番外編 − うにの探偵家業 

 

電話のベルが鳴っている。

飲み過ぎてぼやけた頭で自分の居場所を考えてみる。

隣にぬくもりを感じて、尻尾を横にずらす。

見覚えの無いどこか疲れたような女が、だらしない寝顔で横たわっていた。

「舌出てるぜ」一瞥しながら脱ぎ散らかしたハーネスの中でまだ鳴っている携帯を取り出す。

「兄貴ぃ、なにやってんすか?今何処っすかぁ?」 いきなり飛びこんでくる軽薄な声。

「どうした?」低く押さえた声で答える。

「あねさんから連絡が入ってまして、今すぐ秘密基地に行って欲しいって言われました」

ハンモックの横の腕時計を取り上げて時間を確認する。朝の4時を少し回ったところだ。

「こんな時間にか?」不機嫌そうに尋ねると「へい、大至急なそうです」少し不満そうな声で

いくらが答えた。

無言で電話を切って、ハンモックでまだ寝ている女を叩き起こす。

「なによぉ、、まだ夜中じゃないのさっ。」なじる口調でのろのろと身支度をはじめた女を無視して

バイトを口に運んだ。

「今の気分はラクサトーンだな」甘ったるいバイトを舐めながら呟く。

高層ゲージの窓の外には、狂気の街並みが暗闇に静かに沈んでいた。

 

俺の運転する車は六本木の鼬穴付近を通過して、もうすぐいたち返し坂にさしかかっていた。

車戴給水ボトルに見せかけたコンピューターが点滅する。

「こんな時間に検問か?まさかいたち取りでもないだろうし」

スピードを落として左側へ車をよせる。やがて目の前に赤灯の点滅が見えてきて、車を止める。

「検問にご協力下さい。後のトランクを開けてもらえませんか?」

若い警官が懐中電灯で車内を照らしながら言った。ちらっと横顔を見る。いかつい顔のくまどり

のない奴だ。最近の東京はファームに関係なく、色んなイタチが生活している。

軽く頷いてトランクを開ける。

 

「うわぁー!し、、死んでるぅー!!」

トランクを覗いた一人の警官がすっとんきょうな声を上げながら転がるように走り出してきた。

ざわつく回りの警官と、突き刺すような目で車の前に立ちふさがる老いた刑事風のイタチ達。

「チッ」舌打ちしながら車を出ようとする俺に

「動くなっ!!!」 一斉に俺に向かう冷たい銃口、銃口、銃口。

ゆっくり両腕を上げながら敵意が無いことを相手に伝える。

「死体を揺り動かして見ろよ」苦笑しながら俺は言った。

「す、、すいません。生きてましたぁ。爆睡してたみたいです。すいませんでしたっ!」

あの女は早くどっかで降ろそう。苦笑しながら、アホ面して敬礼している警官をバックミラー越に

見つめながらアクセルを乱暴にふかした。

 

「お帰りっす。奥であねさんがお待ちです」眠そうな顔のいくらが出迎えてくれた。

車のKeyをいくらに渡して、秘密基地の奥に向かう。足取りは軽くない。

嫌な予感に、尻尾が疼いてくる。ドアを開けるとCooが待っているはずだ。

無言のまま奥のドアを開ける。窓がないその部屋はいたる所に隠し出口がある。

入ると僅かにCooの臭いが漂ってきた。

「おかえりなさい、早速だけどでかいヤマが飛び込んできたわ。」

Cooは可愛い俺のパートナーだ。いつでも冷静でいれる女。優しさもあるが

小さい体に似合わず、度胸はいっぱしの男よりも優れている気がする。俺の荒んだ

生活にも文句一つ言わないでいる。

それが俺には居たたまれないところでもあるのだが。。。

 

「今回は面白いわよ。久々にワクワクするわ」ちょっぴり黒い鼻をヒクヒクさせながら

俺を見つめてCooが言う。 嫌な予感が当たったようだ。

「聞かせてくれ」さっきまでの女の移り香を悟られないように少し離れた所で覚悟を決めて

尻尾に力を入れた。

 

続く、、、かな??