FISH-3リベンジ!今度は三重でベラ狙い




2001年7月某日。 前回の伊豆での釣行から、約2ヶ月が経過しようとしていた。
季節は今、初夏から夏へと移ろいつつある。
いつも通り深夜のネットライフを満喫していた僕だったが、何気なく開いたページに、その魚の姿があった。
ニシキベラ。決して珍しい魚ではないのだが、伊豆では目前にその姿を捉えながら、手にする事ができなかった魚だ。
確かに伊豆での釣行は条件が悪かった。前日からの低水温、強風、仕掛けの不備・・・。
だが、奴は確かにそこにいたのだ。あの時、本当に釣る事は不可能だったのか?
あの旅から帰って以来、心の中にモヤモヤが残った。
追い討ちをかけるように、友人であるalso氏の、伊豆での戦果を告げる書き込みの最後に、遠慮がちに書かれた「ニシキベラ」の文字。
いつもならば、思考はやがて別の方向へと流れていくのだが、その日は何かが違っていた。
僕の妄想はどんどん膨張し、夜が明けようとする頃には、去年何回か通った漁港の岸壁に立っているはめになった・・・。

赤潮
何と赤潮が発生していた

やってきたのは、いわば僕のホームグラウンドともいえる三重県の某漁港。ここへ来るのは約7ヶ月ぶりだ。
東の空は白み出してはいるが、まだ完全に夜が明けるまでには少しある。
昨日から一睡もせずにここまで運転してきたわけだから、さすがに眠くないはずがない。僕は少し仮眠をとることにした。
夜が明けると、すぐに異変に気が付いた。海面が所々、朱色の絵の具をぶちまけたようになっている。
「赤潮だ!」(※
海の中を覗くと、魚が全くいないという訳ではなかったが、かなり数は少ない。グレの子が少し見えるくらいだ。
ここは去年ニシキベラの姿を確認している場所なので、内心かなり期待していたのだが、がっかりであった。
ここで粘っても結果は知れているので、そう離れていない別の漁港に移動することにした。
次に訪れた場所は、去年ニシキベラこそ見ていないが、潮通しが良く、魚種が豊富なところだ。
着いてみると、思った通りここには赤潮は来ていない。早速海の中を覗きこむと、先ず目に飛び込んでくるのは、定番のソラスズメダイのメタリックブルーだ。
他にもメジナやメバルの幼魚だろうか?うじゃうじゃと小さいのが群れている。
そして何よりクネクネと特徴ある泳ぎ方の魚が・・・。もちろんベラだ。
ピンク色なのでホンベラのようだが、それでももちろん充分である。
僕はそそくさと用意を始めた。一応コマセも用意したが、この辺り一帯はネンブツダイが多く、寄せてしまうと収集がつかなくなるので、ヨセエなしでサビキ釣りを始めた。
ものの5秒もしないうちに、手応えがあった。軽いので一気に引き抜くと、そこには2尾のネンブツ君がぶら下がっていた。
いや、実をいうと上げる前から判っていた。海中をキリモミしながら上がってくる赤い魚を、僕の目はしっかりと捉えていたからだ。
はぁ。やはり今日も、こいつらとの闘いになりそうだ。
最初にも書いたが、僕の釣りには基本的に外道はない。だが、こいつら(ネンブツダイとクロホシイシモチ)だけは別だ。
恐ろしいほどの大群が海中を埋め尽くしているかのようだ。何も考えていなさそうにホバリングしているくせに、餌が来ると急に猛ダッシュしてくる。
さすがの雑魚好きの僕も、お腹いっぱいといったところだ。
そんな魚が1投目で来てしまい、どうなることかと思ったが、2投目はメバルの子が来て少しホッとした。
だが、そこからまたネンブツのオンパレード。
たまにメバルは来るものの、ネンブツ、ネンブツ、またネンブツ・・・。
まだホンベラらしき魚も何尾か足元にいる。そして餌にも寄ってきている。
何とか釣り上げたいが、確実にネンブツの方が反応が早い。それに何より食らいつく時に躊躇いがない。
20尾くらい釣ってみたが、メバル2尾の他は全てネンブツ。早くも最悪のパターンだ。

魚群
この中から目的の魚だけを釣るのは至難の技だ

ネンブツダイ
ネンブツダイ
メバル
メバル
ギンイソイワシ
ギンイソイワシ

ここは1つ気分転換にと、表層を泳ぐギンイソイワシに狙いを変える。
ギンイソイワシは、ウロコは硬いが身は白身で天ぷらなどにするとおいしい魚だ。サビキを浅めに投入すれば簡単に釣る事ができる。
とりあえず15尾ほど釣る。これで今日のオカズは確保した。
いかんいかん。つい手頃な獲物に逃げてしまった。虎穴に入らずんば虎子を得ず。僕は気を取り直して、再びネンブツ軍団の待ち構える中層へ仕掛けを投入し始めた。
その時、すぐ足元で青い腹のベラが見えた。いた!ニシキだ!しかも次の瞬間、確かな手応えが。
上がってきたのは、紛れもないニシキベラであった。あまりにもあっけなく、目的は達成されてしまった。
しかも、入れただけで釣れるネンブツ、メバル、ギンイソ以外での初めての獲物があこがれの錦様とは。
しばらくバケツに入れて眺める。いや、愛でるといった方が正しいかもしれない。
きっとその時の僕は、他人から見たら危ないほど恍惚の表情を浮かべていたに違いない。
普通の釣り人にとってはたかが外道のベラ1尾でこんなに喜べるなんて、僕はつくづくおめでたい人種のようだ。
しかしこれで、一応の目的は達成したわけだ。

ニシキベラ
ニシキベラ

もう帰ろうかとも思ったのだが、時計を見るとまだ朝7時過ぎだった。それになにより足元には、まだ釣っていない魚がいっぱいいる。
僕は9時くらいまでは続けることにした。
相変わらずネンブツは釣れ続けているが、僕の方もだいぶネンブツの除け方がうまくなってきて、ポツポツと他の魚も混じるようになってきた。
ソラスズメダイ、スズメダイ、カゴカキダイなどを釣る事ができた。

アイゴ
アイゴ
ソラスズメ
ソラスズメダイ
カゴカキダイ
カゴカキダイ

しかし、ある時空合わせの後、ガツンと重くなったかと思うと、フッと竿が軽くなった。
竿を上げてみると、サビキの針が1本なくなっていた。こんなことをするのはフグしかいない。
思ったとおり、次に釣れてきたのはキタマクラだった。
その後クサフグも釣れた。時間の関係だろうか?何故か急にフグが増えたような気がする。

クサフグ
クサフグ

フグだけではない。カワハギも姿を現した。見ていると、カワハギ独特の技で上手に餌だけ持っていく。腹立たしいが、見ていて感心するほどだ。
狙ってみたが、結局カワハギは掛けられなかった。代わりといっては何だが、カワハギよりは何故か掛けやすいヨソギは釣る事ができた。
ところでこのヨソギ、どことなく模様がキタマクラに似ている。僕は擬態ではないかと睨んでいるのだが・・・。

キタマクラ
キタマクラ
ヨソギ
ヨソギ

それまでその堤防は僕1人だったが、自転車に乗ったおじさんが現れた。やはり「釣れるかね?」と声を掛けられる。
しかし、僕のバケツの中はニシキベラ2尾とクサフグ3尾(他は既にリリース)。
「こんなのどうするん?」ほらきた!しかしこういう展開は慣れている。
「飼います!」 おじさんは「ヘえー」と言い残して僕の隣で用意を始めた。おじさんもサビキで狙うようだ。
少しコマセを撒いた後、おじさんも仕掛けを投入した。
入れたか入れないかで、おじさんは竿を上げる。それを横目でちらっと見る僕。
おじさんのサビキには、早速ネンブツが3尾ぶらさがっていた。
「今日は赤いのばっかりやなあ。」
「今日は」なのであろうか?ネンブツが少ない日などあるのだろうか?
その事をおじさんに尋ねてみると、夕方にはアジがよく釣れるとの事であった。
その後はおじさんも僕も、暫くまたネンブツ地獄に陥っていたが、いきなりおじさんの竿がグンとしなった。
25cmくらいの銀色のが釣れてきた。おじさんは嬉しそうだ。その魚はおじさんの本命、高級魚シマアジだった。
ちょっと羨ましくなる僕。だが、雑魚釣り師を目指す者としては、大物狙いなど許されない。
僕の方の次の獲物は、20cmくらいのムツの子だった。深いところの魚のようだが、幼魚のうちは浅場にもいるようだ。
今度はおじさんが、「ホンムツやなー。味噌汁にするとうまいでー」といって興味ありそうだったので、差し上げた。
「なんや、兄ちゃんは熱帯魚専門か?」
すっかり熱帯魚釣り師にされてしまった。ニシキベラもカゴカキダイも温帯魚なんですけど・・・。
その後お互いに何尾か釣り上げ、僕がホシササノハベラを釣ったところで9時になったので納竿とした。

ムツ
ムツ

ホシササノハベラ
ホシササノハベラ

気がつくと、9時だというのに、日差しは厳しくかなり暑い。今日は暑くなりそうだ。
発表はまだだが、絶対梅雨はもう明けているに違いない。
おじさんに「そろそろ帰ります。」と告げると、「これ食べてみな。うまいから。」といって一番でっかいシマアジをくれた。
ちっこいムツ3尾がシマアジに化けてしまった。まるで藁しべ長者である。
おじさんに礼を言って僕は家路についた。

赤福氷
赤福氷。中にアンコとモチが入っている。

OH-1
今や明野駐屯地名物となった、新型観測ヘリOH−1。

帰る途中、伊勢神宮に立ち寄ったが、お参りもせずに行ったのは赤福。暑いので、夏の定番「赤福氷」をいただく。
アンコがやたらと甘いが、暑さでばてている時には最高にうまい。
伊勢市を過ぎて明野駐屯地の横を通ると、陸自のヘリが何機も飛んでいるのが見えた。
つい最近桑名市で民間機が訓練中に事故を起こしたばかりだし、くれぐれも気をつけて欲しいものだ。
それにしても、ニシキベラは釣れたものの、今日釣ったネンブツは多分100尾を越えただろう。何とかならないものだろうか、帰りの車の中ではそんな事ばかり考えていた。

おしまい

(※今年一番の暑さとなったこの日、三重県南部に今年初めての赤潮が観測された。





TOPに戻る