猫の独り言(その四)

後編




、、、、四日目。

この日も庭中を走り回った体を癒そうと 我輩は窓辺で休むことにした。

しかし腹が立つ いったいどこの猫なんだか。

猫にかかわらず動物なら 自分の縄張りを引っかき回されることは死活問題なのだ。
例え我輩がかよわい子猫だとしても これだけは許せない。
犯人を突き止めたらその体にぶつけてやるのに いかんせん姿を見ることもできない。

まだまだ興奮冷めやらぬ我輩も その疲れのせいからかいつのまにか夢のなかに落ちていった。

ヒクッ、、、、、、。

ピクッ、、、。

んん?

敏感なヒゲが我輩を呼んでいる?

ピクッ ピクッ!!

なんだ?眠いのに!?

!!!!!!

次の瞬間我輩は飛び起きた。嗅ぎ憶えのあるにおいが 風にのってきたからだ。

、、、、、奴だ!!!!

間違えるはずがあるもんか この四日間我輩を悩ませたにおいを!

すぐに庭に飛んで出たが 姿は見えない。
入り口か! 今日こそは捕まえてやるぞと そちらに駆け出す。

見つけた 間違いないこいつだ!!

飛び掛ろうと身構えた瞬間 我輩の体は氷付いてしまった。

奴はただ悠然とそこに座っているだけなのに こちらは動くことも出来ない。
ものすごい威圧感で こちらを見ている。
怒っているのはこちらのはずなのに 思わず我輩の方が体を小さくしてしまうほどだ。

、、、、、、動けない。

ただ両方で睨み合うだけ。どれだけの時間そうしていただろう?

「珍しいな ミーコ帰ったんか」

ボスの声がしたとたん 奴の威圧が消えた。

ゆっくりとその腰を上げると今だ動けずにいるその横を
 まるで我輩など眼中にないかのようにボスの元え歩いていく。

奴の風貌は 近くで見ると一段とすごかった。
片耳は削げ落ちて顔は傷だらけ どう見ても百戦錬磨いや それ以上のつわものだ。
はっきり言ってその時の我輩は 完全に奴に飲まれてしまっていた。

帰った、、、、?

今ボスはそう言わなかったか?

かえる、、、?

それって、、、やっぱり{家に帰る}ってことだよなぁ??

、、、ってぇことは 奴はここの猫ってことになるのか!!??

我輩以外に猫が居たなんて

、、、、聞いてないぞ!!!!!

そしてその考えは当り 奴は見事にこの家に馴染んでいた。

あの時我輩に見せた威圧はどこえやら
見事に飼い猫に化けいつもなら
我輩の指定席のボスのそばは 奴の席となった。

もちろん自分を取り戻した我輩だって それを良しとしたわけではない。
後から現れて デカイ顔するんじゃない!と 訴えようとこころみるが
奴は我輩のことを ヒゲの先にもかけない。それどころか そこに存在していないかのような態度だった。

二日たち三日たっても その状況は変わらない。ただただ悶々とした時間を過ごすしかなかった。

(ボスもボスだよ 我輩のことちっとも呼んでくれないし、、、、、、遠くから呼んでみても気付きもしないし、、、)

明日こそは我輩の存在だけでも

判らせてやる!!!!!と 

密かに決意した夜だった。家中が寝静まったころ 奴が動きだした。

良い子の猫はとっくに寝てる時間なのに足音を忍ばせ 外えと出て行く。

もちろん我輩も 気付かれないように後に続いた。
夜中に外に出たこと無い我輩はかなりドキドキものだったが
奴は当たり前のよに庭に向かっていく。

夜の庭はまったくその雰囲気を変えていて まるで自分の知らないものに感じられた。
少し圧倒されてしまった我輩は
奴のことを見失ったことに気付くのが遅れた。

(ど、ど、どうしようかぁ、、?)

でも奴がこんな時間になにをしているのか
どうしても気になった我輩は勇気をふりしぼって
先に進んだ。

静かだった。

なんの音もしない鳥の声も虫の声も 夜の庭がこんなだなんて初めて知った。

月明かりでかすかに明るい 
猫じゃなければ見えないだろう庭の先は 得体の知れない物の口の中に入っていくような感じさえする。

思わず引き返したがる足を 何とか前に進める。
少し進むと何者かの気配がした。奴かな?
出来るだけ足音をたてずに 体を低くしながら覗き込んだ。


??!!これは!!??


庭の一角 少し開けた場所だった。猫 ネコ ねこ、、、、?
一匹 二匹 三匹 四、、五、、、。

ざっと二十 いやそれ以上の猫が集まっている。

座ってるの伏せてるの 
隣の奴とじゃれてる奴
思い思いの格好でそれでも中央に頭を向けくつろいでいるようだ。
我輩に一言のことわりもなく
なんでこんなところで集会やってんだよ。

猫たちの中央 そこには一匹の猫がいた。

ミーコ、、、?

そうミーコ

奴が猫達の中央にいる。周りより少しだけ盛り上がったその場所で 堂々と腰をおろしている。
我輩に見せたような威圧は感じられなかったが どう言うんだ、、、、。

そう、、、威厳。

威厳があると言うんだろう スッと伸びた背筋で前を見つめている。

猫の群れの中の一匹が立ち上がると 腰を下げゆっくりミーコに近づいていく。

アイツのことはしっているぞ。歩いていただけなのにいきなり唸りかかって来たっけ
我輩がまだ飼い猫になる前の話だ。

ミーコの前に出ると 低姿勢になったままで仰向けになった。そう完全服従の体制だ。
ミーコがゆっくりそれを見下ろすと 顔を近づけにおいを嗅ぐ。
アイツがその場を離れると 他の猫たちも次々それに倣う様に同じことをしていく。

これって、、、、、

まるで下々の猫がボス猫にご機嫌伺いしているみたいだ。
いや みたいなんじゃない やつらはそれをやっているのだ。

ということはミーコ 奴は「ボス」!?

それもここら一帯の大ボスなんだ!!!
(ミーコがボス猫、、、それであんなに威圧感があったのか、、、、)


猫達の集会はそれからも しばらく続いた。
その間中我輩は身じろぎも出来ずに ただただその光景を見つづけた。

どれくらい時間がたっただろう 空が白み始めた頃猫たちは一匹また一匹と帰り始める。

やがてミーコだけが残った 正式には我輩の二匹なのだが。
奴は立ち上がると 猫たちが居た辺りをゆっくりと歩き回った後こちらに向かって来た。

(まっ まずいっ、、、)


すぐにでも隠れなくちゃいけないんだけど 動けば奴に気付かれそうで動けない。

(うっ、、くっ くるなぁ〜)

どうにもこうにも どうしよう、、、、、、。




内心アタフタしていると 奴は我輩の鼻先でいったん立ち止まるといきなり反転して家に向かって行った。
(たっ 助かった、、、、、、)


でも、、、、、


結局そのまま一睡も出来ずに朝を迎えた どうしても落ち着けない。 
あれからよくよく考えてみると あの時ミーコは我輩があそこに居たことに気付いていたんじゃないのか?

あそこまで近づいて 我輩のにおいがしなかった筈はないんだ。
知ってて 知らんふりしたんだ。

何故??


判らないが 絶対にそうなはずだ。
奴がなにを考えてるのかは ちっともわからなかった。

ミーコはまるで何にもなかったかのように ボスの側でくつろいでいる。


それから数日後ミーコは 現れた時と同じくフラッと出て行った。
結局あの時のことを確かめることは出来なかったが 我輩はもしかしたらスゴイ猫に逢ったのかもしれない。


我輩が夢と描いている。

猫界の大ボスに、、、、



大ボスって、、、、お前には
無理!!
絶対に
無理っ!!!(ボス談)