=クリスマスローズの雑学2=
1.八重の花、2.実生とメリクロン、3.水揚げ、4.青い花はできるか?
=クリスマスローズの雑学1=1.クリスマスローズとは、2.クリスマスローズとレンテンローズ、3.品種改良、4.オリエンタリスハイブリッドに関わった原種
=クリスマスローズの雑学3=1.有茎種交配関係図、2.無茎種交配関係図、3.チベタヌス
●1.ダブル(八重)の花について
クリスマスローズ(広義)の花の花びらは、ガクが発達して花びらのようになったものです。本来の花びらは、退化して小さな筒状の蜜腺という構造になり雄しべ束の外側に並んでいます。
クリスマスローズ(広義)の八重は、蜜腺がガクに変化し大きく発達したものだと云われています。ガクの性質を持つため散ることがありません。
そのため、クリスマスローズ(広義)の八重には、雄しべがありますが、多くの花の八重は、雄しべが花びらに変化しするので雄しべがありません。
クリスマスローズ(広義)のセミダブルは、蜜腺が散るという性質を残したまま花びらのように発達したもので、セミダブルの部分(内花弁)は1〜2週間で散ってしまいます。
クリスマスローズにおける最初のダブルであるパーティードレス系が発表された時は大変な話題になったと聞きます。しかしその後、栽培しやすいオリエンタリス系やニゲル系のダブル、セミダブルも発見され、ずいぶん普及してきました。どんな系統があるの拾い上げてみました。
a.パーティードレス系ダブル
・・・最初に販売された八重品種。原種トルカータスで発見された八重咲き変異を基に改良された品種群です。小型、多花といわれます。
ダブルの花は、内花弁散らない、蜜腺なし、雄しべ、雌しべ有り。暑さにやや弱い。冬は落葉し葉が少なく貧弱に見えます。春から秋に成長しますが、夏の高温で一時成長が止まるといわれます。
b.オリエンタリス系ダブル
・・・オリエンタリス ハイブリッドから発見された八重咲きをもとに改良された品種群。パーティードレス系より花が大きくボリュームがあり華やかです。改良が急速に進んでいます。
栽培はオリエンタリスハイブリッドシングルと同じでよく強健です。ダブルの内花弁は散らない、蜜腺なし、雄しべ、雌しべ有り。
原種デュメトラムの八重咲きが野生集団からから発見され、日本にも導入された。花は淡緑色で二重といった感じ、そのままでも充分鑑賞に耐える。交配親が1つ増え今後の展開が楽しみ。
c.オリエンタリスハイブリッド系セミダブル
・・・オリエンタリス ハイブリッドから発見されたセミダブル咲きをもとに改良された品種群。アネモネ咲きとも呼びます。
蜜腺が花弁化した品種、花弁化の程度は、蜜腺が少し大きくなり色ずくもの、ダブルの花と同じように大きく発達するものなど、株によりさまざまです。蜜腺は大きく花弁状に発達しても基部は筒状をしていることが多いそうです。一種の先祖返りです。
雄しべ雌しべは正常。蜜腺の変化した花弁は雄しべと共に2週間位で散り、シングル花となります。そのためマニア向けの品種とも云われます。
d.ヒデコットダブル系
・・・オリエンタリスハイブリッドから発見された八重咲き系。特徴は普通ダブル咲の花に無い蜜腺があることです。内花弁は散らない、雄しべ、雌しべ有り。ヒデコートダブルと表記することもあります。
e..インソムニアInsomnia系・・・?
f.インソムニア ハイブリッド系
・・・オリエンタリスハイブリッドとインソムニア系の交配種?コンパクト、丸弁、花弁が短いので重ねが厚く見える?
内花弁は散らない、蜜腺なし、雄しべ、雌しべ有り。
g.ニゲル系 ダブル
・・・オリエンタリス系 ダブルと同様で、ダブルの内花弁は散らない、蜜腺なし、雄しべ、雌しべ有り。
h.ニゲル系 セミダブル
・・・オリエンタリス系 セミダブルと同様で、蜜腺が発達した内花弁は散る、雄しべ、雌しべ有り。
*花の形成から見ると、ダブルは蜜腺の位置にガクが作られ花弁状に発達した花。セミダブルは蜜腺が花弁状に発達した花。ヒデコットダブルはガクが二重三重に形成されさ花弁状に発達した花、蜜腺に変化はないので。と云うことでしょうか?
クリスマスローズの雄しべが花弁化した千重咲きは発見されていません。ただどこかで、「ニゲルダブルの内花弁の先端に黄色い花粉袋があった」という記事を見たような気がします。
異なった遺伝的背景を持ったダブル同士の交配ではどんな花が咲くのでしょう。今後は各系統の特徴を残しながら、他系統の優れた性質を取り込んだ品種が作られることでしょう。
●2.実生苗とメリクロン
クリスマスローズでも品種名の付いた苗が出回ってきました。苗は1年〜2年栽培した後にしか花を着けません。ラベルの写真と同じ花が咲くのでしょうか?
品種名付きの苗は性質の異なる2種類に分けることができます。期待するものが、それぞれ違うようです。
a.実生苗
・・・自花受粉または遺伝的に近い親株同士の交配でできた種子から育てた苗です。ラベルの写真は親株の花です。苗は遺伝的に1株ずつ異なっているので、ラベルの写真と全く同じ花は、咲きません。
種苗会社は優良な親株をそろえ、できるだけ遺伝的ばらつきの少ない種子を採るよう努力をしていますが、それでも種子は少しずつ遺伝的に異なり、花の形、花の色、八重の花弁数など苗ごとに少しずつ異なった花を咲かせます。
ダブルやセミダブルの苗では、ダブルやセミダブルの花が咲く確率が%でしめしてあります。しかし%は、ラベルの写真と同じ花が咲く確率ではないことに注意する必要があります。
実生苗はどんな花が咲くかを楽しみましょう。自分が種を取って播いた時のように。
b.メリクロン
・・・優秀な親株の成長点を切り出し、ガラス器の中で組織培養をして増やした苗がメリクロンです。この苗は、いわゆるクローンであり、昔から行われている、挿し木や株分けと同じで、増えた苗は全て元の親株と遺伝的に同一です。
したがってメリクロンは、ラベルの写真通りの色や模様やダブルなどの特徴を持った花が咲きます。ただし、ダブルの花は株に勢いがないと貧弱なダブルや時にシングルになったりします。栽培には注意が必要です。また1年目の花は充分特徴が出ないこともあります。
*本当によい花を各ナーセリーともメリクロン化しない傾向があります。特に優れたものは、親株として手元に置きその実生苗を販売するのです。親株をメリクロン化すると他のナーセリーや育種家に利用され不利と考えるのでしょうか。ナーセリーや育種家はいかに優れた親株を持つかで、成果が左右されるのでこれも仕方のないことなのでしょう。
●3.クリスマスローズの水揚げ:「温浴湯揚げ(おんよくゆあげ)」
あなたは、クリスマスローズを花瓶に生けて、水揚げせずがっかりした経験はありませんか。
クリスマスローズは、そのまま生けてもしおれてしまうことが多く、水揚げの悪い植物の一つと云われているそうです。
そこで、花屋さんに、秘伝を教えてもらいました。試してみて下さい。私の勝率は2勝1分?でした。
「温浴湯揚げ」がその方法です。この名称は私の勝手な命名です。普通の「湯揚げ」と異なるので区別するために付けた名です。
方法は、風呂のお湯くらいの温度の湯に、クリスマスローズを花のすぐ下まで、どっぷりと浸けます。そのままの状態で、お湯が冷たくなるまで置きます。取り出して水切りをして、花瓶に生けます。
夜お湯に浸けた時は、朝までそのままにして置けばよいそうです。
* その他水揚げの工夫として、早朝に切る、雄しべが散ってから切る、切り口を焼く、など工夫をしている人がいるそうですが結果は聞いたことがありません。
*雄しべが散ってから切った例
下の写真は、雄しべが全て散った後の4月14日に花茎を元から切って生けたものです。特別な水揚げはせず、切り取ったものをとりあえずバケツの水にとり、花瓶に移したものです。撮影は翌日4月15日です。生けてから3日はこのままでしたが、4日目から花首の垂れるものが出てきました。

●4.青花クリスマスローズ作出の可能性
クリスマスローズには、青みを帯びた黒といわれるブルーブラックの花はありますが、青い花はありません。
ブルーブラックは、ブラックの花弁が濃いブルーを帯びた感じに見えるためにブルーブラックと呼ばれる。
ヒマラヤの青いケシ・メコノプシスのような青花のクリスマスローズはできるでしょうか?
私はとても難しいように感じています。その理由の1つは現在発見されている16の原種に青花の種がないことです。私の乏しい知識では、原種に青花のない花で青花の作出に成功した例を知りません。
世界中が長い間待ち望んでいる青いバラや青いカーネーションは、多数の優れた育種家が長い期間取り組んでいるのに、残念ながら成功していません。これは、青花の原種がないことが原因と思われます。
最近では、バラやカーネーションにバイオ技術を使って、他の植物の青い花の遺伝子(正確には色素を作る遺伝子)を導入して青い花を咲かせようと云う研究が行われています。
遺伝子の導入は成功した研究所がいくつかあります。しかし、発表された花の写真は、青いバラ、青いカーネーションとはほど遠いという印象です。元の植物では、鮮やかな青の花を作った遺伝子を導入しても、それだけでは青い花にならないのです。
もう1つの理由は細胞内の環境を整えるバイオ技術が未完成なことです。
空色西洋アサガオ (Ipomoea tricolor cv. Heavenly blue) は、蕾が赤、開花すると青になります。この変化は、色素の種類が変わるのではなく、色素の溶けている液胞液が弱酸性から弱アルカリ性に変わることによって起きます。
アジサイの花の色の研究によると青い花は、紫やピンクや赤の花と同じ色素を持っていることがわかってきました。つまり、青い花も赤い花も紫の花も色素遺伝子は同じということです。
アジサイの花の色は、色素に補助色素3種、アルミニウムイオン、酸アルカリの程度(pH)が作用して決まります。
色素が同じで花の色が異なるわけは、色素分子のありようが違うのです。色素分子同士の結合、金属イオンとの結合、水酸基の結合や分離、補助色素のバランスなどの差が同じ色素を全く異なった色にするというわけです。
色素分子は液胞という細胞内の袋の中に溶けています。花の色は、この液胞の中の酸アルカリの程度、金属イオンの量、補助色素の種類と量を調節すれば色素分子は同じでも変えられるのです。
アジサイは土壌中のアルミニウムイオンを吸収します。したがって、アジサイの花の色は、3種の補助色素をどれだけ合成するか液胞液のpHをどの程度にするかで決まります。
アジサイでは、補助色素の合成量の調節遺伝子と液胞液のpH調節遺伝子が花色遺伝子で、色素遺伝子は花色遺伝子ではないと云うことになります。
せっかく青い花の色素の遺伝子を導入しても液胞内の環境を整えなければ青い花にはならないわけです。逆に遺伝子を導入しなくても液胞内の環境を整えれば現在ある色素を青く発色させることもできるかもしれません。
しかし、現在のバイオ技術では、調節遺伝子を充分満足できる状態に操作することができません。液胞液の状態を変化させる試みも一部で行われていますが、変化させると生育障害が起き、植物の生育がうまくいかないと云います。
そんなわけで、青いケシのようなクリスマスローズは、まだだいぶ先のような気がしています。
こんな予想が外れて、夕刊のトップに青いクリスマスローズの写真!という日を待っています。
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