|
ヤマアジサイの東・西に遺伝的違い! ヤマアジサイは分布域が広い。福島県最南部から屋 久島までと、朝鮮半島南部および済州島に分布する。野生集団の花色が鈴鹿山脈を境にして、東側は白色に対し西側は青色である。花色は異なっても単一 の種とされている。紹介する論文ではDNAレベルで初めて東西の差を発見したという。葉緑体遺伝子の塩基配列に東西の差。四国のヤマアジサイは特異。 論文は上町達也(滋賀県立大学)ほか2014年発表、英文でタイトルは、 『 Phylogenetic Relationship of Hydrangea
macrophylla (Thunb.) Ser. and H. serrata (Thunb.) Ser. Evaluated Using
RAPD Markers and Plastid DNA Sequences 』 |
|
受賞おめでとうございます 上記論文で、上町達也准教授(滋賀県立大学環境科学部生物資源管理学科)は、園芸学会平成27年春季大会において、平成26年度園芸学会優秀論文賞を受賞されました。 |
|
『RAPD マーカーと葉緑体 DNA 配列によるガクアジサイおよびヤマアジサイの類縁関係の解析』 紹介は興味ある部分のみ。文責は川島。詳しくは原著論文を見てください。論文ではRAPD解析と葉緑体遺伝子matK および rbcL の塩基配列解析が行われている。ここではmatK 、rbcL の解析結果を取り上げる。またガクアジサイ、エゾアジサイも解析されたが、ヤマアジサイを主に紹介する。
1.解析された植物:アジサイの品種は自生地で発見されたものが多く、品種を特定すれば自生地が特定出来る。表1.
2.概要
1)RAPD分析、葉緑体のmatK、rbcL 遺伝子の塩基配列の分析を行っている。 2)ヤマアジサイはガクアジサイおよびエゾアジサイより遺伝的多様性が高い。 3)ヤマアジサイは2つのグループに大別される。 (1)東部グループ:東海地方以東に分布する。 (2)西部グループ:近畿地方以西に分布する。葉緑体遺伝子matK, rbcL の解析結果から、さらにいくつかのサブグループに分けられる。 4)四国のヤマアジサイは他の西部グループのヤマアジサイと遺伝的に区別される。 5)東部グループのmatK, rbcL の塩基配列はガクアジサイ、エゾアジサイと同一であった。西部グループとは異なる。 6)東部グループ、ガクアジサイ、エゾアジサイのmatK 塩基配列に同一の重複配列を持っていた。その大きさは、6bp (GGTTAT)である。 7)西部グループや他のアジサイ属植物ではこの重複配列は認められなかった。 8)ヤマアジサイは東部系統と西部系統に分かれる。東部系統とガクアジサイ、エゾアジサイは単一のクラスターとなる。 9)西部グループ内の差異:四国の個体(分析されたのは3個体)は1塩基置換で他の西部グループ+韓国産と遺伝的に区別される。 3.matK の塩基配列の分析 6塩基対(GGTTAT)の挿入による重複と2つの1塩基置換があった(表3)。 東部グループ(アマギアマチャを含む)は6塩基対重複を持つが、西部グループ+韓国産はこの重複を持たないので2群に分かれる。分析された他のアジサイ属の植物種でも、この重複配列は認められない. 四国産個体を除いて、西部グループ+韓国産はmatK の塩基配列が同一である。四国産個体は独自の1塩基置換を持つ。
4.rbcL の塩基配列の分析 ヤマアジサイの固体間で1塩基置換が4ヶ所で見つかった(表4)。内2ヶ所は四国産の3固体のみが保有する。 四国の個体を除いて、西部グループ+韓国産に1塩基置換が認められた。 表3.
5.西部グループと韓国産ヤマアジサイの関係 四国の個体を除く西部グループと韓国産は共通の祖先を持つと考えられる。 6.まとめ
1)東部ヤマアジサイ、ガクアジサイ、エゾアジサイはmatK・DNAに6bpの共通した重複がある。西部ヤマアジサイとは異なる。 2)西部ヤマアジサイ+韓国ヤマアジサイは装飾花のガク片にアントシアンを含み、青花である。 3)東部ヤマアジサイは装飾花のガク片にアントシアンを含まず、白花である。 4)西部ヤマアジサイ+韓国ヤマアジサイはmatK分析で1つのクラスターになるり、共通の先祖から別れたと考えられる。 5)アマギアマチャは東部ヤマアジサイのグループに属する。 7.この論文には最後にコメント?がある 署名は無いが共著者の大場秀章・東京大学名誉教授・植物分類学によるものと思われる分類学的なコメントである。大意は以下の通り。 2)サンプルの取り方に問題はないか。ガクアジサイやエゾアジサイはヤマアジサイとの交雑品でないという証拠など。 3)エゾアジサイは独立の種、あるいはガクアジサイまたはヤマアジサイの下位分類群と位置づけられている。*大場はガクアジサイとヤマアジサイを独立種と位置づけている。 4)3つの分類群は、異なる形態学的および生理学的特性および特定の分布域を持っている。ヤマアジサイ東部グループ+ガクアジサイ+エゾアジサイとヤマアジサイ西部グループの2グループに分かれる事の確実性はあるか。 5)アジサイ類の分類の見直しにはさらなる研究が必要と考える。 ・・・ §論文の詳細 詳しくは原著論文を見てください。 Phylogenetic Relationship of Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. and H. serrata (Thunb.) Ser. Evaluated Using RAPD Markers and Plastid DNA Sequences 「RAPD マーカーと葉緑体 DNA 配列によるガクアジサイおよびヤマアジサイの類縁関係の解析」 上町 達也・滋賀県立大学、水原 有理、出口 佳代子、新庄 康代、梶野 恵理子、大場 秀章・東京大学総合研究博物館 論文掲載誌「Journal of the Japanese Society for Horticultural Science 83(2)」, 2014年、園芸学会 ・・・
|