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真夜中の咆哮

 

人間の言葉が分かる様になっちまったおいらは、しばらくショックでグターっとしてしまった。

お店の人はぶつかったショックで放心状態なのだろうと話していたが、外傷よりも心の傷の

ほうが遥かに大きい。まだ人間が何を話しているのか半分も理解できないけど、半分はなんと

なくわかっちゃう、、、、、おいらの名前はブーちゃんなんだとさ。。。をいをい、、あんまりだよ。

しばらくはおいら一匹でお店の裏にある水槽に治療も目的で入れられている。ここはお店の

喧騒も聞こえてこないし、色々なことを考えるのにはうってつけの場所だ。

「おいらにはおまえらの話していることが分かるんだぞ」そっと声に出していってみる。

「ウギュググ、ビエィビエィシャー。。。。。。」どうやら話しは出来ないらしい。どうがんばっても

口から出てくるのは立派な米国流イタチ語だ。そんなおいらがなんでこの国の人間の言葉が

分かるんだろうか?

 

あの日、横になってた人間の背中から飛び出してきた白っぽい煙のようなものが原因なん

だろうか? いったいおいらはどうなっちゃうんだろう。。。。。兄弟や先輩達は心配してくれて

るのかなぁ? おいらの話しを信用してくれるだろうか?  はぁぁ。。。。寝よ。

 

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。「ん?」

「先生どうでしょうかね?ブーちゃんの怪我の具合は?」

「どれどれ、ちょっと見てみようかね。ブーちゃん、寝てるところちょっとごめんね」

バタバタバタバタぁ。 なにするんだぁー、はなしぇー!!このイタチでなしー!!!

「ここを押さえると痛いかなぁ? 大丈夫みたいだね。 じゃぁこっちの足はどうかな?」

「おいらは大丈夫だからほっといてくれー<シャーーー」

「あらあら、元気そうねぇ。シャーシャー言ってますね、先生(笑)」

「チキショウ、噛んでやるぅー、がぶぅー、、あれ?カワサレタ。ん!あの時の人間!!」

「ははははは、こんなに元気なら大丈夫そうだね」

「暫くはここでも良いけど、もう皆と一緒にさせても大丈夫でしょ」

「よかったねー、ブーちゃん」

こいつはおいらの首になんか刺した悪い奴だ!くっそう、噛んでやるぅ、噛んでやるぅ。。。

「こらこら、ブーちゃん。先生にそんな事したら駄目でしょ。めっ!

お願いだから首もってぶらーんさせるのは止めて。ね。。力が抜けるぅぅ。。。。

 

その後暫くしておいらは元の生活に戻された。ドアの前のいつもの定位置。首につけられた

居心地悪い輪っかは「首輪」とか言うらしい。赤の首輪でお客さんをお迎えするのが

おいらの役目なそうだ。人と接しているとだんだん人語が分かってくる。みんな勝手なことばっか

いってやがる。おいらの事をデブだとか言う奴には、容赦のない「がぶぅ」をお見舞いさせて

やる。逆に可愛がってくれる奴には、自然と耳を舐めてあげたくなる。

 

どうやらここは、おいら達イタチ目当てでやってくる人間共が自分の気に入った仔を連れて帰る

仕組みになっているようだ。 おいらの友達だった黒いあの仔も、誰かに連れていかれたんだな

って妙に納得した。だから先輩達が最初に教えてくれた、「ここに居たかったら目立たず、時々

噛んでやれ」って言ってたんだな、うん。

 

でも何故おいらはまだここに居るんだろう?人間に好かれないタイプのイタチなんだろうか?

別に連れていかれたい訳じゃないし、この生活も面白いからどうでもいいんだけどさ、フン。

 

ある晩、ここに一番長く居る先輩イタチ兄さんに話しを聞いてみた。

「ねぇ、兄さん、兄さんはなんでずーっと長い間だここに居るの?外には行きたくないの?」

「小僧、外なんかに憧れるのは馬鹿な野郎か、間抜けなイタチ良ししかいねーよ」

「なんでさー、兄さんは外に行った事ないでしょ?なんでそんな事言えるのさぁ!」

「。。。。。。。。。。っふ」

「??なに?」

「外の怖さや、嫌さをいっぱい経験してきて、ここが天国だと思っている奴も、ここには居るのさ」

「兄さんは外に行った事があるの?」

「俺がここに初めて連れてこられたのは随分前の事だ。小僧と同じ位にここに来て、最初は

ドアの傍の水槽で人間に抱っこされたり、一緒に来た仲間たちと楽しく暮らしていたのさ」

「ふーん、おいらと一緒だね」

「ある日、先輩が教えてくれた。外に行きたかったら人間に好かれるように噛むな、目立て、

アピールしろ!ってな」

「うん、うん」

「なんにでも興味があったし、一緒にここに来た仲間は次々と居なくなっていった。俺は次第に

一人になる怖さを感じ始めた。 そこで外に出ようと決心した訳だ。」

「うん」

「人間が覗きにくる度に腕にしがみついて、抱っこされた時は耳を舐めてあげて、随分人気者

だったさ。」

「へぇー、そうなんだ。意外だなぁ」

ギロッ。

「あっ、、、いやぁ。。。で、どうしたの?」

「フフフフッ。まぁ許してやるか。そんな事を何日か繰り返していたある日、俺はとうとう外に行く

事になった。選んだ人間はとっても優しそうな目をして俺を抱きかかえてくれた。これからどうなるの

かも分からなかったけど、新しい外の世界にわくわくして震えてしがみ付いてたっけ」

「うん、うん。それから?」

「俺はアルと名づけられて随分可愛がられたよ。俺も外の世界が楽しくって、毎日が冒険だった。

その人間はイタチを世話するのが初めてで随分大変そうにしてたけど俺もなるべく噛まないように

協力したつもりなんだけどな。」

「偉いね、兄さん」

「アホ、そんな問題じゃないんだよ。ったくガキはしかたねーなぁ」

「なんだよー、小僧とかガキとかさぁ。。。。」

「じゃぁもう話しは終わりだ。帰んな」

「ああああぁー、ごめんよぉ。ねぇねぇ意地悪しないで話してちょうだいよぉ」

「しょうがないな。大人しく聞いてろよ。 そんな楽しい日々もあの日を境に一変した。知らない

人間がやってきて随分俺を虐めてくれたよ。鼻は叩かれるし、顔は押さえつけられるし、それに

毎日水につけやがって俺の体を洗うのさ。最初は我慢してたけど、そのうち切れて俺はそいつを

噛んで噛んで噛みまくってやったよ。 ついでに最初の人間にも噛みついた。。。。だってそいつ

があいつを連れてきて、俺が虐められるようになったんだぜ」

ふぅ、、、、一息ついて兄さんは目を伏せた。

「俺はそいつが憎かったわけじゃないと思う。でも怖かったんだ。なにをやるのでも叩かれた。

恐怖が体を支配して、俺は動くものが怖くなってきた。帰りたいと切実に思った。地獄のような

日々が続き、いつかしらか最初の人間も俺をかばってくれなくなっていた。そして俺は違う場所

に移された。小さな箱に入れられて随分と揺られて、着いた所には知らないイタチ共が大勢

俺を待っていた。俺は皆と仲良く出来なかった。なんせ、動く物が怖くて仕方なかったからな。

皆とも上手くいかないまま、そこの人間も俺をぶった。なんで俺の鼻を人間共はぶつんだ?

だからこっちも噛みついた。思いっきり血が吹き出るまで噛んで、噛んで、噛みまくった。

在る日、噛みついていたら思いっきりぶたれて、俺は気を失っていた。気がついたら懐かしい

匂いがして、ここにいたって訳さ。それから俺は、外も、人間も大嫌いになったんだ。

なにもいいことなんか無いぜ、外の世界なんかにはよぉ」

 

 

あの黒い仔はどうしているんだろうか?あの仔もぶたれて辛い思いをしているんだろうか?

人間はなんでぶつんだろう?俺達のこと嫌いなのか?虐める為に連れていくのか?

虐められるために俺達は生まれて来たのか? この感情はいったいなんなんだろう?

いてもたってもいられない。

畜生!!ぶびぃーーーー!!!!!

 

真っ暗な空間に、おいらの叫びがすい込まれていった

 

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