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289 :川瀬 ◆No212gxw :02/07/30 00:31 ID:+nyO/C3k
暗闇の向こう側6、<接近>
「お隣、よろしいかしら?」鈴が鳴るような響きの声
唐突に話しかけられ一瞬ディ−ドは身を硬くした、全く気配を感じなかったからだ
深夜2時、ビル街の隙間に隠れるようにあるBar「Pakuri-Nider」での出来事だった
声の主は黒髪を二つアップに纏め桜色のアオザイ風のドレスに身を包んでいる女性であった
テ−ブルの方にはちらほらと客はいるがカウンタ−には人はいない、
「向こうも開いてるだろ、あっちに行きな」相手を見ようともせず無視するようにグラスに口をつける
「一人で飲むのは寂しいのよ」構う様子も無くとなりに座った
憮然としながら煙草をくわえる、その様子を見て隣の女性はすっとマッチを擦り差し出す
居心地の悪さを感じながらもその火をつけた
このまま店を出ようかとも思った。しかし店内を見渡せるカウンタ−の角、そこはディ−ドにとってお気に入りの場所であった
先に店を出るのがその場所を放棄する気がした。そんなくだらない意地が席を立たない理由だった
沈黙が続く、店内にはすでに他に客は無く古びたスピ−カ−からのシャンソンだけが静かに響く
すっと写真が一枚ディ−ドの前に差し出された
目だけでそれを見る、少女の写真だった年齢は15-6才程であろう、眼鏡をかけた少女
カメラを向いてないところから隠しどりであろう事が推測された
「可愛いでしょ、私の宝物よ」
「ずっと見守ってきたの・・そうずっとね・・」いとおしそうに写真をみつめている
「あたしには関係無いだろ」突き放すように告げる
「関係無くは無いわ、貴方の事でもあるのよ」
「貴方の事もずっと見守っていたわ」悲しげな瞳でディ−ドを見つめる
「訳わかんねぇ事言ってるんじゃねぇ、寝言は寝てから言いな」
「いいえ、ずっと見つめていたわ『海原』さん」その女は微笑む
「テメェ・・誰だ・・」ディ−ドの目に殺意が宿る
「私は柳・小麗、『柳原』と言えば判ってもらえるかしら?」
「へぇ、あんたが柳原かよ、それで、サインでももらいに来たのか?」
「いいえ、聞きたいことがあるだけよ・・貴方が何を企んでいるのかね、フェイク(偽者)さん」
その一言にディ−ドの右手は袖口に隠されていたナイフに伸びる
だがその動きは封じられる、カウンタ−の下から小麗の手に握られている金属物に気がついたからだ
「公安じゃねぇな、南か」椅子に座りながらもディ−ドの肉体は獲物に飛びかからんとする肉食獣の様に緊張していた
「安心して、貴方をどうにかするつもりは無いわ」
「私はこの子を守りたいだけ、貴方のおかげでこの子の身に危険が及ぶかもしれない」
「南の方は私が何とかしたわ、でも北は私だけでは無理なのよ」
「貴方の存在は私しか知らないわ、でもこの子になにかあれば・・私は相手が誰であり許すつもりは無いわ」
小麗の瞳は蛇の様に冷たい、しかしその瞳からは強い意思が宿っている
その瞳の力にディ−ドの動きは封じてられる
「取引よ、貴方の事は私の中に収める、貴方はこの子に手を出さない」
「今まで通りの活動も黙認する、どうかしら?」その手にした金属物がカチと音を立てる
「チッ」舌打ちをしてディ−ドはグラスの中身を飲み干す
「交渉成立ね、分かってくれて嬉しいわ」軽く微笑みカウンタ−に代金を置き席を立つ
「そうそう、一つ言い忘れていたわ」ドアを開けた所で小麗は振りかえった
「想像していた通りの人だったわ、私、貴方のことも気に入ったわ」その瞳は怪しく輝いていた
誰も居ない店内、小麗の瞳の呪縛から解かれ写真を手に取る、写真の裏には少女の名前と住所があった
「Hikaru,Umihara・・か」写真を眺めていた時、杏樹の微笑が脳裏に浮かんだ
「マズイな・・」嫌な予感が浮かぶ
「マスタ−、わりぃなツケといてくれ」そう言って店を出る
「馬鹿な真似はするんじゃねぇぞ、杏樹!」祈るような気持ちでディ−ドは闇に消えていった