第22話
僕は犬。それもシーズー。
早いものでもう夏も終わりに近づき、朝夕の空気には何となく初秋のにほひが漂い始めてるみたいだ。
秋といえば言えば思い出すことの1つに、僕がまだ子犬の頃の話がある。
まだ生後3ヶ月だった僕がご主人様のところに来て、まだ少し柔らかくしたご飯をもらい、そしてまだご主人様と一緒にベッドで寝ていた頃……。
あれはあれで案外幸せだったのかも知れない……。
そんな話はさておき。(意味なし)
僕と僕の奥方に恋の季節が訪れた。
まだ子犬子犬〜と思っていた僕の奥方が何というかそのうあのまあいわゆる大人の女性犬になってしまったのだ。
ご主人様が慌てふためいたことは言うまでもないけど、僕達ももちろんその状況には戸惑いを隠せない。
元々僕等(♂)犬っていうのは(♀)犬のそういう時期のそういう匂いがあると本能的に反応(興奮)してしまうものなのだ。
いつもジェントルワンの僕だってそうそう普通じゃいられない。
「ねえ、お前、今夜、な?」
などと単語ばかりの誘い文句を奥方に向ける。
「わふん?わふわふわふ、わふぅーん」
意味はよく分からないけど何とか了承を得たみたいだ。
僕は他の♂(特に新参者)と違ってご主人の見ている前でしかも昼間からわふんわふん営みを行ったりはしない。
ご主人様が寝静まり草木も眠る丑三つ時に相手の顔も見えないような中、こっそりと営むのがこれまたたまらないのだ。(ただの変態だ)
ご主人様が手酌酒で一人愚痴り始め(寝ないんかいっ)、新参者達が完全に夢の中に入った頃、僕の活動は開始された。
「ねえ」
「…わ、わふ?」
「ほら、昼間の、ね?」
「わふ?」
「照れてるのかい?馬鹿だなあ」
「……わふぅん」
「ほらこっちにおいで」
「わふわふわふ」
そして僕は奥方のピーッに僕のピーッをピーッがピーッでピーピーピーッ。
まあ何はともあれこうして僕と奥方は何とかやっと真の夫婦になることが出来たのだった。
僕の腕枕で奥方がすこやかな寝息を立て、そして僕が暗闇の中で紫煙をくゆらせたとき。
何か異変が起こっているのに僕は気づいた。
僕等の足元の方。
何か得たいの知れない物がうごめいている。
もしや。
目を向けた先にはやはりその予想したものが確実にそこにあった。
新参者(くろう)。
夜中に見る彼の瞳はいつもにも増してその怪しさを増し、突き出た下顎からはさらに長い舌が突き出て、奥方のピーッを狙っていたのだ。
こうなっちゃ放っておくわけにはいかない。
僕が新参者の方へ向かおうとしたその時。
もう1つの怪しい視線がこちらに向けられているのに気づいた。
「………」
ご主人様だ。
もしかして僕等の営みを見て興奮しているのか?
いやいや。
いくらあんなんでもご主人様も一応人間だ。そんなことは考えられない。
それでは何を?
「ぷうとぷちの娘をくろうのお嫁さんと思ってたけど、まあくろうとぷちでもいいかあ…」
わんですと!?
せっかくたった今真の夫婦になれたばかりなのに、その当日に奥方に不倫されるっすか?
そんな暴挙は犬しかもシーズーだけど許さないわふ!
と思ってた矢先、それまで瞳を閉じていた奥方がやにわに起きだし、目を疑うかのようなスピードで新参者に噛み付いたのだ。
よ、よかった。君は僕のために貞操を守ってくれたんだね?
「…わふわふわふー!!」(訳:何時だと思ってんの!眠いんだから明日にしてよっ!」
そうそう。明日だったら気分も新鮮で新たな気持ちで挑めるしね。
……いやん。
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