猫の独り言(その三) ふぅーーー。 人間の言葉に ”猫をかぶる”というのがあるらしいが この時の我輩が まさにそれだった。 まんまとこの家に 潜り込んで。「ボス」にも 気に入られて。 後はこっちの物と 思ったんだが、、、、甘かった、、、、。 あの時の我輩は 空腹と喉の渇きで この家に入り込むことしか 考えられなかった。 いや 我輩の狙いは良かったんだ。お腹一杯食べられたし 暖かい寝床も確保出来たし。 それには満足しているんだが、、、。 いかんせん 奴がいた。 我輩としたことが奴の匂いを 嗅ぎ落としたなんて。 ボスの膝の上で 食後の体を休めていた我輩の前に 奴は突然現れた。 (いや実際奴は もともとここに住んでいて ただ単に我輩が気付かなかっただけなんだが、、、。) そいつの名は ”タマ” 茶色い毛に細身の体。奴は我輩を ただ黙って睨んでいた。 最初はあっけにとられていた我輩も 負けじと睨み返した。 自分の営業力と演技力を フル活用して見つけた安住の地を 今更明け渡してなるものか!! かくして我輩にゃんことタマの 熱く静かなバトルは幕を開けた。 【我輩は にゃんである。】 そうそう我輩の名前だが 由来と言えるほど たいしたものは無いらしいが。 始めのうち ”猫ちゃん”と呼ばれ かわいい子猫を演じつつ反応していた我輩を見て ”にゃんこ” に決めたらしい。 (単純だよなぁ〜) 話を戻そう。 奴と我輩は 黙っていても必然的にお互いの動向を 探りあっていた。 タマはこし淡々と 我輩の場所を狙っていたし 我輩は寝たふりしてタマの息づかいで 距離を測っていた。 少しでも気を抜こうものなら 「ボス」に近付いていく。 そんな時何はさておき ボスの所に飛んでいき 奴の鼻先に我輩の右ストレートを お見舞いするのだ。 我輩の”猫パンチ”をまともにくらって 平気な奴など居るもんか。 爪? もちろん磨きをかけてあったさ!! 見せてやりたかったぜ 奴が‘キャッン!’と一鳴き 尻尾を巻いて逃げてく様を。 ん、、、、? あっ、、、、! ん゛〜。 どうでもいいことだとは思うんだが、、、一応書いておこう。 やつは犬だ “タマ”と言う名の犬だ。 (、、、、ボスの命名センスについて これ以上深く追求しないでやってくれ。) も一度話を戻そう。 それからも何度となく 奴と我輩の戦いは続いた。もちろん我輩は強い 全戦全勝だ。 だが奴もさる者 我輩に力で勝てないと判ると次なる作戦を繰り出してきた。 この家では 犬の食事時間は決まっているらしかったが 我輩は違っていた。 食べたい時にいつでも 餌は食べることが出来た。 奴はそこに目を付けたんだ。 我輩の餌箱の前に陣取り近ずこうとすると 低く唸り声をあげ威嚇してくる。餌箱から離れれば ボスに近ずく。 仕方なく我輩も ボスの元え走る。まるで どちらか一つ選べと 言っているようだった。 さすがの我輩もこれには参った。腹はすいて来るし だからと言ってこれで 負けるのも嫌だし。 我輩は 頭をかかえた。(ついでに腹もかかえた)もう絶対絶命の瞬間だった!! 奴が餌箱の前で威嚇しているその時 天から神にも似た声がしたのだ。 「タマ なにやってんねん!!猫の餌食うんじゃない!!」 (ぺしっ)←ボスが奴を打ちのめした音 それまで威嚇の声を上げていた奴は 一転腰を低くし尻尾を巻いて逃げ出した。 ゆっくり声のした方を見上げると ボスは優しく我輩の頭を撫で 立ち去っていった。 一匹残された我輩は 目からこぼれる水で歪むボスの後ろ姿を いつまでも見ていた。 その後餌箱に 頭から突っ込み 食べまくったのは言うまでも無い。 {実は犬は柴犬(中型犬)であって、決して猫が戦っても勝てる相手じゃありません。あしからず}(ボス談)