| Top |四季のうつろいTop | |
|
|
|
「カンアオイ」という名が必ずしも1種類の植物を意味しないことは”2.カンアオイってなに!”で述べたとおりです。 ほんとうの「カンアオイ」とは 最も狭い意味の「カンアオイ」という名は何をさすのでしょう? 最も狭い意味の標準和名「カンアオイ」は学名を Asarum nipponicum 、別名をカントウカンアオイという植物のことです。この「カンアオイ」の学名は少し前まで Heterotropa nipponica でした。 今では研究が進み Heterotropa 属は、 Asarum 属に統合されこの学名を使うことが多くなりました。
写真上:カンアオイ(カントウカンアオイ)の葉と花・蕾、葉模様は多種ある。 写真下左:ガク片1枚分を切り取ったもの。口輪、ガク筒内壁の隆起線などの特徴。 開花時期は秋9〜10月、3枚位の鱗片に包まれた芽から蕾が伸び出し開花する。花は受粉後も、翌春まで長く形が変わらないので開花時期を誤認しやすい。花は口輪が白くガク片がやや反り返る。分布は関東地方南部から静岡県。 江戸時代に園芸植物化された「細辛」の原種は、このカンアオイ(カントウカンアオイ)が多いと言われています。 カンアオイという名は 今でも、Heterotropa 属だった植物をさすのによく使われます。 カンアオイの全体像は ”広い意味のカンアオイの仲間”は統合された Asarum 属の植物をさします。従来は形態や分布の違いで世界中の種類を、5つの属(フタバアオイ属、ウスバサイシン属、オドリコサイシン属、カンアオイ属、アメリカカンアオイ属)に分けていました。 しかし現在は属を分けるほどの差がないとして、1つの属にまとめる考え方が主流です。すなわち全ての種類をAsarum 属・アサルム属に含めています。 従来の5つの属は、属より下の区分である節などとして残されています。これらの”広い意味のカンアオイの仲間”は北半球のヨーロッパ大陸、アジア大陸、北アメリカ大陸にまたがって分布しています。 なお、Asarum 属には近縁な属として中国産の Saruma 属・サルマ属があります。 Saruma 属はサルマ・ヘンリー(タカアシサイシン)ただ1種を含む属です。この植物は黄色い、3枚の目立つ花弁のある花を咲かせます。 Asarum属とSaruma属はDNAの比較でも近縁で、2つの属をまとめてサルマ連とされます。サルマ連が最も広く捕らえたカンアオイと言えるかもしれません。 ”広い意味のカンアオイの仲間”の全体像をつかむには、従来の5属の区分がわかりやすいので、その特徴、主な種、分布、体細胞染色体数などをまとめてみます。この5つの”属”は”節”と読み替えても良いかもしれません。 1,フタバアオイ属 Asarum ・・・
2,サイシン(ウスバサイシン)属 Asiasarum ・・・
3,アメリカカンアオイ属 Hexastylis ・・・
4,カンアオイ属 Heterotropa ・・・
5,タカサゴサイシン属 Geotaenium ・・・
5つの属の分布範囲の概略を地図の上に示してみました。
・フタバアオイ属は、たいへん広い範囲に分布します。また1つの種が広い範囲に分布する傾向があります。
・サイシン(ウスバサイシン)属は、日本海を取り巻くように、日本、韓国、中国、サハリンに分布しています。この属は比較的変異の幅が狭く、2〜3の種と変種が知られています。
・カンアオイ属は、日本の本州以南、佐渡、四国、九州、南西諸島、中国大陸、台湾、ベトナムに分布する。
・アメリカカンアオイ属は、アメリカの東海岸側に約10種が分布する。
・タカサゴサイシン属は、中国大陸に2種、台湾・海南島に1種が分布し、計3種が知られているだけです。 ・サルマ属の分布もついでに示してみましょう。
カンアオイの仲間は北半球の亜熱帯から冷帯の落葉樹林の下草として分布していることが多いようです。落葉樹林の分布とカンアオイの仲間の分布が、一致するという指摘があります(日浦勇)。 同じウマノスズクサ科でもウマノスズクサの仲間は、熱帯にも分布を広げ、大型になる多くの種を分化しています。また一部の種はアフリカやオーストラリアなどカンアオイの仲間が分布しないところにも分布を広げています。 ウマノスズクサの仲間は、つる性のものが多く、日当たりの良いところを好むものが多いことも、カンアオイの仲間とは、性質がだいぶ異なるようです。ただし、カンアオイの仲間にも例外的に、日当たりの良い畦道などを好むヒメカンアオイの個体群があるといいます。 ウマノスズクサ科の花には、サルマ・ヘンリーを除き、花びらがありません。カンアオイの仲間も、ウマノスズクサの仲間も、ガク片の変化した特異な筒状の花形と腐肉臭・腐臭で虫を呼び花粉を運ばせているのは、共通しているようです。ただし、ウマノスズクサの仲間の花の方が形、虫との関わり方ともより高度に特殊化しています。 日本のカンアオイ
〜ウェブ サイト〜 ・「寒葵分類一覧表」・・・充実した写真付き一覧表。 ・「葵の御前会議帳」・・・写真付き掲示板です。質問に答えてくれます。 ・「野の花賛花・・自生の姿を追って」・・・多くの種を自生地で捉えているのはすばらし。 〜多くの野生種が紹介されている趣味の本〜 「史の花:ときのはな」寒葵・細辛写真集・・・比較的安価なのでお薦めです。 〜専門的な本〜 日本産Asarum属全般に関する最新の報告は、 この本には検索表と1種ごとの解説があります。図はありません。取り上げられている種の総数は、私が数えたら50種1亜種12変種でした。ずいぶん細かく分類されていることがわかります。これでも、多くの種類が漏れているという指摘もあります。この本はすべて英文で書かれ、高価なので、興味のある方は、図書館で探してみてください。 この本の菅原敬による検索表は日本産 Asarum属を2亜属3節に分類しています。
|
|
いくつかの種の紹介:葉(普通葉)
![]()
![]() 上段左から、カントウカンアオイ、オトメアオイ、ヒメカンアオイ秋咲き、 左から、タマノカンアオイの葉脈、ヒメカンアオイ春咲き、 葉の形は変化しやすく、葉模様は同一種でもちがいがある。葉の厚さはタマノ>カントウ>オトメ>ランヨウの順に薄くなる。ヒメはやや小形で葉の先が尖らないことが多い。ランヨウは艶があり、葉の基部が広く開き、耳状に左右に飛び出す。ランヨウでも株によって、葉の大きさによって、そのような形にならないことも多い。タマノは細い葉脈までくぼむ。 花
![]() ![]() ![]() 上段左から、カントウカンアオイ、オトメアオイ、ヒメカンアオイ秋咲き、 花びらのように見えるのはすべてガク片です。花びらは退化してありません。カントウのガク片はやや反り返る、開花直後のガク片表面に毛がある、口輪が白いなどの特徴がある。イズミはガク筒の口が広く、ガク筒が太く短い。ヒメは花も小さい。
これも、オトメアオイ?花が大きく、ガク筒が長く、くびれがない。ズソウカンアオイかもしれない。ガク筒の口が三角形、ガク片の境目がくぼむなどの特徴がありますが、ほんとうは何という種なのでしょう。 もっと詳しく見てみましょう。 |