基礎プログラム

 

誰でも犬を飼い始めて、しばらくの間は服従訓練や芸を覚えさせる事に熱心なものです。 しかし、犬が大きくなってくるにつれて熱も冷め、唯、漫然と世話をしたり、きままに可愛がったりするようになりがちです。 問題を抱える飼主には特に、この傾向が強く見られ犬との関係が、こじれてしまっていることが少なくありません。 さまざまな問題行動を治療する際に、まず飼主と犬の関係を改善する目的で「基礎プログラム」と呼ばれる基本的なトレーニングを行います。 このトレーニングは、簡単な号令と犬が大好きなおやつ(報酬)を利用して、飼主と犬の関係を再構築しょうとするものです。 問題行動の治療のみではなく、問題行動を予防する上でも有効な方法であるので、困っている人は活用してみてはいかがでしょう。

≪基礎プログラムの目的≫
基礎プログラムと一般的な服従訓練方法との間には大きな違いがあります。 服従訓練では飼主の号令に対して犬を即座に、かつ間違いなく従わせることが第一の目標となります。 犬は、飼主の号令だけでなく仕草や表情まで読み取ろうと必死になるし、もし飼主が叱りながら教える場合は、叱られるのではないかという恐怖で緊張する事すらあるものです。 他方、基礎プログラムの目的は、まず飼主と犬が楽しく時間を過せるようになることであり、さらに重要なのは困った時はいつでもリラックスして飼主に指示を仰げば安心なのだということを犬に覚え込ませることなのです。 基礎プログラムでも「お座り」や「伏せ」などの簡単な号令を利用しますが、犬は「お座り」の号令に対して「伏せ」をしても、リラックスしているならば、御褒美が与えられるのです。 飼主が号令を与える際も、決して厳しい口調で叫ぶのではなく、犬がリラックスして飼主に集中できるよう優しく話し掛けねばいけません。 こうして強制ではない信頼関係を培っていくのです。 飼主の家族全員が参加して基礎プログラムを実践し、犬の成長に合わせた健全な信頼関係が育まれていけば、多くの問題行動は未然に防がれるでしょうし、また既におこってしまった問題行動を治療していく上でも大きな手助けとなる事でしょう。 このプログラムの目標は犬が喜んで、あなたの号令に従って落ち着いて自分の場所に、じっとしていることが、できるようになることです。 これは、すべての問題行動を治療する上で大変重要なことなので、あなたも犬と一緒に頑張ってみて下さい。 犬が年をとっていても心配する事はありません。 必ず覚える事ができると信じて、根気よく続けることが大切です。

≪このプログラムで使う御褒美≫
このプログラムでは、御褒美を使いながら犬に楽しい思いをさせて号令に従うことを学ばせます。 御褒美となるものは犬が大好きな、おやつです。 ただし、御褒美として一回に与える量は少ないので、ちぎって与えることのできるチーズやハム、乾燥したレバージャーキーなどが適当でしょう。 ここで御褒美となる、おやつを決めたら今後は、この練習の時だけに、このおやつをあげるようにして犬が、このおやつに飽きないようにして下さい。

≪このプログラムで使う号令≫
このプログラムでは、「おいで」「お座り」「伏せ」「待て」という号令を使います。
犬がまだ、どれもできない場合は「お座り」から教えてみましょう。 このプログラムは「お座り」や「伏せ」の号令に忠実に従う事を目標としているわけではないので、犬が「伏せ」の号令に対して「お座り」をしても構いません。 あなたの号令に集中して従うという犬の気持ちが大切なのです。

≪このプログラムを実施する時間≫
最低でも一日二回、朝晩10分ずつ練習をしましょう。 実施する時刻はいつでも構いませんが、できれば食事前の、お腹が空いている時が良いでしょう。

≪具体的な練習方法≫
まず御褒美となる、おやつを細かく、ちぎって15個ほど片手に持ちます。 片手で持ちきれない場合は大きすぎますので、例え犬が大きくても1個は親指の半分くらいのサイズにして下さい。 落ち着いて、くつろいで犬の名前を一度だけ呼びます。 あなたが、おやつを持っている事に気付けば犬は、とんでくるはずです。 そこで、あなたはおやつを持った手を後ろに回して隠した上で「お座り」と号令を出します。 犬が号令に従えば「良い子だね」と、ほめながら直ちに御褒美を一つだけ与えます。 もし、犬が「お座り」という号令の意味を知っているのに座らなかったり、興奮しすぎて収拾がつかなくなったら、この練習は直ちに終了します。 犬が、どんなにおやつを欲しがっていても、あなたは30分ほど犬を無視しなければなりません。 30分ほど経って犬が落ち着いたら、改めて練習を再開して下さい。 何回か練習すれば、犬は落ち着いて「お座り」をすれば、おやつをもらえることを学ぶはずです。

練習をする際は、あなたは犬のすぐ前に立たねばなりなせん。 最初の内はあなたの方が犬と対面するように移動して下さい。 また、練習の際に犬を撫でたり余計な言葉をかけない様にして下さい。 犬が御褒美や、あなたの号令に集中できなくなってしまいます。 又、練習は必ず床の上で実施して下さい。 ソフャーやベッドといった犬の、お気に入りの場所での練習は好ましくありません。 あなたは犬に命令すると思ってはいけません。 命令口調で、きつく号令を出すと犬は緊張してしまうでしょう。

この練習の目的は犬を落ち着かせる事にあるのですから、あなたは犬に話し掛けるようにゆっくりと優しい声で号令を出してあげて下さい。 くれぐれも号令よりも先に御褒美をあげてはいけません。 犬はおやつをもらわなければ、動かなくなってしまいます。 「お座り」ができたら次に「伏せ」をさせてみて下さい。 うまくできたらまた御褒美をあげます。 犬が「お座り」と「伏せ」の区別ができないのならば、それでも構いません。 その場合は、場所を変えて「お座り」をさせてみて下さい。 続いて「待て」と号令をかけて一歩だけ後ろに下がってみて下さい。 犬が落ち着いて待っていられれば戻ってまた御褒美をあげます。 犬がついてきてしまったら、又「お座り」を命じます。

こうして何か命じて犬がそれに従った場合は、常に御褒美をあげて下さい。 最初の内の練習では、ここまでのことを何度か繰り返して練習を終えて下さい。 必ず上手くできる号令をかけて、犬もあなたも楽しい気分でおわらせて下さい。 最後には「終わり」と言いながら手を軽く叩いて犬を開放し、思う存分撫でて可愛がってあげて下さい。

ここまでのことが簡単にできるようになったならば、与える指令を徐々に難しくしていって下さい。 「待て」をさせて、あなたが隣の部屋にいっても落ち着いて5分ほど
「お座り」をしている事ができるようになれば完璧です。 犬が興奮しやすい屋外でも、やってみましょう。 もしあなたの他に一緒に暮らしている家族がいるならば、その人たちにも参加してもらいましょう。

くれぐれもあなたが焦ってはいけません。 練習する際は必ず途中に簡単な号令を織り交ぜて、犬を励ましてあげて下さい。 きっと犬は、この練習時間を楽しみにするようになるはずです。 最初のうちは、うまくいったら必ず御褒美をあげなければなりませんが犬が学習して簡単に、できるようになってきたら御褒美を、あげる回数を減らしていきましょう。 いつ御褒美をもらえるか、わからない状態の方が学んだことを忘れないものなのです。

くれぐれも犬がうまく、できないからといって練習中に叱ってはいけません。 楽しいはずの時間が、犬にとって憂鬱な時間となってしまいます。 大切なのは、犬が喜んであなたの号令に従うことなのです。 この練習を通じて犬が落ち着いて、あなたの号令に従うことができるようになれば、練習の回数を減らして構いませんが、時々は練習を繰り返してみて下さい。 犬は、あなたと楽しく過すこの時間を楽しみにしているはずですから。 この練習が実を結ぶか否かは、あなたにかかっているのです。 犬と、より良い関係を築き直すために是非頑張って続けて下さい。

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