ボクの名前は「だいちゃん」

くうおばさんの書き込みをそのまま掲載しています






ご無沙汰してしまっています。
只今てつとだいの戦いに・・・
老犬りきとの毎日と・・・
奮闘中です。
その中でちょっと書いてみました。
読んで頂けたら嬉しいです。

「僕の名前はだいちゃん」






僕の新しい名前は「だいちゃん」となった。
僕はこの名前、ちょっと気に入っている。
そして、この新しい住まいも気に入っている。
前の名前なんか、“あっかんべぇ〜”もう忘れた!

僕は、人間が大好き!
白い車からおじさんが降りてきて、僕は嬉しくてズボンに
じゃれた。だけど知らんぷりでお家に入っていった。
仕方ないから少し歩いて、マンションにやってきた。
若い女の人がいて、僕を撫でてくれた。
もう一人男の人が来て、何やら相談してマンションに
入っていった。
それから何人か集まって、僕の事を可愛い〜と撫でてくれた。
「あれっ!パトカーがやってきた・・・」
警官が3人も降りてきて、僕を抱いてくれたと思うと
車に座らせてくれた。
大人しく良い子で、僕はじっと座っていた。
 
 






外で話し声がする。
「飼い主が見つからなかったら保健所へ行くんですか」
「そうなります」
「暫く預かってくれるんですね」
「1週間くらいなら・・・」
「10日お願いできませんか。里親を探しますから・・」
「でも10日経っても無かったら、保健所へ渡す事に
 なりますが・・・。」
「それは可哀想・・・」
「ここでは飼えないし・・・」
暫く話し声がとぎれた。
そして誰もその場を立ち去らなかった。

「保健所ってなんだろう。」僕には判らないけれど
皆悲しそうな顔をしていた・・・。
そこへ僕より大きい犬を連れたおばさんがやってきた。


 





そして、そのおばさんと女の人達と警官が話し出した。
「お宅の犬と違います?」
「いいえ、うちは皆いますよ」
「迷い犬ですか?」
「そう、うちでは飼えないし、警察に預かってもらおうと」
「でも飼い主がなかったら、保健所ですか」
「そうです。それが皆可哀想で・・・ね。
 困っているんです」
又暫く会話が途切れてしまった。
長い沈黙が続いて、そのおばさんが言った。
「うちで預かりましょうか」
「えっ、いいんですか?」
「そうしてもらえたら、助かります」
皆の声ががパッと明るくなった。
立ち止まっていた皆が急に動き出した。
そして、僕は警官に下ろしてもらった。
僕は白い紐で繋がれて、そのおばさんに連れられた。
その時犬が唸ったから、僕も唸り返してやったけれど
何だかこの犬の迫力に負けたような気がした。
後で判った。これが「ふくちゃん」だった。
以後、ふくちゃんには勝てないのを知った。

 





その夜、この家の玄関に繋がれて、眠る事になった。
警官がこの家にやってきて、何か書いていた。
僕は一応拾得物になるそうだ。
その警官が言った。
「僕の家の犬が最近亡くなって、又新しい犬を飼いました。
だから保健所へ・・・と言うのは辛くてね」

この家には他にも沢山の犬がいた。
皆「なんだろう」って顔をして僕を眺めていた。
てつが僕の傍にやって来たとき、おばさんは言った。
「てつ、駄目だよ。手を出したら・・・」
てつはあっちの部屋に行ってしまった。
僕は少しも怖くなかった。

僕は玄関に置いてもらったベッドで寝た。
夜遅くにおじさんが帰ってきた。
僕を見て「なんや、これっ」
「今パトカーで・・・」
「飼い主さんが出てくるまで・・・」
おばさんが一生懸命話しているのに、おじさんは
「うぅ〜ん、又5匹か・・・」
そう言って一人お風呂に入ってしまった

 




       
翌日、僕を撫でてくれた女の人が、おばさんに
「すみません、宜しくお願いします」って。
そして散歩に行くと、又違う人がやってきて、
「ごめんね。私が昨日呼び止めたりしたから・・・
何か困った事があったら、手伝いますから言ってね」
おばさんが僕に言った。
「皆良い人でよかったね」
「うん、警察の人もね」

お向かいのおばさんがやってきて、僕の事「可愛い〜」
って言ってくれた。
そして僕を抱き上げて、「ちょっと貸して」って
僕を連れていった。
そこには4匹も犬がいて、みんな僕にワンワンと吠え立てた。
一番小さい犬は僕を目掛けて、噛み付いてきた。
びっくりして、抱いてくれたおばさんのズボンに
僕はおしっこをもらしてしまった。
おむかいのおばさんはびっくりして、直ぐに
おばさんの所に連れ帰ってくれた。
「あぁ〜怖かった」



 



でも今度はおばさんが僕を車に乗せて何処かに連れて
行く。何処へ行くのだろう・・・
そこには白い服を着た男の人と、優しそうな女の人が
2人いて、僕を抱き上げて、体を触ったり、口を開けたり
いろいろ調べていた。そしてちくっと痛かった。
後で判った。此処は獣医さんだと言う事が・・・
「健康な体ですよ。歯も綺麗で歯石を取った形跡が見られます」
「この犬は獣医さん慣れしていますね」
大人しく診察台に上がり、先生の顔を舐めたり、賢くしていた
僕を診て先生はそう言った。
「大事に飼われていたんでしょうね。きっと飼い主さんが
探しているでしょう。」
その言葉におばさんは安心したようだった。
獣医さんは診察代も検査代も「要りません」と言った。
おばさんは、もし僕に感染症があったら他の犬に心配なので
いつも一番に先生の所に行くそうだった。
「僕は元気なのに失敬な!」







だけどそれから2週間・・・何処からも連絡は無かった。
そんな時、警察から電話が掛かってきた。
「もう2週間経ったのですが、犬はまだ居ますか?」
「はい、まだいます」
「一応2週間経って、警察の手から保健所へと移りますので
 引き取りにいきましょうか」
「保健所へ行ったら、処分されてしまうんですよね」
「可哀想ですが、そうなります」
「こちらに置きます」
「ありがとうございます。只半年の間は拾得物として
 預かっている形になり、半年目にそちらの犬に
 なりますから又その頃に手続きをお願いします」
「はい、わかりました」
電話を切って、「あんたは今日から“だいちゃん”になるよ」
おばさんが、おかあさんになった日・・・だった。

その時おかあさんは、僕の事を小さいから何とかなると
考えていたが、その考えが甘かったと言う事を
思い知れされる事になる。
僕は思った。「今日から此処は僕の天下だ!」








この家に来て2日目にシャンプーされたけれど、
その日家に入れてもらって、おしっこを家具に掛けて叱られて
暫く目を盗んでしたけれど、1ヶ月位でもうしなかった。
随分お利口さんだと思う。

僕は雑種の犬だけど、何が混ざっているのだろう。
人はどんな人も皆大好き。
だけど、犬と仲良くなる気はさらさら無い。
なのに此処の家には犬が4匹もいた。
りき・・・これはおじいさんだからどうってことない。
もも・・・これも大きいけれど怖がりだから問題ない。
ふく・・・ちょっと手ごわいから離れてよう〜〜っと。
てつ・・・こいつはどんな奴だろう・・

僕はまずてつの後に付いて歩き、とうとうてつは振り向いて
唸った。そこだ!僕は掛かっていった。
取っ組み合いの喧嘩が始まる。
てつの耳を噛んでやった。
てつは「キャン」とないた。
やった!僕の勝ち!
だけどお母さんが僕を酷く叱った。
そしててつはおかあさんにくっついて甘えていた。
僕はそれが気に入らなかった。








それから毎日僕とてつの喧嘩は一日1回はあった。
その度僕へのお仕置きは変わっていったが
僕は負けなかった。
とうとうおかあさんは獣医さんと相談して去勢手術を
僕にしてしまった。
「だいちゃんが泌尿器の病気にならないようにしたんだよ。」
そんな事を言ったけれど、元気な僕がなんで手術なんて
痛いことをされなければならなかったのか・・許せない」
痛くてシュンとして帰った日、てつが僕を匂いでいたが、
唸る元気はなかった。
それから1週間・・・まだ抜糸されていない体で
僕はてつに喧嘩を挑んだ。
然し今日のてつは強かった。
僕の耳が裂けてしまって、又獣医さんへと走る事になる。
「だいちゃんが悪い」「自業自得だよ」「後から入ったのに
だいちゃん遠慮しないと・・」先生も奥さんもいつもは
優しい助手の人も口を揃えて僕に言った。

でも僕はやられても“きゃん”となかなかった!
痛くて涙が出たけれど、てつの前でなかなかった。





 

10

それからも喧嘩は一日の日課になっていた。
僕が唸りだすとおかあさんは暫く様子を見ている。
さあ〜喧嘩が・・・と言う時におかあさんが僕を捕まえ
ようとするが、そうはいかない。
僕は小さい体でするりと交わす。
僕の得意は素早い事なのに・・・
そして喧嘩が始まるとおかあさんが僕を捕まえる。
抱き上げられた僕に、てつは掛かってくるが勢い余って
おかあさんの足を噛む。
こんな事が毎日続いて、僕もてつもおかあさんもあちこちに
傷ができてしまった。

その内に僕は、おかあさんがてつの傍に行く時以外は
てつに唸って行かなくなったのに・・・
その事がもっとおかあさんを苦しめる事になってしまった。






11

てつは繁殖に使われている柴犬だった。
家庭で飼われている犬の様に、人の愛情を知らない犬だった。
次から次へと居場所が変わった。
だから、この家に来た時は、感情が無い犬だったそうだ。
やっと悪戯をしたり、伸び伸びと眠ったり
ふくちゃんと走り回ったり、おかあさんに甘えられる
ようになったのに3年近く掛かったようだった。
でもおかあさんがてつの傍に行くと僕が唸っていくから
とうとうてつは、おかあさんが傍に来ると逃げるように
なってしまった。
そして一日庭で過ごす事が多くなってしまった。
てつがおかあさんに甘えられる時間は、ふくちゃんと
一緒の散歩の時間だけ・・・になってしまった。
僕が家の中を陣取っていたからだ。
てつは夜になると扉が閉まって外へ出られなくなる。
おかあさんはりきのところへと2階へあがってしまう。
その間は僕もてつに挑んでいかない。
りきが眠るとおかあさんが降りてきて、そのときから
僕の喧嘩の挑戦が始まる。







12

「おかあさんの独り言」
1匹の命を助けた事によって、1匹のやっと掴んだ穏やかな
時間を壊す事になってしまった・・・
この事が私の胸を痛めました。
てつとふくのあの楽しそうな時間・・・
あの感情のなかったてつに蘇った嬉しそうな顔・・・
私の膝に寄り添って見上げたあの無邪気な目・・・
それが失われていくのではないかと心配でした。
全て私の自己満足ではなかったのか・・・

だいちゃんの里親さんを見つける事も考えました。
でもだいちゃんがこんなにまでして、私に初めから
くっついて甘えて付いてまわるのは
「もう何処へもやらないで・・・」そう言っているようにも
思えましたし、又余程信用のおける人で無い限り、
誰でもいいからと、一度捨てられた犬を渡す事は
私にはできませんでした。

部屋を隔離して飼う事も出来るでしょうが、一度そうして
しまうともう2度と一緒にできません。
私は皆と一緒に暮らしたいと願ってきましたから・・






13

或る日、おかあさんは気が付いた。
そして喧嘩が始まる夜になると僕は、おかあさんの傍の
冷蔵庫の足に繋がれてしまった。
おかあさんが「おやすみ」と言うその時まで・・・
てつは好きな処で寝転がっている。
僕は知っているんだよ。僕の見えないところで
おかあさんにてつが甘えているのを・・・
「まあいいか。僕も疲れたから寝よう〜」
そして、傍に置いてもらったベッドに入る。
おかあさんは寝る時に、そっと首輪を取ってくれる。
僕は又自由になる。
でもその頃はもう眠たい・・・
みんな静かに眠りに入る。



 




14

でもそれも1週間で終った。
おかあさんは、様子を見ながら僕を繋ぐのは止めていった。
僕はてつを追いかける。
僕はその時いつもおかあさんを見る。
「あれっ、おかあさんはしらん顔してる」
「なんで叱らないんだろう・・」
「なんで、僕をみないんだろう・・・」
「それなら、もう止めよう」

すると、おかあさんが僕を呼ぶ。
「だいちゃん、Gパン持って来て」
僕はもうロープだけになってしまった
Gパンの玩具を持って行く。
大好きなおかあさんとのひっぱりっこが始まる。
てつはゆっくりと眠りに入る。







15

僕が「だいちゃん」になってもう5ヶ月が過ぎた。
てつへの攻撃は、相変わらず続いている。
でも僕が知らない間にてつはソファーで寝ている。
庭ばかりにいたはずのてつが・・・
僕のGパンのおもちゃにてつの匂いがする事がある。
僕が眠っている間にどうやらおかあさんとてつが
遊んでいるようだ。
てつも僕の為に庭に出ているのが馬鹿らしくなったみたい。
僕もおかあさんの後をくっついてばかりいなくなった。
眠たい時は勝手に廊下やソファーや庭で寝ることにした。
ちょっとずつ、ちょっとずつだけど
僕もてつもお互いを認め合うようになったのかもしれない。

8月になると僕は拾得物ではなくなる。
この家の「家族」になる。
そうすれば、もっともっと皆の仲間になれるかもしれない。
そう・・・思う。
(或る日、てつとだいが一緒に寝ていました。嬉しい驚きです)






16

7月の終わり・・・僕は随分とお利口になった。
てつと喧嘩しようとすると、おかあさんが大きい声で
「だいちゃん!」と怒鳴る。
僕はその声にふっと立ち止まる。
暫くして我に返り、又てつに挑もうとすると
おかあさんは新聞を丸めて、テーブルを叩く。
僕はそれが苦手だ。
「蝿と違うぞ!僕は犬だぞ!)
大急ぎでその場から逃げる。

(これは不思議な事でした。決して叩いた事はないのですが
だいちゃんは怖いようです。前に何かあったのでしょうか。
でも効き目があって嬉しい発見でした。)

だから今の所てつとの大きな喧嘩は無い。






17

おとうさんは毎日帰るとお酒を飲む。
おかあさんは飲めないからおとうさんは淋しそう。
だから僕はいつもおとうさんの傍で相手をしてあげる。
勿論お酒のおつまみをちょっと頂くのが目的だが・・・
台所からおかあさんの声がする。
「だいちゃんに食べさせないでよ〜」
おとうさんと僕は目で笑う。
それを知ったももちゃんとふくちゃんも
おとうさんの傍に来る。
おとうさんが賑やかなお酒の場になれたのも
ふくやももがおつまみをもらえるのも
皆僕のおかげだぞ。
そして何よりその時間、てつはおかあさんと一緒。
僕は皆に貢献している。
うん。僕は偉い。そう思う。
僕を家族にしてくれるその日はもうそこまで来ている。







18

(最後に・・)

だいちゃんが来て、5ヶ月になりました。
もうすぐ半年・・・
拾得物ではなくなります。
だいちゃんは家族になります。
今少し、ほんの少しずつですが、変わってきました。
勿論、まだてつへの攻撃はありますが・・・
てつも家の中に入って寝ている姿を
見かけるようになりました。
てつとだいちゃんが一緒に眠っている姿も見えます。
庭では又ふくとてつのじゃれあっている声が
賑やかに聞こえるようになりました。
てつが私の足を引っ張ります。
私の鼻を舐めてきます。

時が、乱していた心を少しずつ変えていきます。
時が、それぞれの関係を少しずつ変えていきます。
焦らずに、急がずに、ゆっくりとゆっくりと・・・

きっといつか、家の前を通る人や犬、猫を見つけて
てつとだいちゃんが一緒に吠えて、この家族を守るべく
番をしてくれるその日がやってくると願って・・・

今、只ひとつ私の心を曇らせる事が残りました。
だいちゃんは小さい犬でした。
でもこれが大きい犬だったらどうしていただろうか・・と。