第16話
僕は犬。それもシーズー。
前々回ご主人様が機嫌悪くてまいっちんぐみたいな話を書きました。
ここ2〜3日さらにそれに輪をかけたように荒れています。
夜な夜な酔っ払って帰ってきては
「ど、どけえっ、こ、このさらに薄汚れたメス犬めぇっっ!!」
と僕の奥方に向かって小声で怒鳴ってたりするし。
(小声で怒鳴るのはマンション住まいであるご主人様のどうしても周囲に気を使ってしまう小心者ぶりを表しています)
確かにあれから継続して約1ヵ月半ご主人様にお風呂に入れてもらってないみたいだし、いくらやんちゃでも女の子なわけだから、
またまたその表現も的確と言えば的確と言えるのだけれど(前々話参照のこと)。
お金がない、女性に縁がないというのはいつものことだし、昨年の大晦日に高熱で救急病院に運ばれて以来体調が悪いということもあるみたいだけど、もしかしたらそれ以外にも何かあったのかも知れません。
まあ理由は知ったこっちゃあないけど、ご主人様の機嫌次第でご飯の量が変わる僕等としてはただただ早くその機嫌が直ることを祈るのみなのだ。
話は変わるけど、僕の嫌いなものBEST3に「自動車での移動」というものがある。
ご主人様の仕事の都合でたまに僕等を職場まで連れ出すことがあるんだけど、マンションからご主人様の職場まで約1時間かかる。
その1時間が僕にはたまらない。
新参者や僕の奥方は僕に比べてまだまだ子供だからひたすら眠ってごまかしているが、僕は気持ち悪くて仕方ない。
あまりにも気持ち悪くて仕方ないので一度助手席の車窓から飛び出てみようとしたことがあるが、顔面、特に鼻っ面を窓にしたたかに打ちつけただけという悲惨な結果に終わってしまった。
「血の味は青春の味だぜ……」
って矢吹ジョーが言ったかどうかは知らないけど、口の中の鉄の味にもうあんな若さゆえ〜の冒険はやめようと思ったものだ。
走り始めてすぐはまだいい。僕もピクニック気分でふんふんと鼻を鳴らしながら流れ行く季節を楽しんでいる。
10分後。なんだか口の中がねばねばしてくる。
20分後。ねばねばが強くなる。強いて言うならねばねばねばねば?
30分後。嗚咽が始まる。
犬だし♂だけど台所に走って口を押さえたくなる。
旦那と姑が背後から「あんた、もしや……」って言ってるのが聞こえる。
そして僕は照れ笑いを浮かべながら振り向き「…こくん」とうなづく。
40分後。長男出産(うそです)。
もうだめ。運転してるご主人様の足の間に行ってひたすら我慢するけど「じゃまっ」って言われて助手席に戻される。
50分後。世の中もうどうでもよくなってくる。
1時間後。到着。
ぐてぐて。でも会社の人がご飯くれたりするので一応食べてはおく。ごくんごくん。
てな具合でもう嫌で嫌で仕方ないのだ。
元々ご主人様が車の運転が上手ではないというかハンドルを握ると小心者がそうじゃなくなるというか荒っぽくなってしまうのでそれも原因ではあると思うのだが。
「よし、明日はぷうを連れていくか」
ご主人様がつぶやいてる。
こんな機嫌が悪い状態のご主人様のあの荒っぽい運転で1時間車の中にいたら……。
次男出産はもうすぐみたいです。
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