チロ日記101

新たな幕開けの時がきました。また宜しくお願いします。

先日久しぶりに主人が千葉の実家に帰ってきました。いつものようにわたしを朝の散歩に連れていってくれたのですがどうも今回は様子がおかしいのです。散歩の間中なにか考え事をしていて、一向にわたしに気持ちがこもっていません。そして翌朝、散歩前の朝食のとき、いつもと違ったことがおきました。わたしの目の前にお皿に載ったある魚の刺身を置いたのです。わたしはもともと生の魚はあまり好きではありませんが、このときはいつもの魚と違っていましたので、つい舌づつみを打ってしまいました。その魚の名前は「たち魚」といって、お刺身は大変珍しいものでした。

以下の話は主人が奥さんに話したものです。

10日ほど前の事です。主人は会社の人達と海釣りに行くことになりました。その前日に寮のロビーでこんなことがありました。主人が翌朝釣りに行くことを知った寮生から随分いびられたそうです。どうせ坊主になって帰ってくるのだから、帰り道に魚屋で新鮮な魚を買って来て夜は魚の晩餐会をやろうと口々にいうのです。そしてご丁寧に魚屋を3軒も教えられたというのです。おかげで仮眠をして行く予定が、時間がなくなってしまい、徹夜の海釣りと成ってしまいました。場所は大井川河口近くの埠頭から釣り舟で約2キロほど沖へ出たところで、早朝2時頃から釣りが始まりました。ところが1時間もしないうちにとんでもないことが起きました。急に強い当たりがきたので釣り糸を手繰り始めたのですが、何しろ水深六十メートル以上のところからひきあげる為、獲物を釣りあげるのに非常に時間がかかります。数分のちにやっと獲物が海面近くに引き上げたのですが、よく見ると、とんでもない化け物みたいな、まるでなまずの親分みたいなたち魚でした。そしてあまりの重さに、主人は両手が麻痺してしまい、最後は三人がかりでやっと吊り上げたというのです。主人はその獲物の大きさを見て、一瞬われを忘れました。何故なら全長1メートル以上もある正真正銘のたち魚が目の前によこたわっていたからです。それからというもの、他の仲間が大きめのたち魚を吊り上げても、あまり歓声もあげられず、ずっとしらけっぱなしだったそうです。釣具店に戻ってから、店の若主人にその化け物みたいなたち魚を測量してもらった結果、重さ2キロ、全長はなんと1メートル35センチもありました。主人は早速その日の午後それを寮に持ちかえったのですが、管理人もその大きさに仰天、早速デジカメに収めました。そしてすぐにプロの腕前を発揮、ものの1時間もしないうちに刺身や切り身にして、たち魚晩餐会の準備は完了しました。そして寮生や寮生OBのご家族をすぐに集め、総勢九名の晩餐会が始まりました。刺身や、カンロ煮、塩焼きなど、めったに食べられない超豪華品がテーブルに並べられました。それからは主人の独壇場でした。何しろ前夜あれほど寮生にいびられていましたので、ここぞとばかり反撃に出たのです。寮生はまさか本当にどでかい獲物をもって帰るとは思ってもいませんでしたので、まさに主人の一人勝ちでした。そして新鮮な刺身等に全員舌づつみを打ちながら、たち魚料理を満喫しました。こんな事件の後に千葉の実家に帰ってきましたので、主人はずっと興奮気味だったそうです。早速主人はこの話をチロ日記に載せることにしました。でもチロが主役の日記でないと意味がありません。その為帰宅した翌朝の散歩の時に、ずっとそのことを考えつづけていたらしいのです。その日の午後主人は魚屋にたち魚を探しにいきました。でも丸ごとのたち魚などそうそう売っているものでは有りません。魚屋を三軒回ったのですが、ついに丸ごとはあきらめ、唯一最後のお店にあったたち魚の刺身を買ったのです。本当はまるごとのたち魚と一緒にわたしを写して、主人が釣った魚がいかにどでかい物か見せびらかしたかったらしいのですが、その願いもむなしく刺身とわたしのスナップに成ってしまった次第です。全く主人の仕草にはあきれるばかりです。要するに主人の自慢話を聞かされたようなものです。でもわたしの事を前面に押し立てる涙ぐましい努力には頭が下がりました。そして今回もついつい主人の自慢話を許してしまったのです。今回はたち魚の刺身を前に舌鼓を打っているわたしと、化け物みたいなたち魚をお見せしましょう。