パスのお話

今回は、父が子供の頃に飼っていたパスという犬のお話をします。
その当時はぺスとかパスとかいう名前の犬がよく居たようです。最近は聞かないですね。

犬はほとんどそうだと思いますが、パスは車の助手席に乗せてもらうのが大好きだったそうです。
父の家は商売でトラックを使っており、2番目の兄に当たる私の伯父が、いつも運転していました。
他の人が運転している時は無反応なパスですが、その伯父が運転するとエンジンの音でわかる
らしく、トラックを追いかけるのです。諦めるだろうとそのまま走りつづけても、どこまでもついて来る
ので、根負けして乗せてやると、得意そうな顔をして助手席にお座りをしていたそうです。

パスがついて行くのはトラックだけではありません。
父が学校に行く時も、よく後をついて来たのです。他にも兄弟が居るのに、何故か父だけ。
ある日、いつものようについて来るのでそのまま歩いていると、パスは駅までついて来ました。
父が改札を入ると、パスも続いて入ります。ここまではよくある話です。
電車が来たので乗り込むと、パスは当たり前の顔で乗ってしまいました。
父が知らんふりをしていると、次の駅でパスは降りてしまいました。学校から帰ると、パスは何事も
無かったように庭で寝ています。
でも、隣りの駅から家までは、途中に川があって鉄橋が架かっています。(隅田川)
まさか泳いで渡る訳はないし・・・。
考えられるのは、反対側のホームに行ってまた電車に乗って帰ってきたと言う事です。
パスはそれで味を占めたらしく、何度も電車に無賃乗車したそうです。

しかし、電車の乗客も駅員もとがめる人は皆無だったそうです。
シェパードくらいの大きさだったのに。
今では考えられないですね。
昭和14〜15年の東京下町での本当にあったお話です。

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