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旅立ち |
おいら達には自由はないんだろうか?あんなに皆と一緒に居たかったのに、おいらは
連れ出されてしまった。ちっちゃなダンボールに入れられて、長いこと揺られて、見たことも
ない所に連れてこられた。
「さぁ、ここが新しいお家だよ、そして君の名前は今日から”うに”って言うんだよ」
「。。。。。。。。。」
「ゲージも新しいから、気持いいでしょ?ね?うにちゃん」
「。。。。。。。。。。。。。。。。。。」
「お迎え当初はあんまりかまわないで、そーっとしておくって本に書いてあったよね?」
「そうね、環境が変るとストレスになるらしいから、今日はそっとしておいた方がいいかもね」
「この仔が人間の言葉を理解できたらいいのにねぇ」
「。。。。。。。。。。。」
誰も居ないケージでおいらは丸まって考えた。
もうあそこには戻れないんだろうか?いたち兄さん達にはあえないんだろうか?
おいらはぶたれながらここで暮していかなくてはいけないんだろうか???
”うに”ってなんだよ? 周りには誰もいない、、、、一人ぼっちのおいら。
大きな不安に押しつぶされそうになって、思わず叫んだ。「ぶぇーっ!!」
「どうしたの?うにちゃん??」
びっくりして声がする方に振り向いたおいらに見えたのは、不思議な光に包まれた小さな小さな
初めて見る形をしたフワフワしたものだった。
「。。。。シュイーン!!」 恐くなったおいらは、口をあけて威嚇したんだ。「なんだぁ!コイツ」
小さな光に包まれた物は、ゆっくりおいらの頭の上をフワフワ飛んで、ゲージの隅に止まった。
「驚かせてごめんね、僕はクロ。宜しくね」
「クロ?」
「うん、僕はね前にこの家に住んでた雑種の犬のクロっていうんだよ。」
「いぬ???」
「そう、僕はここであの人達に可愛がられて、幸せに暮らしてた犬のクロ。今はもうあの人達には
見えないらしいんだけどね、僕にはまだあの人達が見えるんだ。不思議だけどね。」
「なんで?おいらにはちゃんと見えるのに。。。」
「もうずーっと前に、僕は死んじゃったらしいんだ。あの人達が随分悲しんだから、なんとなくいつも
一緒にいたくって、、、。でもね、本当は行かなくっちゃいけない所があるみたいなの。やっとそこに
行けそうになったんだよ。」
「ふーん、そうなんだ。。。。」
「今日からうにちゃんが、僕の代わりにあの人達と一緒に暮らしていくんだよ。」
「嫌だぁー!もとの所に帰るんだもん!こんなところ絶対にやだー!!」
「うにちゃん、よーっく聞いてちょうだい。人間は悪い人ばかりじゃないんだよ。そして、君なら人間と
幸せに暮らしていけるんだよ。君が生まれるずーっと前から、それは決まっていた事なんだよ」
「誰が決めたんだよーっ!そんな事!」
「さぁ、誰だろうねぇ。僕にもよく解らないよ。でも、僕はこれからそれを決めた物のところに行くんだよ。
君が来てくれたから、安心して行けるんだ。後は頼んだよ」
「なにを勝手な事ばっかり言ってるんだぁ!全然わかんないよぉ。」
「君もそのうちにキット解るようになるよ。僕もそうだったようにね。人はそれを運命って言うけど
きっと運命なんだ。、、、、そろそろ行かないといけない。。。。困った事があったら、いつでも僕を
呼んでね。もう会えないかもしれないけど、見えなくっても、いつでも話せるからね。」
光がいっそう強くなり、フワフワした物はゆっくり上昇していき、やがてフッと消えた。
その瞬間、おいらの体がピクンと震えて、何かが生まれた気がした。どこか解らないけどおいらの
体の中に、なにか不思議なものが宿った気がした。。。。。
「おいらは、うに。あの人達と暮らしていく、うに。うに、、、うに。。。うになんだ!」
不思議な気持に包まれて、自然に目を閉じる。
あの人達と幸せそうな顔の黒い生き物がこっちを向いて手を振っていた。
黒い生き物がおいらに向かって話しかける。
「うにちゃーん、僕 クロだよー!!後は頼んだよー!!」
自然に目頭が熱くなって、叫んでいた。
「クローっ! おいら、幸せになるからねー!!心配しないでゆっくり休んでいいよー!」
遠くであの人達の幸せそうな笑い声が聞こえて来た。