そう。
僕の奥方です。(注:くれぐれもシーズーです)
確かにまだ生後5ヶ月ですが、最近彼女も体つきも少し大きくなって、見様によっては女性として見れないこともなくなってきています。
通常のご主人様なら鼻にもかけなくても、酔って帰ってきたときのご主人様ならもしかするとふらふらとその色香に惑うかも知れません。(注:ありません)
犬は飼い主の背中を見て育つとはよく言ったものです。
あんなに素直だった僕にもこんな悪企みが出来るようになるなんて。
ふがっがっがっがっがっがっ。(注:ふっふっふっふっ。お主も悪よのう)
ご主人様が帰ってくるやいなや奥方のまだ青い色香で甘えてメロメロにさせてしまう‥‥。
ふっがっがっ。完璧な作戦です。

お。
そうこうしているうちにご主人様のご帰還です。
「う〜い、た、ただいまっ。い、今帰ったぞおっ」 一人暮らしなのに相変わらず玄関でぐたぐた言う癖は変わりません。
「さあて、寝るかあ」
ご主人様が玄関から廊下を歩いて、部屋のドアを開けた瞬間が勝負です。
ガチャ。
よしっ、今だ、行けっ、奥方っ!!
zzz‥‥‥。
‥‥‥ん!?
生後5ヶ月と言えば人間で言えばまだ小学生。
深夜に眠くなるのも仕方ありません。
って、おい。
「でさ、ぷう。今日も客がクレームつけてきやがってさ。それはこっちのせいじゃなくてそっちのせいだろっちゅうの。なあ、くろう?」
‥‥。
これで毎晩の繰り返し決定です。
仕方ない。
今日は求められるがままに、僕の体(体温)を貸してあげるとしますか。



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