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170 :会員番号93 :02/07/20 19:52 ID:2Ua79V7m
裏海原タン・現る
『ミンダンとソーレン-地獄から来た少女-』
「もう止めようよ!折角友達になったのに、どうしてボク達が争わなきゃいけな
いの!私達……、同胞じゃない!」
必死の呼びかけを無視していた裏海原タンだが、『同胞』という海原タンの言葉を聞
いた途端、激しく柳眉を釣り上げる。
「うるさいうるさい!!イルボンとヌルい同盟関係にあるような南に何が解る!ウリ
ナラでは毎年何万人もの餓死者がでているんだぞ!そうまでして闘っている私達
と、イルボンからの援助で潤っている南が同胞な訳がない!南などウリナラではな
い!」
「北だって援助されてるニダ……」
檀君の指摘はもっともだったが、『餓死者の有無』という重い現実が海原タンの心
を抉り、北と南の、即ち目の前の少女との距離が絶望的に離れていることを思い
知らされる。
「そんな……、ウリナラは一つ。ウリナラは一つであるべきなのに……」
「黙れ!!拝金主義者の片割れめ!氏ね!!」
「ヒカル!危ないニダ!!」
裏海原タンが放った赤い札、人間一人を消滅させる恐怖のキムチカードが海原タン
に迫る。しかし放心状態の海原タンはその場を動こうとせず……。
「ヒカル!!」
「……!?」
キムチカードは確かに炸裂した。しかし海原タンは自分が消滅していないことに気
付き、寸前、目の前に立ちはだかった人影に目をやる。
「情けないねぇ……、ヒカル」
「……柳原お姉さん!?」
裏海原タンとの間に割り込み、海原タンを守ったのは柳原だった。柳原はキムチカー
ドが作り出す空間に飲み込まれながらも、いつもの強気な笑みを崩さない。
「どうして……!」
柳原は海原タンの頬に手をやり、いつの間にか流れ出ていた涙を拭う。
「あんな奴のために泣くんじゃないよ。ヒカル。あんたにだって闘う理由がある。
あんたにだって、何かを傷付けてでも守らなきゃいけない物があるだろう?」
「どうして!?ボク達いつも喧嘩ばかりしてきたのに……!いつもいつも喧嘩ばか
りだったのに……!!」
泣きじゃくる海原タンをみて、柳原は満足げに微笑む。消滅しかけた腕で優しく抱
きしめた。
「そうだよ。ヒカルは私のためにだけ泣いていればいいんだ。いいかい?二度と
他の理由で泣くんじゃないよ……?」
最早言葉らしい言葉もでない海原タンだが、柳原の問いかけにだけははっきりと頷
ずく。
「……いい娘だね。憎さ余って可愛さ半万……」
最後に口付けをしようとし……柳原は消えた。
「ええい!茶番はヤメロ!」
裏海原タンは一瞬、海原タンを守る柳原の姿に魅入ってしまった自らの感情をねじ伏
せるように叫び、再びキムチカードを放った。
「ニダ!ヒカル!今度こそまずいニダ!!」
海原タンが、裏海原タンをきっと見据える。涙は不思議と止まっていた。
「……!!!?馬鹿な!」
海原タンは一歩も動かない。しかしキムチカードは目的を果たすことなく消滅し
た。海原タンのカードに相殺されたのだ。
「奴の手札にはもうキムチカードは残っていない筈!チョッパリカードでどうや
って……!!まさか……!?」
「ひかるちゃん……。ボク、ひかるちゃんと友達になりたかったけど、もう、駄
目みたいだね」
「ヒカル!チョッパリカードを二枚同時に使ってるニダ!?確かにこれならキムチ
カードにも対抗できるニダ!!でも、そんな使い方をしたらヒカルの身が持たない
ニダよ!」
「ひかるちゃん……。ボク、君のこと好きだけど、赦さないから」
「くっ!」
再び放たれるキムチカード。しかしそれも虚しく消滅する。
「絶対に……、絶対に赦さないから!!」
「くそっ!くそっ!くそっ!」
裏海原タンのキムチカードも遂に最後の一枚が相殺されてしまった。チョッパリ
カードは大量に持っているが、同時に複数のカードを操る海原タンにはどうあが
いても勝ち目はない。
「……」
無言の海原タンが二枚のカードを放つ。裏海原タンはチョッパリカードを防御に回
すが、当然そのうち一枚は裏海原タンに直撃する。
「うあっ!」
チョッパリカード。別名半殺しカードとも呼ばれるこのカードは、一撃で消滅こ
そしない物の、激しい衝撃で相手の戦意を奪う。二枚目を喰らえば、キムチカー
ドと同じく消滅してしまう。裏海原タンも流石に耐えきれず、片膝をついた。
海原タンが最後のカードを構える。絶対的な死の恐怖。……しかし、海原タンはゆっ
くりとカードを下ろした。やはり海原タンには人を消滅させることなど出来はしな
いのだ。
「……もう止めようよ。こんな事……」
「……私に情けを掛けるつもりか?」
荒い息を吐き出した裏海原タンの瞳に、これまで以上に深い憎悪が浮かんでいた。
「ニダ?まだ何かやる気ニダ!?」
「赦さないと言ったのに?絶対に赦さないと言ったのに?」
「もう止めようよ。こんなのおかしいよ……」
「……!!……ミンダン!!ソーレン!!」
再び立ち上がり、叫ぶ裏海原タン。その呼びかけに応え、二匹の使い魔が現れる。
「……何!?」
「ニダ!!?その魔法はウリジナルの……、しまったニダ!!この橋は!!」
激しい震動。
「檀君!何が起こってるの!?」
「ヒカル!逃げるニダ!裏海原はウリ達を巻き添えに死ぬつもりニダ!この橋は崩
壊するニダ!!」
「え?だって、この橋は開通してからまだ半年も……」
「そんな事は関係ないニダ!あの魔法はウリナラ製の巨大建造物を崩壊させる究
極魔法ニダ。しかもこれを北がやれば、その破壊力は想像もつかないニダ!」
「自分も死んじゃうって、ひかるちゃんはどうしてそんな魔法を……!?」
「しかし心配するなニダ。この魔法の起源は当然ウリナラのものであり、これを
パクった北には謝罪と賠償を……ヒカル!?」
檀君の話を最後まで聞かず、海原タンは駆け出していた。檀君が指さす方向とは正
反対に……。
「ヒカル!!!!」
巨大な橋に響く不自然な震動。崩壊はもう始まっていた。もうすぐ何もかも消え
て無くなる。
「そうだ、何もかもなくなったしまえばいいんだ……」
「駄目だよ!そんなの絶対に駄目!」
「……ヒカル。……何をしに来た?逃げないのか?」
裏海原タンは海原タンが目の前に現れることを知っていたかのように落ち着いていた
が、絶望に閉ざされたその瞳の色が変わることはない。
「どうして、どうしてひかるちゃんはそんなに簡単に殺したり、死んだり出来る
の!?そんなのおかしいよ!」
「おかしくはない。私はそういう世界で生きてきたんだ。主席の期待を裏切った
私がこれ以上生きる必要はない。それにヒカル、お前は私がこれまで何人の人間
を殺してきたか、知っているのか?」
「!」
薄笑いをすら浮かべる裏海原タンに、再び心の距離を思い知らされる海原タンだが、
今度は言葉を止めない。
「ずるいよ、ひかるちゃん」
「ずるい?」
「学校で、みんなと一緒で、あんなに笑っていたのに、どうしてひかるちゃんは
自分ばかり傷付けようとするの?どうして自分から一人になろうとするの……?」
「……ヒカル」
全く自分とは違う価値観、しかし自分の物よりずっと魅力的な価値観を、これ程
強引に押しつけてくるこの少女は一体何者なのだろう?微かに目覚めた興味。し
かし……。
「ヒカル。お前は面白い奴だな。しかし……、手遅れだな」
瞬間、橋の崩壊は決定的な物となる。
「ひかるちゃん!!」
崩壊した破片と共に落下する二人。その中で海原タンは必死に裏海原タンの手を取ろ
うとするが……。
「ヒカル!!」
「……檀君!?」
小さな羽を限界まで羽ばたかせ、檀君が海原タンを何とか支える。
「待って!まだひかるちゃんが……!」
「無理ニダ!ウリには二人も支えられないニダよ!諦めるニダ!」
「待って!まだひかるちゃんは……!!」
滑空する海原タンと落下する裏海原タンの距離が絶望的に離れてゆく。裏海原タンが微
かに微笑み、何か言葉を発しかけるが……。
全ては、轟音に掻き消された。
「ヒカル……。元気出すニダよ。新しい橋はチョパリに造らせればいいニダ」
崩壊した橋をいつまでも見つめる海原タンの後ろ姿に、檀君が声をかける。
「生きてるよ……」
「ニダ?」
「ひかるちゃんは、きっと生きてる」
「ヒカル……」
「それに、柳原お姉さん……」
微かに漏れる嗚咽。
「檀君。ボク、今だけ泣いてもいいよね?柳原さんもその為になら泣いてもいい
って……」
「ニダ!?ひ、ヒカル……!?」
「檀君?」
檀君の驚いた声に振り返った海原タンだが、その視界は突然現れた大きな胸にふさ
がれた。
「わぷ!?」
「ああん、もう!可愛いことを言ってくれるねえ。さあ、ヒカルゥ。この私の胸
で好きなだけ泣くといいよ……」
「……って、柳原お姉さん!?」
突然現れ、海原タンを抱きしめたのは、海原タンをかばってキムチカードで消滅した
はずの柳原だった。
「どうして柳原さんが生きてるんですか!!」
「なによ、まるで生きてちゃ悪いみたいな言い草だねえ。キムチカードで戦線離
脱させられてたんだから、戦闘が終わるまで手が出せなかったんだよ」
「じゃ、じゃあ、キムチカードの『消滅』って、」
「ただの『戦線離脱』だったニダ!?」
「なんだ、あんたたち、今までキムチカードを使った事無いの?まあ、ただの強
制離脱だけじゃなくて、それからしばらく呪いで戦場に近付くこともできなくな
るんだけどね……それよりヒカル」
衝撃の事実に茫然自失な海原タンだが、柳原の艶めかしい声で我に返る。
「ねえ、さっきの続きしようよぉ」
「さ、さっきの続きって……?」
「だからぁ、キスしようとしたじゃない?ヒカルだってまんざらでもないって顔
してたし」
「そ、そんな、ぼ、ボク、ぼくは別にそんな顔は別に……」
「あ〜ら、赤くなっちゃって。可〜愛いんだぁ」
「ちょ、ま、ちょっと、やめて〜!」
「やれやれニダ。柳原は殺しても死なないニダ」
呆れ顔の檀君だが、その視線はやはり崩壊した橋に自然に行ってしまう。
「しかし、見事な崩壊っぷりニダ。北の魔法がこれ程の威力とは驚きニダ」
「あ、あうぅ、やめて〜!も、もう、いい加減に……」
「ヒカルが二枚のチョッパリカードを操れるようになったのは大した物ニダが、
これは、ヒカルにもウリナラの究極魔法を教える必要がありそうニダね。閣下に
許可を求めて……ニダ!!!?」
「あ」
海原タンが抵抗して投げたウリナラステッキが檀君の後頭部に直撃した。二頭身+
巨大な瘤で三頭身になった檀君がその怒気と共に振り返る。
「おまいら……、ウリに謝罪しる!!!!」
>終わり(ニダ、ウリは疲れ果てたニダ。謝罪と賠償はどこへ……?)