雲をも歩く民(謎)

 

 目の前に虹がある。

 僕はふと気がつくと雲の上を歩いていた。何が起きたのだろう。さっきまで自分の部屋で寝ていたはずなのに・・・

小さな頃に雲の上に乗ってみたいと思ったことはある。しかし大きくなるにつれて雲の上には乗れないものだとわかってきた。

だけど今、僕は雲の上にいる。足がきちんと雲の上に乗っている。もしかしたらこれは夢かもしれない。

頭を軽く叩いてみる。夢ではなさそうだ。やはり僕は本当に雲の上に乗っているようだ。

「雲って近くでみると綺麗じゃないんだ・・・」

自分のいる場所を知りたくて雲の端まで歩いて地上を見下ろす。

「ここはどこだろう」

今まで見たことないような場所だった。日本ではないかもしれない。ビルが立ち並んでいたのは見えたが他に目立つモノはなかった。

「もう一度見てみよう」

すると先程とは違うモノが目の前に広がった。

「街が燃えている・・・」

テレビなどで見たことがある光景・・・戦争中の日本の街の姿がそこにあった。

僕は恐ろしくなり2,3歩下がるとその場に座り込んでしまった。

「絶対に夢だ・・・こんなことがあるはずない」

必死で頭を叩いたり、頬をつねってみるが痛みを感じる。

「なんでだよ・・・」

僕はこの世界が夢であってほしかった。

「お父さんもお母さんも妹もみんなどこに行ったんだよ」

僕はこの広い雲の上を歩いて誰かいないか探してみることにした。

僕の乗っている雲はかなりの大きさだ。通っている春風中学校の運動場よりはるかに広かった。

歩いても歩いても周りの景色が変わらない。気がつくと僕は汗でびしょびしょだった。

雲の上にいるから太陽の光が直接僕に降り注ぐ。

「もう歩けない・・・」

僕はその場で横になり眠ろうとした。

「気持ちがいい」

僕は寝ることが大好きだった。寝れば嫌なことをすべて忘れさせてくれる。

さっき見た悪夢のような光景も忘れられると思うとホッとしていた。

 もうどれくらい眠っていたのだろう。気がつくと周りは真っ暗になっていた。

この暗闇の中を歩いたら雲の上から落ちてしまう可能性があるのでその場所でじっとしていることにした。

夜になると昼とは違って寒さを感じる。雲の下の様子が気になる。しかし周りが暗くて歩けない。

僕は朝になれば何か変わっているかもしれないと思い寝ることにした。

 目が覚めると周りが明るくなっていた。相変わらず僕は雲の上にいる。どうしてこんなことになってしまったんだろう。

「僕が何をしたっていうんだ」

何か悪いことをして誰かに恨まれるようなことをしたことはない。それなのに僕は今こんな場所にいる。

誰が何のために僕をこんな場所へ連れてきたんだろう。

「早く僕の部屋に帰りたい」

 僕は雲の下の様子を見るために歩いた。10分ほど歩いたら雲の端まで辿り着いた。

早く雲の下を見てみたかったが、また昨日のような光景だったらどうしようという不安でいっぱいだった。

唾をゴクリと飲みこみ意を決して雲の下を覗き込んでみた。

「あれ・・・何もない」

雲の下は一面緑色の草原だった。僕はすぐに日本ではないと感じた。

この雲は一体どうなっているんだ、僕はどこに来てしまったんだ、ますます不安になっていった。

何度も見れば僕の暮らしていた町に変わるかもしれないと思い雲の下を何度も繰り返して見下ろした。

しかしどれも僕の知っている場所ではなかった。

 (ぐうううう)

昨日から何も食べていない僕のお腹が叫んでいる。

雲の上に食べ物なんてあるわけないとあきらめながらも、探さないよりはいいと思い探し歩いた。

「やっぱり何もないか・・・」

雲の上をしばらく探し歩いたが何も見つからなかった。

嫌な予感がした。それは僕に『死』という言葉が近づいてることだ。

「このままじゃ絶対に死ぬ」

僕はさらに不安になり泣き出しそうになっていた。

 小さな頃に雲の上に乗りたいと思っていた気持ちは今はどこにもない。

まるで雲の上に監禁されてるようだから、この雲の上から早く逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

 1日が経ち・・・僕はまだ雲の上にいる。どうすることもできない僕は決心した。

「雲の上から逃げ出そう」

そう、僕は雲の上から飛び降りることにした。このまま雲の上にいても僕の家に戻れる保証はない。

「じっとしているより何か少しでも希望があるなら勇気を出して行動したほうがいい」

僕が考え出した答えは雲から飛び降りることだった。

僕は雲の端まで歩いた。恐怖心があったから下を覗かないで一気に飛び降りることにした。

 

 そして僕は勇気を出して飛び降りた。ものすごい速さで落ちていく。やっとあの雲から逃げ出せた。うれしかった。

奇跡が起きれば自分の部屋に戻れる可能性がある。僕はどんなに小さくてもその可能性を信じている。

どんどん地上が近づいてくる。胸の鼓動が高鳴る。

「奇跡は起きないのか?」

僕は地上が目の前に見えて恐くなってきたから目をつぶった。

ものすごい衝撃を受けたのを覚えている。

僕はそれから記憶がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついた時には・・・

また雲の上にいた。

 

完!

注意:気になることがあってもお答えできません。