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499 :川瀬 ◆No212gxw :02/08/09 01:31 ID:dP4Qn7Yf
暗闇の向う側、最終話(前編)<Mad-tea-party>

「なぁ〜お」
愛ネコのDanteによってディ−ドは目を覚ました。下着のまま台所の向かい
冷蔵庫から冷えたミネラルウォ−タ−を取り出し乾いた喉を潤す
「Dante?」ミルクを与えようと呼ぶが見当たらない、ドアの方から泣き声が聞こえた
ドアに向かうとDanteはドアの隙間に差込まれている物をカリカリと引っかいている
外側に人が潜んでいればDanteが気づく、罠ではない事を確認し
怪訝に思いながらそれを拾い上げるとそれは封筒であった

同時刻

ピンク色の封筒、それは梨子の端末の前に置かれていた
御丁寧にハ−トマ−クのシ−ルで封がされている
取り上げてみると裏に一文があった〈Shourei〉と
そのままシュレッダ―に放り込もうかとも思ったが相手は一応同じMINDANの職員である
仕事の話しの可能性も捨てきれなかったので嫌々ながら中身を確認した

「おはよ〜ディ−ド、この間は楽しかったわね。
 今度は杏樹も誘って3人で飲みましょうね
 それと、○月×日の15:00に●●駅の傍の中華料理店「龍鵬菜園」に杏樹と一緒に来てね」

追伸:もし来ないときはインタ−ポ−ルのお兄さんがあなた達を迎えに来る事になるからね♪

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「梨子ちゃん、この間はごめんね。
 悪気があったわけじゃないの、可愛いからついイタズラしちゃっただけ
 それで、この間のお詫びにご飯を御馳走するね
 ○月×日の15:00に●●駅の傍の中華料理店「龍鵬菜園」に梨美ちゃんと一緒に来てね」

追伸:当日、この写真の残りををプレゼントするね。よく撮れているからきっと気に入ってくれると思うわ

封筒を確認すると写真が入っていた。――恐らく更衣室で取られたであろう写真が


「ふざけるな!」ディ−ドは肩を振るわせその手紙を破り捨てた
「あのど変態!」梨子は肩を振るわせ手紙と写真を破り捨てた

「あ、いらっしゃ〜い、こっちこっち」店内に入ってきた二人に小麗はにこやかに手を振った
つかつかと無言で近づく二人
「遅かったじゃないの、心配したわよ」席を立ち、二人に椅子を引き出迎える

《げしっ》その音と共に小麗はひっくり返った
「何するのよ!いきなり」立ちあがり抗議の声を上げる、その顔の右側には靴底の跡がくっきりとついていた

「うるせぇ!つまんねぇ脅しをかけやがって、何のつもりだ!!」銀髪の女性が一気にまくしたてる
「だからあの時始末しておけば良かったのよ」後ろの女性が長い黒髪を掻き分けながら静かに告げる

「こうでも言わないとあなた達は来てくれなかったでしょ。今日はどうしてもみんなに集まって欲しかったのよ」
「みんなぁ?」ふと席を見るとそこには先客がいた、同じ顔(双子であろう)をした二人の少女だ
一人は小麗を睨み付け、もう一人の少女は少し怯えた様子で二人を見ている

小麗の左の頬、真っ赤なもみじの跡からこの二人も似たような事情で出席したのだろうと銀髪の女性は思った

「立ち話もなんだし、さぁ座って座って」再び笑顔を取り戻し小麗は2人を席に着かせる

「ここの飲茶はとっても美味しいのよ。今日は貸切だし私の奢りだから遠慮しないでね♪」
そう言って厨房に合図を送ると中華式の円卓に料理が並べらていった

テ−ブルを囲む女性達はいずれも劣らぬ美女・美少女だ
普通ならとても華やかな様子と思うのだが雰囲気は全く反対であった

銀髪の女性は煙草を咥え酒を注文し、黒髪の女性は誰とも目を合わそうとせずお茶を飲み
双子の少女の一人はその顔に怒りを浮かべながらがつがつと料理食べ、もう一人の少女は小さくなってちまちまと食べている
共通している点は誰も一言も発していない所だろう

小麗一人が楽しそうに料理の注文や説明をし、皆に料理を取り分けていた

「それで、一体何のつもりだ?」銀髪の女性が口を開く
「お茶会を開く為だけにあたし等を呼んだわけじゃねえんだろ?」眼鏡の奥の瞳が小麗を射貫く

その一言に皆は顔を上げる、視線が小麗に集まった

「そおね、まだ自己紹介が無かったわね」にこにこと笑顔を浮かべ皆に告げる

傍らの二人を示し
「紹介するわね、こっちの元気な子が那梨野梨子ちゃんで、こっちのおとなしい子が梨美ちゃん」
「二人ともMINDANの情報監視部門の一員よ」

その一言に梨子の顔に驚愕が浮かび梨美の顔から血の気が引く
「小麗!あなた」梨子は叫ぶ、が最後まで言わせてもらえなかった

梨子の叫びを制するかのように反対側を示す
「こっちの銀色の髪の女性がティティスディ−トリットさんで、こちらの長い髪で澄ました顔をしているのが李杏樹さん」
「二人ともSO-LENのエ−ジェントさんよ」

今度はディ−ドと杏樹が凍りつく
「――てめぇ、何のつもりだ」低くうめく様に呟く
杏樹は静かに殺気を放つ、梨子は右手で梨美の手を握り引き寄せ左手がポケットの中の何かを握る

一瞬にして場が凍りつく。誰か一人が行動を起こせばたちまち緊張の糸が途切れてしまう、誰も身動きできなかった

そんな中、小麗は先程と変わらぬ笑みを浮かべながら言葉を続ける
「あら、単なる自己紹介じゃないの。お互いをよく知る事が友人関係の第一歩じゃない」

「最後に私の番ね、私は柳小麗、MINDANの情報監視部、並びに破壊工作班の一員」
「でもそれはカバ―、本当の名は劉小麗、中国人民解放軍所属で今はMINDANの調査の為潜入中なの」

「う、うそでしょ柳さん」信じられない様子で梨美は言った、冗談だと否定して欲しかった
しかしその願いが否定される「本当よ、あなた達の部長にはとっくに見抜かれているわ」

「どちらにせよ、知られてしまった以上このままでは済まないわね」杏樹は冷ややかに告げ
ディ−ドも無言で腰の後に右手を回す

「ここは私の知り合いのお店なの、余計な事はしないほうが身の為よ」

杏樹はその一言に周囲の気配を探る、店中から視線を感じる、包囲されていた

「小麗、あなた何が望みなの?」戦闘能力で言えば勝ち目は無い、しかし梨子はなんとしても梨美を守ろうと決意し
その為に小麗の意図を探ろうとした

「『M・A・D』と言う言葉を知っているかしら?」
「『Mutual Assured Destruction』・相互確証破壊戦略のぉこと?」梨子の背中ごしに梨美は聞いた

「そのとうり、私が欲しいのはある人物の安全、その為に南と北で最もその人物に近づいているあなた達に来てもらったの」

「杏樹、ここにいる梨子と梨美の後見人はあのKCIAの『虎』よ」その一言に杏樹の顔に驚きが浮かぶ
「彼は今回の事態を全てつかんでいるわ。でも公にする事による事態の拡大を懸念して私に一任している」
「ただし、もしこの子達に傷一つでもつけば眠れる虎が目を覚ます事になるわよ」

「梨子ちゃん梨美ちゃん、あなた達が以前つきとめた人物、それがディ−ドよ」
「その背後にいるのはSO-LEN、なぜ部長が今回の事態を秘密にしたがっていたのか分かる?」
「北は今回の事態を杏樹一人に責任を押し付けたわ」
「でもMINDANの中の強硬派がこの事態を知ればそれこそ北と南の共食いが始まる、部長はそれを危惧したのよ」
「確証は無いけど強硬派の一部はあの子の周囲まで迫ってきている」

「あなた達は引き金を見つけてしまったのね」
その一言に最悪の事態を想像し梨子と梨美二人の顔から血の気が引く

「もちろんそれだけでは完璧ではないわね、部長が北と水面下で交渉して杏樹達を闇に葬る可能性もある」
「私とディ−ドの間では予め取引が成立しているの、彼女は契約を守った。だから私も彼女を守らなくてはならない」
「無論、約束だけではないけどね」そういってディ−ドに向かいウインクする

「そこで私の存在が生きてくるの。そのような事態になれば私が強硬派にリ−クする」
「私の存在をばらしたり消そうとすれば私が今まで知り得た全情報が世界中に発信されるようになっている」

「その代わりそれまでは私が知り得た情報は本国(中国)にも知らせない」
「あの子の周囲をかぎまわる南の動きも押さえる。部長と取引しているわ」小麗から笑みが消え瞳は蛇のそれになっていた

それぞれは微妙なバランスの上にある、どれか一つでも欠けてしまったら一気に崩れ去る危ういバランスであった

「祖国を裏切るつもりかしら?只では済まないわよ小麗」

「本国が望むのは穏やかな対立」杏樹の疑問に答えた
「南が一方的に力をつけている現状を本国は危惧しているわ。つまり本国の意向に逆らうものではないのよ」

「全てはあの子の安全の為、北からも南からも手を出す事を許さない」

「つまり、どうすれば良いのかい?」ディ−ドは結論をうながした

「何もしなくてかまわないわ。今までのように活動してくれてかまわないわよ」
「南の方は正体を探るような真似さえしなければそれ以外のカウンタ−活動は自由」
「あの子にも手を出さない事」杏樹に釘をさす

「何も知らない振りをして踊れと言う事か。茶番だが仕方ない、消されるよりマシだな」諦めた様にディ−ドは自分を納得させた
「杏樹あんたはどうなんだい?」
「この状態では任務の完遂は不可能のようね。私はハン板の連中に復讐さえ可能なら・・不本意だけどね」
そのまま横目で梨子達を見る

「わ、私は・・部長がそれを望んでいるなら」「私はぁ梨子ちゃんがそれで良いなら」
梨子と梨美も了解する

「これで契約成立ね。さぁお茶の続きを楽しみましょ」嬉しそうに微笑み料理をとり返る様に指示を出す

その後のお茶会は静かではあるが、先程のような緊張感は無かった
小麗は相変わらず楽しそうにしており梨子と梨美も料理について和やかにおしゃべりをし、杏樹とディ−ドも一応は食物に箸をつける

「あのぉ柳さんさっきと比べてぇ料理の数が多くないです?」にぎやかに並べられた小皿を前にして梨美は尋ねた

「これからが今日のお茶会の本番だからよ。さっきは自己紹介だって言ったでしょ」
「はい、これに目を通しておいてね」そういって4人に一枚の紙を配る

「『日本在住の外国人女性懇親会』ってなにこれ?」きょとんとした顔で梨子が質問する

「これが今日のお茶会のお題目よ。みんなもそのつもりでね」
「そろそろ最後のゲストが来る頃なんだけど・・」小麗はそう言って時計を気にした

その時、店のドアが開いた。誰かが店の中に入ってきた
店員になにかを話すとその店員がこちらを示す。その人物はゆっくり小麗たちのテ−ブルにきた

小麗の顔がぱっと輝く「はじめまして、ようこそ、さぁこっちに来て座ってちょうだい」
その人物の顔を見たとたんディ−ドは思わず咥えていたタバコを床に落とし、杏樹も目を見張った。梨子と梨美もつられてそちらを見る

その人物はテ−ブルの前に来て挨拶をした


「は、はじめまして、わたし海原ひかるといいます。」