シーズー物語 たれシーズーダブル


第20話

えっ?
あたい?
あたいの名前は「ぷち」。
そう。
昔は巷で「2枚刃のシーズー(♀)」って恐れられてた女さ。

第3倉庫で取引に乗り込んでってブツを横取りし、 駅のホームに待たせてた踊り子のカルメンと逃避行した伝説のシーズーだろうって?
ふっ。そんなここともあったっけねえ。
(編集部注:ちなみに♀、生後半年です)

そんなあたいも今じゃすっかり落ち着いちまった。
今のあたいは単なる飼い犬。
愛玩動物として毎日を過ごしているただの犬さ。

あたいがこうなっちまたのにももちろん理由がある。
あたいは運命の人に出会っちまった。
あれはあたいがカルメンと喧嘩別れして場末のペットショップにいた頃だった。
あたいが店員がくれたフードを食べてた時、その人は現れたんだ。
ぐしゃぐしゃの髪にズボラな格好、年の頃で言うと30前半。
とても整った顔立ちとは言えやしない。
あたいの前に立ったその人間の男はこう言った。
「すみません、これ下さい」
はやっ。
あたいだけじゃなくショップにいた犬、猫、鳥、ハムスター、その他みんなが振り返ったものだったよ。
こんなやさぐれのあたいのどこが気にいられたのかは分からない。
でもさ。
こんなあたいを気に入ってくれたんだ。
そんな心意気に応えなきゃシーズ−しかも♀、生後半年じゃない。
そう思うだろ?
この人と一緒に暮らしてみよう。この人に賭けてみよう。
そう決めたんだ。
それからだよ。
今の1日1〜2回のエサを楽しみに尻尾を振り続ける生活が始まったのは。

だからあんたももう帰りな。
今のあたいにゃあんたらの対立組織(組織?)を抑える力なんてありゃしない。
あたいにはエサの時間を待って尻尾をふる、そんな生活がお似合いなのさ。

え?
昔あたいがやつら(やつら?)に囲まれてた時に身代わりになってくれたマキが拉致られてるって?
なんでそれを早く言わないんだい。
そうとなれば話は別だよ。
こうしちゃいられない。
おう、はちっ。
へい、おやびんっ。

ん?
また誰かあたいを呼んでるかい?

「ぷちっ」
「わふ?」
「ぷーちー」
「わふわふ?」
「ご飯だよ〜」
「わーふー」

おっとエサの時間だわふ。
こんなことしてられやしないわふ。
悪いけどまた出直して来てわふ。
わーふー。




BACK NEXT
TITLE

MAIL

TOP