第15話
僕は犬。それもシーズ−。
犬に風邪ってものがあるのかどうか分からないけど鼻水が止まりません。
元々僕等犬の鼻は少し湿ってるくらいが健康だって話を聞いたことがあるけど、今は湿ってるどころじゃない状態です。
歩くたびに鼻水がぽたり。
水を飲みにいけばその水の中にぽたり。
ご飯を食べる時にもその中にぽたり。
今の僕が迷路のような洞窟に入り込んだとしても、帰り道は鼻水を辿っていけば安全に帰れるのでないかと思うくらいひどいのだ。
これだけひどいと鼻どころかもちろん顔全体がぐちゃぐちゃになってること受けあいだぜ、ベイベェ。
そのせいかご主人様からも露骨に避けられてる気がするし、僕の奥方は最近新参者と一緒に寝るようになっちゃったし、
もう僕の人生お先まっくら、いいのよ一人で帰れるからあなたそんな心配しないで、状態なのだ。
こんな状態の僕の気持ちに気づいたのか、ご主人様が薬を買ってきてくれた。
動物病院へ連れてってくれれば良さそうなものだが、またまた給料日前でそこまでの余裕がなかったと見える。
「さ、ぷう。この薬を煎じて飲めばすぐに良くなるからね」
「…すまないねえ、僕がこんな体なばっかりに」
「おっかさん、それは言わない約束でしょっ」
みたいなやり取りを目で交わして、僕のご飯の中にその薬を混ぜてくれる。
少々苦いが、元々僕はご飯を舌ではなくのどで味わうタイプなのでそこまでは気にならない。
ご飯入れの横にある姿見に映る苦みばしった横顔を意識しながら、ごくん、ごくんやって水を飲むと、おや?気のせいかもう少しよくなった気がする(気のせいです)。
「これで何とか良くなればいいんだけどなあ」
ご主人様が財布の小銭入れを眺めながらつぶやくのを眺めて(小銭入れかいっ)、少し眠くなってきた体を自分のベッドに横たえる。
ああ、いい気分だ。お花畑にピンク色の象がいっぱい飛んでる
(注:薬でハイになってるわけではありません。ちなみに変なクスリはやめようね。ふががっ)。
何だか雲の上で寝ているようだ……。
新参者と奥方は自分のご飯の番だと思ってかご主人様に夢中だし、僕はこのままゆっくりと休むことにしよう。
みんな、ありがとう、僕は幸せだったよ、さよなら、さよなら……。
って死んじゃったら洒落にならない。
まだ原稿料の最高級手作りドッグフードももらってないし、奥方とも○×○×な夜を過ごしてないのに。
ご主人様もちょうどトイレに向かったみたいだし、新参者がご飯食べてる途中だから早速横取りに行かなければ。
嫌がり抵抗する新参者を尻目にガツガツとご飯をいただく。
くーっ、他人の芝生は青く見えるって言うけど、他人(他犬)のご飯はことさら美味しい。
え?
そんなに食欲があるんだったら病気じゃないんじゃないかって?
……そんなことはさておき。
そろそろご主人様がトイレから戻ってきそうなのでベッドに戻って寝たふりしなきゃ。
ご飯って本当にいいもんですね。また来週。さよなら、さよなら、さよなら……。
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