小説 「迷詐欺師 カンベヨシノブ」


第1話 迷惑な電話


  
2001年4月2日。7時30分。いつもなら、鳴る可能性の少ない、石浦家の電話が、けたたましく鳴り響いた。
 その家の主人、石浦三郎が、いつもどうり愛想悪く電話に出た。
  「・・・・・(ガタガタガタ)・・・・・。あ・・もしもし、イシウラですけども・・・・。」
  「カンベと申します。元美さんいらっしゃいますか?」
  「・・・・・・・(モトミ!電話!!)・・・・。」
  父は怖い顔で、娘に受話器を手渡した。(だれ??)
  「もしもし・・。」
  「カンベです。」
  「カンベ・・・。」
  「小中学校同じだった、カンベです。お久しぶりです。」
  「カンベ・・・?神戸君!!」
  「はい。」
  「えっ!まっじ!!神戸君??」
  「はい!」
  「え〜久しぶり〜元気??」
  「うん!元気!久しぶりやな。働いてんの?今から会社?」
  「うん!!元気!!今から会社。」
  「最近いろいろ噂はきいてるんや。時々懐かしくて中学の友達とかに連絡とってるねん。」
  「ふ〜ん。で、なんでうちに電話してきたの?同窓会でもあるの?」
  「ふん。そ、同窓会の企画もあるねん。いや、アルバム・・・卒業アルバム。住所録が途中で破れてて、
 石浦さんとこまでしかないん。それで、載ってる人に電話して、時々あってるんや。
 この前は富士原さんに会った。」
  「富士原真美ちゃん?ふ〜ん。」
  「そうそう。あ、仕事とか帰り遅いの?」
  「うん。結構遅いね。」
  「お昼休みって1時間くらいあるの?」
  「うん。」
  「ほな、お昼に石浦さんの会社の近くで会わへん?」
  「え!今日?」
  「うん!一緒に食事しようや。」
  「今日はだめ!!」
  「なんで〜?」
  「だってもうお弁当作ったもん。別の日あかんの?」
  「え〜今日でないと、名古屋に帰ってしまうんや〜。ほな、俺コンビニ弁当買うし、一緒にたべような。」
  「エ〜!!コンビニ弁当買うの??まじで??」
  「お願い。今日会おう!だって退屈なんやもん。」
 
  もとみはカンベに押し切られ、仕方なくOKしてしまった。どう考えてもおかしな話である。
 昔を思い起こしてみても、カンベと自分が特別に仲良かったわけでもない。
 カンベが懐かしがって、もとみに直接電話するなど、まず考えにくい。
 いつものもとみなら相手にしないような内容であったが、その日は懐かしさのあまり、誘いに乗ってしまった。
 それに中学校の友達によく連絡をとっていそうなカンベに、他の友達のことをいろいろと聞きたかった。
  2人は12:00にもとみの職場の隣にある、小さな広場で会うことにした。
  久しぶりに男友達と会うということで、もとみは少しうわついていた。
 いつも以上におしゃれな服を着て、念入りに化粧した。
  カンベに絶対「きれいになったね。」と言わせるために。                         2001/4/24
 



第2話 落ち着かない12時


  もとみは楽しそうに少し有頂天で、他の女子社員に、
  「今日のお昼は、中学校の同級生と、お弁当食べるねん。」
 と、話した。
  だけど心の中では、不安で仕方なかった。カンベが「本当の話」を切り出さないことを祈っていた。
  「本当の話」。それはもとみが想像する、とてつもなく嫌な、カンベの誘いの内にある、真実のことである。
  とうとう、約束の時間が来てしまった。もとみはどうも落ちつかず、憂鬱な予感に覆われながら、
 会うのが嫌になった。でも、仕方なく12時丁度に、自分のお茶だけカバンに忍ばせ、
 ガラスごしにカンベを捜した。
  あまり背の高くないほっそりした、スーツの男の後姿が見える。手には小さなコンビニの袋。
 (あれに間違いない。)
 もとみはスーツ男の後ろから近づいていった。

                                                        2001/5/1


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