雑記

つれづれなるままにChasmanianしてみました。
図載せられないからちと厳しいね。そのうち絵描くよ。
ぜんぜんまとまらん文章だけど、HP寂しいからとりあえず場しのぎみたいなもんですけど…

とりあえず第1回は「Chasmanian」
これは、自分のChasmosaurusに対する理解を深めようと書いてたもんで、とくに意味ないっす。


今回のテーマはズバリ、ChasmosaurusPentaceratopsの豪華2本立て 。なんとこのChasmosaurus2001にケラトプス科では最新種となるC. irvinensisが記載されているんですよね。ほかにも、1989C. mariscalensisがテキサスから発見されております。それから、Pentaceratopsの方も負けてはいません。19983mはあろうかという、史上最大級の陸生動物のドタマ…つまり超巨大な頭蓋が記載されているんですねぇ。TriceratopsTorosaurusなんぞに頭でっかち選手権では引けをとりません。はっきり言って、ケラトプス科内では最近、最も熱いネタを提供している奴らかもしれません。なんで一緒に?なんて思う方もいらっしゃるでしょうが、この両種は様々な系統解析の結果、非常に近縁であることが示されております。別個に扱うのは難しいと判断したため、一緒くたに書くことにしました。今回筆をとりましたのは、自分がChasmosaurusPentaceratopsのなんたるかを理解しようと思い立ったのがきっかけであります。この恐竜は非常に研究のネタが多く、研究も進んでいるにも関わらず、TriceratopsStyracosaurusといった超有名どころに比べていまいち日の目を見ていない気がします。ChasmosaurusPentaceratopsもこんなに面白いんですよ、ということを皆さんにも知っていただきたい。そんな押し付けがましい根性で書き始めました。

おおよそ、Chasmosaurusと名のつく恐竜は、C. canadensis (Lambe, 1902)C. belli (Lambe, 1914)C. brevirostris (Lull, 1933)C. kaiseni (Brown, 1933)C. russelli (Sternberg, 1940)C. mariskalensis (Lehman, 1989)C. irvinensis (Holmes et al., 2001)と、これまで7種が記載されてきました。しかし、鼻角や上眼窩角の長さの違いは性差や個体差の範囲に収まるのではないかとされ、C. canadensisC. brevirostrisC. kaiseniC. belliのシノニムではないかと言われております(Godfrey et al. 1995)。現在ではC. belliC. russelliC. mariskalensisC. irvinensis4種が有効とされているみたいです。

それからPentaceratopsP. sternbergii (Osborn, 1923)P. fenestratus (William, 1930)2種が記載されておりますが、P. fenestratusP. sternbergiiのシノニムであろうというのが最近の見解です。それから、「sternbergii」なる種名は人の名前を使っておるため、「sternbergi」と「i」を一個減らすのが本当は正しいようです。

今回は、ChasmosaurusPentaceratopsのことをよく知ることを目的としており、Chasmosaurus属については各種の頭部形態の比較、棲息していた時代、地域、それに、Chasmosaurusをもとになされてきた主な研究を、それから、Pentaceratops属についても、巨大頭の標本も含めて、私の手持ちの論文の内容をいくらか紹介できればと思います。

順番からいって、まずChasmosaurusの各種の話、次いでPentaceratopsの話に移りたいと思います。

Taxonomic History of Chasmosaurus

まず、Chasmosaurus研究の歴史をさらっと箇条書きにしてみました。略号が何なのかをまず書いておきます。AMNH;アメリカ自然史博物館、BMNH;大英博物館、NMC;カナダ自然博物館、ROM;ロイヤル・オンタリオ博物館、TMP;ロイヤル・ティレル博物館、UAVP;アルバータ大学、YPM;イェール大学ピーボディ博物館。

1902, Lambe;頭頂骨に基づくMonoclonius belliNMC 0491)と、不完全な頭蓋と1個の胴椎に基づくMonoclonius canadensisNMC 1254)を記載。

1907, Hatcher et al.;両種とも、Ceratops属に再記載。

1914, Lambe;その前年に見つかった新たな標本(NMC 2245)から、Ceratops belliCeratops属には入らないとし、新たな属Protorosaurusを提唱。

1914, LambeProtorosaurusには先取権が発生しており、すぐにChasmosaurusと名を変えられる。

1915, LambeMonocloniusCeratopsとも有効な属ではないとし、”Ceratops” canadensisのために新属Eoceratopsを提唱。NMC 0491Chasmosaurus belliの模式標本に、NMC 1254Eoceratops canadensisの模式標本になる。

1923, GilmoreEoceratopsの新標本UAVP 40を記載。

1933, Lull;単型種のEoceratopsChasmosaurusに大局的分析を試みる。その際、AMNH 5402AMNH 5656NMC 2280YPM 2016など新たな標本を加えて解析をおこなったが、新たな種を設けることはなかった。幾つかの個体に見られる頭頂骨後部中央にある溝に関しては、性的な特徴である可能性を指摘。さらにC. brevirostrisROM 839)を記載。

1933, Brown;ほぼ完全な頭蓋骨に基づき、Chasmosaurus kaiseniAMNH 5401)を記載。UAVP 40もこれに含まれる可能性を指摘。

1940, SternbergC. russelliNMC 8800)を記載。これはNMC 8801NMC 8802NMC 8803も含む。

1977, TysonUAVP 40Eoceratops canadensisとする。

1989, LehmanC. kaiseniEoceratops canadensisと同じであるとし、優先順位から、Eoceratops canadensisChasmosaurus canadensisに取って代わられ、EoceratopsChasmosaurusのジュニアシノニムに。さらに、C. brevirostrisC. belliのシノニムに。

1989, LehmanC. mariscalensisを記載。

1995, Godfrey et al.C. canadensisC. kaiseniC. brevirostrisC. belliのシノニムとする。

2001, Holmes et al.C. irvinensisを記載。

Systematic Paleontology

CERATOPSIA Marsh, 1888

NEOCERATOPSIA Sereno, 1986

CERATOPSIDAE Marsh, 1888

CHASMOSAURINAE Lambe, 1915

Genus CHASMOSAURUS Lambe, 1914

Chasmosaurusは中型のカスモサウルス亜科で、Campanian期(76Ma74Ma)のアルバータやテキサスに棲息。その名前の由来は”chasm lizard”、つまり、「大きな穴の開いたトカゲ」ということ。「大きな穴」とはつまり、フリルに開いた頭頂窓のこと。それだけ、この属の頭頂窓は目立っていたのでしょう。いままでに4種が確認されています;アルバータ産のC. belli(模式種)、C. irvinensisC. russelli、それから、テキサス産のC. mariscalensisです。この分類は頭部形態をもとになされております。

Characteristic of Genus

とりあえずChasmosaurusとはこんな動物です…、みたいなことを簡単に羅列してみます。

@ 上眼窩角が後方へとカーブする。これは既知のケラトプス類の中では非常に特殊。

A 頭頂窓が非常に大きく、それに伴って頭頂骨の形が種によって、「T」字型や「Y」字型に細くなっている。

B フリルの後縁部は大層広がり、眼窩同士の幅の2倍以上になる。よって、頭蓋全体を上から見ると三角形状になる。ChasmosaurusTorosaurus以外の角竜では、フリル後縁幅が眼窩幅の2倍になることはない。

C 頭頂窓の後縁はストラップ状になっており、そのストラップの厚みは、ストラップ幅の半分以下になる。ケラトプス類を通じて、かなり薄い造りになっている。

D 鼻柱の後ろに細いつば状の内鼻隆起がある。これはPentaceratopsChasmosaurus以外のカスモサウルス亜科には見られない。

こうやって書くと非常に判りづらい。ってゆーか、自分でも分からない。そこで図を見て納得しましょう(図1)。@の角の後方カーブ、Aの「Y」字頭頂骨はよいでしょう(C. russelliは「Y」字型)。Bも一目瞭然ですね。Cは、まぁ見れば判りますが、フリルが非常に薄くて脆い造りなんですよね。首の保護にどれだけ役立ったか…。やっぱリビドーに生きる奴らなら、派手に装飾してたんだろうか? それはさておき…、Dは判りづらいですよね。Pentaceratopsの鼻面しかアップを用意できませんでしたが、こんな感じです(図2)。どうやら、図中の(fl)がケラトプス類の中でも特別に発達しているらしいのです。たしかにTriceratopsではこの内鼻隆起はないみたいですね。これで、ケラトプス類の鼻面を発見したときは属を2択の段階まで特定できます(PentaceratopsChasmosaurus)…きっと。頭部以外の特徴はないんかい!? ……手元に資料には残念ながら書かれておりません…。大事なのは頭部形態です。そう納得しましょう。

さて、次の段階では、Chasmosaurus属の中の種の違いを勉強していきます。

Canadian Species of Chasmosaurus

さて、Chasmosaurusに属する種は、主に頭部形態によってなされます。それだけ、この属の頭部形態はパリエーションに富んでいるということですね。このバリエーションはおそらく個体発生プロセスの変化によるものや性差によるものがあるかもしれないので、細心の注意をもって分類しなければなりません。

Chasmosaurusを考える際、その棲息地域、形態的な特徴から、カナダ産の種とテキサス産の種を分けて考えることにします。もっとも、テキサス産の種はC. mariscalensisしかいませんが、これは系統的にも他のChasmosaurusから少しはなれています。

では、カナダの方から話を進めましょう。Godfrey & Holmes1995)によって、カナダのChasmosaurusははっきりと2つの種に分けられるとされました。それがC. belliC. russelliです(2001C. irvinensisが加わる)。

それでは、カナダのChasmosaurusの種を説明していきます。まず、カナダ産Chasmosaurusはフリルの形で大きく2タイプに分けられます(図3参照)。フリルを形成する頭頂骨が「T」字型になるタイプと、「Y」字型になるタイプ。前者がC. belliC. irvinensisで、後者がC. russelliです。「T」タイプは頭頂窓が完全に頭頂骨で囲まれますが、「Y」タイプは鱗状骨も頭頂窓の枠を構成します。

T」タイプの一方の雄、C. belliは、フリルの後縁端に一対の大きな縁後頭骨をもちます。頭頂骨に付属する縁後頭骨はほかにもいくつかありますが、いずれも端の縁後頭骨ほど大きくはなりません。この特徴は、C. canadensisC. kaiseniC. brevirostrisにも見られ、いずれもC. belliのジュニアシノニムと考えられます。「T」タイプのもうひとつ、C. irvinensisは、頭頂骨に5対の縁後頭骨を持ちますが、内側の4対は互いに癒合して、前方に反り返っています。

次に、「Y」タイプのC. russelliについて。こいつは、頭頂窓の窓枠を、鱗状骨が一部構成することになります。また、フリル後端は、外側から3対の大きな縁後頭骨が存在します。

3には、C. belliC. russelliのフリル形態の比較の図が出ています。図中のACを比べれば、カナダ産Chasmosaurusのタイプがいかなるものかを理解できると思います。ただ、Dは一応「Y」タイプに見えますが、C. russelliには入るかどうかは疑問です。BはテキサスのC. mariscalensisなので、後に述べることにします。

次に、いよいよカナダ産Chasmosaurusの個々の種について、詳しく述べていきたいと思います。ページを捲って、各種の頭蓋図を見比べながら読んでください。文章を追うだけよりも格段に判り易くなるはずです(それは私の文章力と理解力の欠如によるところが非常に大きい)。

CHASMOSAURUS BELLI Lambe, 1902

Chasmosaurusの模式種。いくつかの頭骨や体の骨がカナダ・アルバータのRed Deer RiverJudith River Formationから見つかっている。Judith River Formationは古い方からForemost FormationOldman FormationDinosaur Park Formationに分けられるが、Chasmosaurus属はDinosaur Park Formationからしか産しない。始めは頭頂骨をもとに、Monoclonius belliとして記載された(Lambe, 1902)が、Monocloniusとは異なる頭頂骨であるとすぐに判り、Ceratopsに入れられた(Hatcher et al., 1907)。さらに、後により完全な頭骨が発見され、Protorosaurus belliとされたが、ペルム紀の爬虫類で既に使用されていたので、Chasmosaurus belliとなった(Lambe, 1914)。

カナダ西部のDinosaur Park Formation中層部産。

@ 頭頂骨の後端のバーがほぼ一直線で、後側端に1対の大きな縁後頭骨をもつ。

A その他の縁後頭骨は角の縁後頭骨よりも小さく、その数、癒合の程度はさまざま。

B 頭頂骨は完全に頭頂窓を閉じる。

C 前上顎骨の外鼻前縁のつば。

D 上眼窩角は反り、その長さはおそらく性差を表す。皺だけのもの、小さな瘤、37cmの角に至るまで、大きさはさまざま。

E フリル後端の横幅は、頭頂窓の縦幅の倍以上。

またまた謎なことが書かれていますね。はっきり言って、図を見ながらでなければ理解できるものではありません。図4を見てください。@は簡単に判ります。とくにC. russelliと比較すると一目瞭然となります。@もAも、要はまっすぐなフリル後端の外側に1対の大きな縁後頭骨と、その間に小さな縁後頭骨が並ぶということをいってます。BもC. russelliとの違いで、頭頂窓が完全に頭頂骨で閉じられていますよね。CとDについては、とくにC. belliだけの特徴というわけではなさそうですので説明はできませんしません。とりあえず、種を分けるには、いまのところ@とAとBしかないと思います。

C. belliは歴史が古いだけあって、シノニムは、Monoclonius belli 1902 LambeMonoclonius canadensis 1902 LambeCeratops belli 1907 Hatcher et al.Ceratops canadensis 1907 Hatcher et al.Protorosaurus belli 1914 LambeChasmosaurs belli 1914 LambeEoceratops canadensis 1915 LambeChasmosaurus kaiseni 1933 BrownChasmosaurus brevirostris 1933 LullChasmosaurus canadensis 1989 Lehman

結構、複雑な経歴の持ち主だということが分かりますね。何故にこんなにいっぱいシノニムができてしまったのか…。それは個体差が激しいためでしょう。可能な限り、見つかった標本の図を示していきたいと思います。

NMC 0491;タイプ標本。単一の頭頂骨。Monoclonius belliLambe, 1902)→Ceratops belliHatcher et al., 1907)→Protorosaurus belliLambe, 1914)→Chasmosaurus belliLambe, 1914)。

AMNH 5401;ほぼ完全な頭蓋でC. kaiseniのタイプ標本。C. kaiseniBrown, 1933)→C. belliLehman, 1989)。

AMNH 5402;最高の参考頭蓋骨。

NMC 1254;不完全頭蓋と胴椎1個。C. canadensisのタイプ標本。Monoclonius canadensisLambe, 1902)→Ceratops canadensisHatcher et al., 1907)→Eoceratops canadensisLambe, 1915)→C. canadensisLehman, 1989)→C. belliGodfrey et al., 1995)。

NMC 2245

ROM 839;もとはROM 5436。頭蓋。C. brevirostrisのタイプ標本。C. brevirostrisLull, 1933)→C. belliLehman, 1989

ROM 843;もとはROM 5499。下顎抜きの頭蓋。

YPM 2016

結構出てます…というよりも、やっぱ頭が出なきゃ種まで特定できないんですねぇ。断片だけの化石は後述します。

5に示したABCDEはそれぞれ、かつてC. canadensisC. belliC. brevirostrisC. kaiseniを表している。この図より、フリルの形態の類似が見られることがある程度は判ります。つまり、かつて種の違いとされてきた形質は、鼻角や上眼窩角のサイズによっていた要素が強いということになります。もし、角のサイズが成長過程の違いや性差を表しているのだとしたら、そのような形質で種を分けることはできません。

5を見てください。ADEはかつてのC. canadensisC. brevirostrisC. kaiseniです。フリルだけを上から見ると…CC. belliとほとんど区別できないですね。

C. brevirostrisは鼻面が高く、幅が狭いことで分けられましたが、これは横から潰れたためと考えた方がよいでしょう。C. kaiseniに至っては、ほとんど角のサイズで種を分けられたという感じです。眼窩、側頭部の穴、鼻、頬骨の切れ目はいずれもChasmosaurusの各種を分ける指標とされてきましたが、これらは堆積や厚密の過程で容易に変形しうるものです。よって、種を分ける指標にはなりえません。上鼻骨が2つに分かれていることがC. canadensisの特徴とされましたが、これも成長しきっていないため骨が融合してなかったんだろうと考えられますね。

Chasmosaurusの種内変異が分類に大きな混乱を招いたことは間違いないでしょう。Godfrey & Holmes1995)によれば、カナダ産のChasmosaurusを見分けるには、フリルの形態を観察する方法がベストだと結論しています。要するに、他の特徴は種の違いを説明できないということでしょう。偶然…かどうかは知りませんが…カナダ産Chasmosaurus3種に分けたとき、見事に時代的な住み分けがなされておりました。それについては後述する予定です。

CHASMOSAURUS IRVINENSIS Holmes et al., 2001

こいつが瓢箪から独楽みたいな偶然の発見で見つかった噂の新種(もう違うか?)です。最も最近に記載されたカナダのChasmosaurus1958に、アルバータのIrvinLindoeによって採集され、Langstonが長い間所有しておりました。C. belliとされ、最近までジャケットが被さったまま埃を被ってました。

さて、Triceratopsの前肢のつき方が話題になっていた頃、角竜の前肢の形態を調べてやろうじゃないか、と肢を捜しながらジャケットを剥し始めたところ、見たこともない奇妙奇天烈な縁後頭骨が出てきたという話です。C. belliのつもりでクリーニングしたのだからさぞや驚いたことでしょう。つまり、後端の縁後頭骨が揃って前にカーブしていることが目を引いたといえるでしょう。

カナダ西部のDinosaur Park Formation上層部産。

@ 鼻面が比較的幅広で、鼻角は短い。

A 上眼窩角はなくて、皺が寄った突起状。滑らかな面には半球状の窪みがある。

B 鱗状骨前部の頬骨との隔たりは丸く広がる。

C 鱗状骨は真横に突き出て、ほぼ長方形で後ろほど狭くなる。

D 鱗状骨の直後に直線状の頭頂骨後端が来る。

E 頭頂窓の長軸はフリル長より短い。

F 頭頂骨には10個の縁後頭骨があり、うち、内側の8個は互いに癒合し、平らで、背方かつ前方に反っている。10個もあるのは、ケラトプス科内でも非常に特殊。

例によって図を参照してください。

NMC 41357;タイプ標本。ほぼ揃った頭蓋、尾以外の体

TMP 87.45.1;部分的頭蓋

TMP 98.102.8;部分的頭蓋

CHASMOSAURUS RUSSELLI Sternberg, 1940

3つの完全、もしくは不完全な頭蓋、さらに部分的な体の骨が発見されている。最大の頭蓋は1.94mの長さで、上腕は71cm、脛骨は61cmある。これらから、体型が同じだったとして、C. russelliC. belliよりも大型であったと考えられる(全長5.7m6.9m)。Lehman1998)はC. russelliC. belliのシノニムではないかと言ったが、とりあえず両者は別種であるとの立場で話を進める。

カナダ西部のManyberriesRed Deer RiverDinosaur Park Formationから見つかっている。

@ フリル後端は、左右それぞれにアーチを描く。

A 両サイドのアーチに、それぞれほぼ同サイズの3つの縁後頭骨。

B 鱗状骨も頭頂窓の枠を構成する。

C 前上顎骨に外鼻孔前部の縁。

D 上眼窩角は反り返り、おそらく長さが性差を表す。

NMC 8800;タイプ標本。上顎を欠く頭蓋

NMC 2280;完全な頭蓋

NMC 41933;フリル端のみ

TMP 83.25.1;部分的頭蓋

AMNH 5656

 

NMC 8803;副模式標本。頭頂

TMP 81.19.175;部分的頭蓋

C. russelliかどうかはまだ疑わしい。

CHASMOSAURUS species indeterminate

以下の標本は、Chasmosaurusとされているものの、断片的で種がはっきりとしていないものです。

NMC 8801;頭蓋、下顎、その他。C. russelliの副模式標本。

NMC 8896;頭蓋の右側を含む部分的頭蓋。まだクリーニングの段階で、Chasmosaurusと断定はできない。

BMNH R 4948;バラバラの頭蓋と体部。

NMC 8802;バラバラの部分頭蓋、で下顎のみ健在。C. russelliの副模式標本。フリルが出ないことには断定はできない。

TMP 79.11.147;部分頭蓋。

TMP 82.16.22;クリーニング待ち。

UAVP 40;ほぼ完全な頭蓋。

さらに、以下の骨は角芯単独で発見されたもので、とりあえずChasmosaurusと分類されたものです。

上眼窩角;NMC 0186NMC 0275NMC 0837NMC 0838NMC 0841NMC 9808NMC 9809TMP 67.17.5TMP 79.14.813TMP 79.14.814TMP 81.16.284TMP 81.16.499TMP 81.23.24TMP 88.36. 50

鼻角;NMC 0837NMC9676TMP 79.14.346TMP 79.14.347TMP 81.16.374TMP 81.26.3

その他の頭蓋パーツが見つかっているもの。

フリル;TMP 81.18.231TMP 81.30.1TMP 82.16.215

以上の3種のChasmosaurusについて、いずれも76.5Ma74MaDinosaur Park Formationから出てきており、それ以前のOldman Formationからはこれっぽっちも出てくることはありません。さらに、Dinosaur Park Formationの中で、古い順に、C. russelliC. belliC. irvinensisとなっていて、3種の時代が重複しているといった証拠はまだありません。いまのところの化石記録としては、250万年の間で、3種のChasmosaurusが入れ替わり立ち代り消えては出てを繰り返したということを示しています。

Dinosaur Park Formationは、Judith River層群の最上部にあたります。淡水成で、河川、河口、氾濫原、湿地、沼地などの堆積物でできています。Oldman Formationでは北東に流れていた河川でしたが、Dinosaur Park Formationになると、南東に流れていたことが判っています。当時は暖かく湿気もあり、雨季にはモンスーンが海岸平野を襲ったと考えられています。これより上位のBear Pow Formationになると、浅海成の堆積物になり、海進によってアルバータが海中に没したことが判っています。

Texas Species of Chasmosaurus

一通りカナダのChasmosaurusを述べてきたので、次にテキサスで見つかったChasmosaurusの話をします。

先程述べるのを忘れましたが、白亜紀末期の北米における恐竜の動物相は南北で様相が違っていました(Lehman, 2001)。この頃(Judithian80Ma74Ma)の北米は類稀なる海進によって東西に分断されていましたが、その西側のLaramidia大陸にのみ、CERATOPSIDAEは棲息しておりました。しかし、南北に長い大陸ゆえ、動物相の緯度変化が生じ、また種数も豊富で空きニッチェがなく、南北の生態系が交わることはなかなかありませんでした。この南方生態系に属する角竜は、Pentaceratops sternbergi、それから、Chasmosaurus mariscalensisでした。白亜紀末期になって、Torosaurusだけが南北地域を股にかけて棲息しておったようです。要は、北のカナダ産Chasmosaurusとは、まるで棲息環境が異なっていたということです。具体的には、北方生態系は温暖湿潤な森林Aquillapolinites優勢な植物相が広がり、南方生態系は温暖で冬湿潤な低木林Normapolles優勢な植物相であったということだそうな。

CHASMOSAURUS MARISCALENSIS Lehman, 1989

カナダのChasmosaurusとは遠く離れたテキサスのAguja Formationの上部で見つかった(75Ma72Ma)。当時のテキサスは湿地帯で、ハドロサウルス類のKritosaurusやワニのDeinosuchusもともに産する。種名は、発見されたMariscal Mountainsにちなんで付けられた。

特記すべきこととして、1)様々な成長段階の1015個体からなるボーンベッドが見つかったこと、2)完全な頭蓋(TMN 43098-1)が見つかったこと、が挙げられる。この大人の個体は、縁後頭骨が鱗状骨に10個と、ケラトプス科を通じて最多。頭蓋の長さは152cm、上眼窩角が49cm。また、別の場所から発見された肋骨のサイズから、C. belliと比較して、全長3.12m5.04mと推定される(Dodson, 1996)。

この種は、Chasmosaurusとしては最も原始的で、Pentaceratopsと類似する特徴がいくつも挙げられる。

@ 前上顎骨と鼻骨の境界に、指状の突起がある。

A 大きな頭頂窓がある。

B 頭頂骨の後端の縁が「U」字型に凹んでいる。

Chasmosaurus mariscalensisPentaceratopsはだいたい同時代に棲息していたが、互いに最も近縁なわけではない。このことは、後期白亜紀の北米で、角竜が複数回北から南へと移住していったことを示すのかもしれない(Lehman, 1989)。

さらに、C. mariscalensisは、性差の研究もなされている。その鱗状骨は、幅のある縁後頭骨とともに丸く広がっているものと、細い縁後頭骨を伴った細長いものとがある。さらに、上眼窩角は、成長とともに、上方に真っ直ぐ伸びるようになる。上眼窩角には性差と見られる二型がある。ひとつは、眼窩の前方から角が伸びて、前方、側方、上方にカーブしながら伸びるタイプでこれはメスと考えられる。もうひとつが、眼窩の直上からより真っ直ぐに、広角に上に伸びていく角で、これはオスと考えられる。

@ 中サイズのChasmosaurus

A 長く広い、背方に曲がる、後方に突出したうねりをもち、610個の縁後頭骨をもつ鱗状骨。他のChasmosaurusよりも背方に曲がる。

B 細長い、真ん中が「Y」字型に凹んだ頭頂骨の後端。非常に大きな三角形の頭頂窓を閉じている。

C 鼻骨の前半部は、前上顎骨を分けている。非常に大きく後方にカーブした上眼窩角が眼窩の真上に来る。

UTEP-P.37.7.086;脳幹、左半分の頭蓋。タイプ標本。

TMM 41838

TMM 42534

TMM 43098-1;ほぼ完全な頭蓋。

Taxonomic History of Pentaceratops

ではいよいよPentaceratopsの話に移りましょう。究極の頭デカ男君で、ほぼ全身の骨が出揃っております。こいつも、Chasmosaurus mariscalensisと同様、テキサス産です。北米西部のLaramidia大陸の南方生態系の構成員だった数少ない角竜種です。南方で見つかっているのは、Chasmosaurus mariscalensisPentaceratopsTorosaurusと、意外と少ないのです。Torosaurusはカナダにも分布し、角竜としては異例なほど広域的な分布を示しましたが、C. mariscalensisPentaceratopsは南方に特殊化していたと考えられます。テキサス産角竜はLehmanが精力的な研究をおこなっております。

今度はPentaceratops用の略号を書いておきます。AMNH;アメリカ自然史博物館、BSP;バイエルン国立古生物地球史博物館、CM;カーネギー博物館、FMNH;フィールド自然史博物館、LACM;ロサンジェルス自然史博物館、MNA;北アリゾナ博物館、NMC;カナダ自然博物館、OMNH;オクラホマ自然史博物館、PMU;アップサラ大学古生物学会、ROM;ロイヤル・オンタリオ博物館、SDSM;サウスダコタ鉱山学校、TMP;ロイヤル・ティレル博物館、UAVP;アルバータ大学、USNM;自然史博物館、YPM;ピーボディ博物館。

Systematic Paleontology

CERATOPSIA Marsh, 1888

NEOCERATOPSIA Sereno, 1986

CERATOPSIDAE Marsh, 1888

CHASMOSAURINAE Lambe, 1915

Genus PENTACERATOPS Osborn, 1923

Pentaceratopsは大型のカスモサウルス亜科で、上部白亜系北西ニューメキシコ・San Juan Basin地域のFruitland FormationKirtland Shale Formationから出ます。棲息していた年代は、Campanian後期からMaastrichtian前期にかけて(7275Ma)。

その名の由来は、非常に発達した頬骨を角に見立て、上眼窩角、鼻角とともに「五本」の角を表す”penta”と、角竜によくつけられる”ceratops”をくっつけたものです。Pentaceratopsの頬角は他の角竜類と見比べても、120mmに及ぶほど極めて大きなものでした。この頬角は外側後方に向いていました。生きていたときはきっとケラチンで覆われていたと思われます。

大型…というよりも、最大級の角竜です(とくに頭が)。1941にほぼ完全な骨格(OMNH 10165)が見つかり、吻先からフリルの端まで3m近い長さの頭骨でした。この頭骨は知られている限り、過去を通じて史上最大の陸生動物の頭骨化石です。この個体は、おそらく全長6.8mほどはあったろうと予想されます(尾椎の一部が失われている)。腰までの高さが2.5m、体重9.877tに達したろうと計算されています。上眼窩角の長さは真っ直ぐに測って90cm、長さ全体をエッジで測ると、106cmになり、基部には空洞がありました(Triceratopsにもその存在が知られている)。他の個体はやや小さく、頭骨のサイズが2m2.5mの範囲に収まりますが、幼体の頭蓋化石は見つかっていません。

Pentaceratopsのフリルは大変細長く、1.5mに達します。幅は1mほどです。数多くの縁後頭骨を頭頂骨にもちます。その大きさにもかかわらず、フリル自体はとても薄いものでした。とくに、鱗状骨は平均で10mmといった厚さで、縁の方にいくと25mmまでになります。頭頂骨の表面は非常に血管系が発達していた痕が残っています。フリルの形態はAnchiceratopsChasmosaurusの中間形態のように思われます。

PentaceratopsChasmosaurus mariscalensisと同時代に棲息していましたが、ともにカナダ産のChasmosaurusとの関係は取りざたされております。北部から南部への進出は1回だったのか、2回に分けておこなわれたのか、今後の系統解析の研究が待たれます。

Pentaceratopsの骨格の話に移りましょう。こいつの頭は体に比べて極端にデカイです。一方でその尾はChasmosaurusTriceratopsといった他のCHASMOSAURINAEと比べて短くなっています。全体的な姿形はずんぐりむっくりといったところでしょうか。橈骨長/上腕骨長比と脛骨長/大腿骨長比を比較したところ、Triceratopsよりもむしろ原始的なProtoceratopsに近い値が得られています。つまり、四肢の長さに対して、上腕、または大腿の占める割合が大きいということです。具体的には、橈骨長/上腕骨長比がPentaceratops0.630.67Triceratops0.500.58。脛骨長/大腿骨長比がPentaceratops0.720.74Triceratops0.620.66Anchiceratops0.69Chasmosaurus0.70という値が得られています。

Pentaceratopsの後肢は真っ直ぐ立っていたように見受けられますが、前肢は多少広げていたと考えられます。肩関節での上腕骨の前後動は、烏口骨の鉤状隆起と肩甲骨の関節上隆起によって制限されていました。上腕骨頭は上腕骨の後ろ側についており、真っ直ぐに肩に関節していたわけではなさそうです。烏口骨の鉤状隆起はしわしわで、胸骨と強固に接しており、烏口骨と肩甲骨は強固に骨化していました。このことは、Pentaceratopsが非常に強固な肩帯を持っていたが、急速な動きには適していなかったことを示しています。肘頭は発達していましたが、上腕骨には腕を十分に伸ばしたときに尺骨と橈骨が上腕骨が関節する顆の後ろに下がるための孔がありませんでした。これらの特徴から、肘関節は曲げていたと考えられます。

Pentaceratopsの脊柱の構造は、頭で儀式的な闘争をするのに耐えうるように特殊化していました。頸椎や胸あたりの脊椎は、腰のあたりの脊椎よりも上下方向の自由度が高く、また、胸や腰のあたりの神経棘は非常に高くなっており、前後動による衝撃を減じるようになっていました。この特徴は、他のCHASMOSAURINAE、例えばTriceratopsChasmosaurusのような種では見つかっていません。長く伸びた神経棘にはより多くの筋肉が付着していました。この構造は、上下の回転モーメントの力が肩のあたりの神経棘で最もしっかりと支えられるような構造で、現生のアイベックスのようなレイヨウ類の雄の優位を頭の角と角を絡めて競うようなものに見られる特徴と一緒です。強力な肩帯、長い神経棘、左右に少し広げられた前肢などの構造は、Pentaceratopsが頭を突き合わせて闘争していたことを示すのではないでしょうか。この動物の重心は腰よりもだいぶ前にあり、おそらく後肢で立ち上がるのは無理だったろうと考えられます。

Chasmosaurusのところで述べたように、鼻の周辺の骨は非常に特殊化していました。頭部前方の骨の表面は生前、頑丈な皮膚で覆われていたであろう粗い面をしていましたが、鼻孔は厚く柔らかい組織で覆われていたと想像させるほど滑らかな面をしています。そこには、前上顎孔などのような様々な構造が見られ、分泌腺や口腔につながる鼻腔が収まっていました。嗅覚、もしくはヤコブソン器官が発達していた可能性もあります。このような器官は、現生のカバのように尿によってコミュニケーションを図る動物に見られます。

外鼻孔は嘴の近くにあって、呼気が前上顎骨孔を通過しただろうと想像されます。鼻孔全体が広く、この動物にとって嗅覚が大事だったことが判ります。鼻腔は外皮で覆われ、この動物が(いなな)くことによってコミュニケーションを図っていた可能性もあります。

Pentaceratopsの歯の構造や頬袋の存在から、飲み込む前に噛んでいたと考えられますが、二次口蓋によって、噛んでいる間も呼吸ができたと考えられます。

Characteristic of Genus

すべてのPentaceratopsの頭蓋(7標本)はニューメキシコのSan Juan地域に流れるChao River沿いの30km以内の地点で見つかっています。ここから発見される個体は、縁後頭骨の数、上眼窩角の向きと根元の位置、鼻角の長さと形態、眼窩前の顔の長さ、下側頭窓のサイズ、上眼窩角の基部に洞の有無、頬骨の向き等、さまざまなバリエーションに満ちています。これらの形質は、地域的に見ても、時代的に見ても、おそらく種内変異の範囲に収まり、現在では多くの古生物学者がP. fenestratusP. sternbergiiのシノニムだと考えてます。P. fenestratusの特徴として挙げられているのは、@鱗状骨孔、A縁後頭骨の数が多く形も尖っている、B上眼窩角の位置が、眼窩に比べて後ろにくる、C頬角が短く、外側前方を向く、D鼻角が長く、後方に位置する。Lehman1993)はCHASMOSAURINAEを幅広く研究し、吻骨の長さと前上顎骨の構造、角の位置と長さや角度、フリルの形態などがPentaceratopsでは同一種内の変異であることを示しました。

PENTACERATOPS STERNBERGII Osborn, 1923

@ 大型のカスモサウルス亜科。

A 鱗状骨が長く真っ直ぐで、810個の縁後頭骨をもち、癒合の程度は様々である。

B ストラップ状の細長い頭頂骨縁は中央で深く凹み、頭頂窓は広い。

C 頭頂骨の後側に2対の大きな縁後頭骨がある。

D 頭頂骨の後側中央背側に2つの縁後頭骨が前方を向いている。

E 後方にカーブした大きな縁後頭骨。

F 眼窩の直上に前方にカーブした大きな上眼窩角。

G 顔は細長く、外鼻孔を構成する前上顎骨の後ろ側に指上の突起がある。

Pentaceratopsの標本は、Fruitland Formationとその上のKirtland Shale Formationから出土します。

Pentaceratops sternbergii

Fruitland Formationから産出;

AMNH 6325;タイプ標本。フリル後端の欠けた頭蓋

AMNH 1622;フリルのない頭蓋

AMNH 1624;フリル後端のない頭蓋

AMNH 1625;フリルの後端

MNA Pl. 1747;頭蓋、下顎、脊椎、肋骨

lower Kirtland Shaleから産出;

PMU. R200P. fenestratusのタイプ標本。頭蓋

UALP 13342;フリルのない頭蓋

UKVP 16100;頭蓋

OMNH 10165;ほぼ全身骨格で史上最大の頭蓋標本だが、詳しい産出層は不明

Pentaceratops. sp.

Fruitland Formationから産出;

MNA Pl. 1668;鱗状骨、下顎、脊椎、肋骨、前肢

OMNH 10165;部分的頭蓋、体部の多く

Kirtland Shaleから産出;

PMU. R268;下顎、ほぼ完全な体部の骨格

UNM B-1701;脳幹、上顎

UNM FKK-081;頭蓋断片、肩甲烏口骨、脊椎

USNM 12002;鱗状骨

USNM 12741;上眼窩角、脳幹

USNM 12743;上眼窩角、鱗状骨

? Pentaceratops. sp.

Fruitland Formationから産出;

UNM B-810a;前歯骨

YPM 1229;脊椎、肋骨、前肢の一部、腸骨

Kirtland Shaleから産出;

UNM B-513;脳幹

UNM FKK-035;鱗状骨、頭頂骨の一部

USNM 8604;頭頂骨の中央部分

系統解析

さて、ChasmosaurusPentaceratops、近い近いといわれても、どれだけ近い関係にあるのか…。過去の系統解析を紹介してみましょう。種レベルの系統解析…実はこれまであまり例がないのです。

まず、Forster et al., 1993C. belliC. russelliC. mariscalensisPentaceratopsを含んだ5つのタクサを9つのキャラクターで解析したものです。これによると、Chasmosaurusは単系統群で、C. belliC. russelliが姉妹群とされています。次に、Lehman, 1996C. mariscalensisC. belliC. canadensisC. mariscalensisPentaceratopsを含んだ9つのタクサを14のキャラクターで解析。これによると、Chasmosaurusが側系統群だとされています。実際のところ、どうなんでしょう?

角のサイズや角度、縁後頭骨の数等、角竜は個体差が激しいと考えられ、これまで様々な種が実は別の種のシノニムであったとされた例があります。よって、種を特徴づける形質は慎重に選ぶ必要があります。とりあえず、ここではC. belliC. irvinensisC. russelliC. mariscalensisP. sternbergiiを有効な種として話を進めることにします。Holmes et al., 2001C. irvinensisの記載にあたり、種間関係を調べました。用いたのは6つのタクサ、30の頭部形質です。上記の5種以外のタクサには「その他のカスモサウルス亜科(AnchiceratopsArrhinoceratopsDiceratopsTorosaurusTriceratops)」があります。

PAUP 3.50なるソフトで解析をおこなったところ、3パターンの系統樹が描かれました。とは言っても、各タクサの位置づけはほぼ決まっていて、C. mariscalensisただ1種だけがその位置づけが決まっておりません。ひとつは、Pentaceratopsの姉妹群という結果。もうひとつは、(C. russelli (C. belli + C. irvinensis))と姉妹群という結果。さらに、(Pentaceratops (C. russelli (C. belli + C. irvinensis)))と姉妹群という結果。C. mariscalensisPentaceratopsはその他の多くのケラトプス類とは異なるLaramidia大陸南方生態系に属しておりまして、彼らがいつどのように北から南へと進出し、またその進出が何回の工程を経て生じているのかを知るのに大きな手がかりとなるはずなのです。しかし、いまのところC. mariscalensisの位置づけははっきりとしていませんね。果たして、C. mariscalensisPentaceratopsは南へと進出してから分かれた系統なのか、それともそれぞれ別々の経路から北から南へと下っていったのか…。興味深いです。今後の研究が待たれます。

さて、いずれの解析においても、2つの明確なキャラクターによって、C. belliC. irvinensisが姉妹群であることを支持しています。その2形質は次のものです。

@ 頭頂骨の最後尾の部位は鱗状骨との境界である。つまり、頭頂骨の後端中央部はやや凹んでいるものの、フリルの角っこにまで鱗状骨が伸びているということですね。この外群では、鱗状骨と頭頂骨の境界よりも、頭頂骨の中央側が後方にせり出しています。

A 頭頂骨の後端バーの中央部の縁後頭骨はコブ状で、隣接する縁後頭骨と根元で癒合する。大雑把な表現だが、他のケラトプス類ではこれが起こっていません。

さて、次の単系統群(C. russelli (C. belli + C. irvinensis))はどうかというと…4つのキャラクターによって特徴づけられておりますが、うち、確実といえるのは次のひとつです。これらは全てカナダ産のChasmosaurusですね。

@ 頭頂骨中央のバーの上下の厚みが高い。つまり、断面をとると、上下方向に高い長方形になります。このバーの頭頂窓側の面は、上側頭窓からの血管系で深く切れ込んでいる。ProtoceratopsC. mariscalensisPentaceratopsとその他のケラトプス科では、頭頂骨中央バーは上下に潰れ、後方に行くに従って細くなり、断面は鈍角三角形です。

さて、以下の2キャラクターはセントロサウルス類と共有しています。

A 上眼窩角が瘤状になっているか、まったくなく、その表面には融食孔がある。つまり、上眼窩角が小さいか、ない状態で、その上にブツブツがあるということ。このようなブツブツは、C. mariscalensisPentaceratopsのような角のよく発達した種にはありません。

B 頬骨の下側頭縁があり、鱗状骨の頬骨稜が下側頭窓の背側を構成する。原始的な形質としては、鱗状骨と頬骨は、下側頭窓ではつながりません。C. belliC. russelliでは、つまみ状隆起が頬骨の後端縁から伸び、鱗状骨の頬骨稜まで達しています。それらはともに下側頭窓の背側縁を構成します。C. irvinensisでも、頬骨は下側頭窓の下で鱗状骨と接します。C. mariscalensisや他のカスモサウルス亜科には、頬骨の下側頭窓縁はありません。

そして、次のキャラクターはProtoceratopsと共有しており、一度失われた形質が再び出てきたと考えられます。

C 頭頂鱗状骨からなるフリルの最大横幅は、眼窩幅の2.5倍以上。ProtoceratopsC. belliC. russelliNMC 41357のフリルは三角形で眼窩幅の2.5倍以上の幅があることで特徴づけられます。C. mariscalensisでは、この形質は十分ではありません。他にはTorosaurusが大きなフリル幅を持ってますが、他のケラトプス類ではフリル幅が眼窩幅の2倍を超えることはありません。

次に、PentaceratopsChasmosaurusの共有派生形質は実に8つもあり、うち2つがやや不確かといえますが、両種が姉妹群であることはほぼ確実といえます。Dodson & Currie, 1990でもPentaceratopsChasmosaurusが姉妹群であるとされ、それはAnchiceratopsクレードと(Triceratops (Arrhinoceratops + Torosaurus))クレードの間に位置づけられております。

@ 前上顎骨の隔縁が存在。中隔縁は鼻柱後端の薄い骨の層で、全てのChasmosaurusPentaceratopsに存在します。他のカスモサウルス亜科やセントロサウルス亜科にはありません。

A 前上顎骨の後部腹側が二股に分かれている。Protoceratopsやセントロサウルス類、その他のカスモサウルス亜科では、前上顎骨の後部腹側の突起はひとつだけです。ChasmosaurusPentaceratopsでは、この突起が遠位方向に二股に分かれています。うち、背側の大きい方の突起は鼻孔内へ延び、小さい方の突起は鼻骨と前上顎骨を関節します。

B 前頭葉の泉門は上から見ると鍵穴型である。全てのセントロサウルス亜科では、前頭葉泉門は細長く延び、サイドは前頭葉の間で平行になっています。カスモサウルス亜科では多様化していて、ChasmosaurusPentaceratopsでは、前頭葉泉門は前後方向に延びてはいるが、前方が広がった鍵穴型をしています。他のカスモサウルス亜科は楕円か円形の前頭葉泉門をしている。

C 頭頂骨の頭頂窓直後の後端バーの幅が比較的狭く、前後幅が後端バーの長さの0.1倍以下。ChasmosaurusPentaceratopsでは、頭頂窓の後のフリルのバーが非常に細くなっています。一方、その他の角竜類では、頭頂骨の後端バーの前後幅は、その左右幅の0.2倍以上となってます。

D 頭頂骨の中央バーの幅が前後長に比べて0.10倍以下。ChasmosaurusPentaceratops2つの頭頂窓に挟まれた中央バーも極めて細くなっています。ただ、フリルが短くなったC. irvinensisは相対的に幅広くなっています。他の角竜類では、頭頂骨中央バーの幅は広く、中央バー前後長の0.15倍以上となります。

E 頭頂窓の側方縁は頭頂骨だけではなく鱗状骨からも構成。Protoceratopsやその他のケラトプス科は、頭頂窓の側方縁は頭頂骨だけで構成されます。しかし、C. belliC. russelliC. irvinensisPentaceratopsの幾つかの標本では、頭頂骨は頭頂窓の側方で不連続となります。この形質には個体差があったかもしれません。これはC. mariscalensisでは知られていません。

それから、次の形質は、ChasmosaurusPentaceratopsだけの形質だけというわけではありません。

F 前上顎骨の後方腹側の後端突起が鼻骨に陥入。原始的形質では、前上顎骨の後方腹側突起が鼻骨に陥入し、かつその突起が鼻骨に囲まれます。前上顎骨の形態は変化しているものの、この形質はChasmosaurusPentaceratopsでも保持されています。その他のケラトプス科では、その突起は前上顎骨と鼻骨の間に位置します。

G 頭頂窓の近位遠位直径が頭頂骨全体の長さの45%以上。C. belliC. russelliPentaceratopsなどの頭頂窓の大きな種では、頭頂骨の45%以上の頭頂窓直径があります。しかし、C. irvinensisでは38%しかありません。その他の角竜類では、その値は40%以下となっています。C. mariscalensisでは値は得られていませんが、大きな頭頂窓を持っていたことは確かです。

Holmes et al., 2001では、データの不足から、C. mariscalensisの位置づけはまだ断定するには早いとしています。可能性として、3つの系統樹が描かれることは先ほども述べました。APentaceratopsの姉妹群、B(C. russelli (C. belli + C. irvinensis))と姉妹群、C(Pentaceratops (C. russelli (C. belli + C. irvinensis)))と姉妹群の3つです。

BC. mariscalensisとカナダ産Chasmosaurusを姉妹群としたとき、それらだけに共通する形質は次のひとつだけです。

@ 前上顎骨中隔縁が鼻柱の後側全体に渡る。この形質はChasmosaurusと名のつく全ての動物に共通です。Pentaceratopsでは、前上顎骨中隔縁が鼻柱の腹側半分に限定されます。

ほかにも、Chasmosaurusとされる種に存在し、Pentaceratopsにない形質もあります。

A 鼻角の位置が外鼻孔の後方。プロトケラトプス類では、Bagaceratopsを除いて鼻角はありません。Montanoceratopsで鼻角とされたのは頬骨です。このBagaceratops、セントロサウルス亜科、C. belliC. russelliC. irvinensisC. mariscalensisAnchiceratopsは鼻角が外鼻孔の真ん中より後ろ側につきます。その他のカスモサウルス亜科は鼻角が外鼻孔の真ん中より前方に位置するようになります。

B 上眼窩角が後方にカーブする。Zuniceratops、セントロサウルス亜科、C. belliC. russelliC. mariscalensisの上眼窩角は後方カーブします。C.irvinensisでは上眼窩角が瘤状になっているため、この形質は当てはめてありません。Pentaceratopsを含むその他のカスモサウルス亜科は、上眼窩角は前方カーブになります。

その他の可能性としてACがありますが、動物地理的に見て、北米西部のLaramidia大陸の南北生態系双方に進出した角竜の例は白亜紀末のTorosaurusしか知られておりません。属レベルでこれほどの広範囲な分布をChasmosaurusが持つことは可能だったのでしょうか? 素直に、南方生態系に進出したグループがPentaceratopsC. mariscalensisに分かれたとする方が自然かもしれません。Holmes et al., 2001での解析はあくまでC. irvinensisの系統的位置付けをおこなうためのもので、C. mariscalensisの系統解析についてはそれ相応の形質を選び出す必要があります。