北海道・知床へのオオカミ導入について
生態系保全をめぐり北海道・知床と米国イエローストーン国立公園によって、昨年札幌で国際哺乳類学会議が開かれた。「オオカミ論争」は、米側による再移入の提案に日本側が「野生動物管理の改善こそ先決」などと反論し、議論は平行線のままである。
知床の生態系復元に取り組んでいる「しれとこ100平方メートル運動地森林再生専門委員会」は98年からオオカミ導入の可能性を検討。日本オオカミ協会も、増えすぎたエゾシカ問題を解決する為に、オオカミを復活させるよう環境省や北海道、
今春出た知床財団の報告集「世界遺産 知床とイエローストーン」によると、イエローストーンでも昔は肉食獣を駆除し、オオカミは1926年に絶滅した。しかし、95年〜96年に大型のシカ、エルクを減らす効果などを期待し、オオカミ計31頭をカナダから連れてきた。オオカミは現在約180頭に増え、公園北部のエルクは約17000頭〜10000頭未満に減った。河畔林が回復し始め、野鳥やビーバーも増えた。カリフォルニア大のデール・マッカロー名誉教授は「イエローストーンの経験で知床に生かせるもの」として、オオカミの試験的導入を提案した。
北海道のエゾオオカミは1890年(明治23年)までにいなくなった。エゾシカは最近になって増え、知床に10000頭いる。森の木々は枯れ、草原植生などに影響が出ている。だが、東京農工大の梶光一教授は「オオカミ復元は、実現性を考えると現実的ではない」との意見だ。イエローストーンには公園管理にかかわる人が885人いるが、知床は環境省からNGOまで入れて70人ほど。そんな米国もオオカミについては10数年かけて議論した。
知床財団の山中正美・統括研究員は「本来の自然を回復させる意味ではオオカミも必要だが、立ち遅れた野生動物管理システムの改善が先決だ。それが実現して、初めて再導入の土台ができる」という。
2006年5月26日 朝日新聞夕刊より